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J/53  作者: 池金啓太
二十三話「世界に蔓延る仮面の系譜」

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メールと電話

三人で過ごしている中、静希の携帯に陽太からメールが届き、三人で顔を見合わせながらその内容を見ていく


陽太がしたい内容、鏡花にさせたい内容などがそこには書かれており、それら一つ一つをチェックしていくことにした


「ふぅん、そこそこ普通のこと書いてるじゃん」


「陽太としても思うところがあるんだろ、これならこの通りでいいんじゃないか?」


「でももうちょっと強気でいってもいいと思うんだけどなぁ、陽太君ってこんなに気づかいできる人だったっけ・・・?」


何気に明利が酷いことを言っているが、静希も雪奈もおおむね同意してしまう


陽太にデリカシーという単語は存在せず、今まで人に気を遣うという事などしてこなかった男だ、少なくとも静希達といた今まではそうだった


だが鏡花という彼女ができ、何かが陽太を変えたのか陽太らしくない回答が今こうして静希の所に送られてきている


陽太が静希に送ってきたプランは特に問題もなく、無難という言葉が最も似合う内容だった


遊んで買い物して食事して、誰でも思いつくような内容である、その中に一つ陽太が見たいアクション映画を観に行くというのがあったがこの程度なら問題ないだろう


これはどう判断するべきかと三人は悩んでいた


「鏡花ちゃんにいいところみせたいって思ってるのかな・・・?いやそんなこと考える奴じゃないか・・・」


「普通すぎる・・・って言ったらおかしいかもしれないけど、陽太にしては無難すぎるよな・・・もっとぶっ飛んだ発想するかと思ってたんだが・・・」


「陽太君もちゃんと気遣いができるようになったのかなぁ・・・鏡花ちゃんの頑張りのおかげかな」


陽太が送り付けてきた内容だけでそこまで判断するのは早計かもしれないが、長年一緒にいてその姿を見てきた三人からすれば、もし陽太が気遣いができる人間になったとするならそれはそれでいいことで、嬉しいと思うところなのだろうが、如何せんそんなことがあり得るのだろうかと疑ってしまう


「これはあれだね、今回は血の力が覚醒したのかもしれんね」


「血の力って大げさな・・・まぁ確かに実月さんの弟なんだからそれ相応のスペックはあると思うけど」


「実月さんって運動もできるし頭もいいもんね・・・」


陽太の姉、響実月は知力、身体能力、能力、どれをとっても優秀というにふさわしい人物だ、能力なしで喧嘩した場合、恐らく陽太でも勝てないであろう強さを持っている


陽太だって同じ血が流れているのだから、実月と同等かそれに近い知力があっても何もおかしいことはないのだが、なぜあのようになったのか


ほぼ完璧超人な実月と、落ちこぼれの陽太、一体どこでどのように違いが生まれたのか全く分からない


「やっぱりさ、今回は様子見したほうがいいって、陽がどんなつもりでこれを考えたのかわかんないけどさ、少なくともちゃんとした意見だし、鏡花ちゃんとのことに関しては今後ちゃんと自分で考えさせる癖をつけたほうがいいんじゃないの?」


「ん・・・確かにそれもそうだけど・・・明利?どうしたんだ?」


携帯に表示されたデートの内容企画書を明利は食い入るように見ている、何か内容に不審な点でもあったのだろうかと静希と雪奈が首をかしげていると、明利は顔を上げる


「んと・・・一つ思ったんだけど、実月さんって陽太君達が付き合ってるってこと知ってるのかな?」


「・・・」


「・・・」


明利の言葉に二人は固まる


そして冷や汗をダラダラとながし始めた、もし実月が知っていたのだったら、一体どうなるか


実月は重度のブラコンだ、弟の誕生日にわざわざ海外から戻ってきたりするほどに、会うたびに毎回毎回陽太と熱い抱擁をするくらいにはブラコンだ


もし陽太と鏡花が付き合っていることを知ったらどう行動するか


「・・・確認のメールをしてみる、ちょっと待ってろ」


陽太宛てに『実月さんはお前らが付き合ってることは知っているのか?』という内容のメールを送ると数十秒後に返信がくる


そこには『知ってるぞ』という五文字が書かれていた


それを見た瞬間、三人は血の気が引いた


「どうするこれ」


「俺はもう知らん、後は野となれ山となれだ」


「で、でもさすがに見て見ぬふりは・・・絶対実月さんいつか来るよ?さすがに今日明日には来ないだろうけど・・・」


どんなことがあっても、恐らく実月はやってくる、陽太と鏡花に会いに来るだろう、そして確認する、鏡花が陽太にふさわしい人物であるかどうか


成績面だけではなく人格的な意味でも鏡花のことを観察し、見定める、そしてもし陽太にふさわしくない相手だと判断したときは


「もう知らん、俺はもう知らん、人の恋路に口出す奴は馬に蹴られてなんとやらだ」


「もうさんざん口出してるじゃんか・・・まぁ面倒だってのはわかるけどさ・・・」


「と、とりあえず鏡花ちゃんに連絡しておくね、実月さんがいつか来るかもって」


どんなことになろうがもはや静希は関与するつもりはなくなっていた、実月が来るようなことになって陽太が助言を求めて来ても着信拒否する自信がある


だから今のうちに静希はこの内容でメールを送ることにした


まぁ頑張れ、と


それから数日、鏡花と陽太のデートが行われているであろう週末、静希はいつものように射撃の訓練を終えた後、いつものように家でのんびりしていたところ、唐突に携帯の着信が鳴り響く


陽太が何かやらかしたかと思いながら携帯画面を見ると、そこにはテオドールと記されていた


こいつが関わるとろくなことがないんだよなと思いながら静希は通話ボタンを押す


「もしもし?何か用かテオドール」


『何か用かとは御挨拶だな、用件がなければお前なんかに電話するか』


軽く悪態のジャブを放ちながら、両者は軽くため息をつく、何でこんな奴とという心の内が漏れるかのようなため息だった


静希とテオドールは互いに互いを嫌っているために、このような悪態や苦言は呼吸のようなものである、もはや定例ともなったやり取りに嫌気がさしながらテオドールは本題に入ることにした


『以前話したドイツでの召喚実験の事、覚えてるか?』


「あぁ、確かエルフの研究者が家族を殺してどうのって話だったか?まだ行方知れずなんだろ?」


詳しい話は聞いていないためその程度の認識でしかないが、確か父母を殺したうえで召喚を行い、その場から消えたという風に記憶している


その殺した理由は恐らく、悪魔の隙を作るためのトラウマの再現なのだろうが、だとしても家族を殺すというあたり異常性が見られる


『そいつの居場所・・・というか行先がわかった、まだ確定できるか怪しいがすでに近隣諸国は警戒態勢に入ってる』


「へぇ、何でまたそんなことがわかったんだ?どこにいるかもわからないフリーウーマンだって言ってなかったか?」


テオドールとの会話を思い出しながら、相手が女性であることも記憶から引っ張り出したうえで静希はメモの用意をし始めた


事が事なだけに多少どころかかなり警戒する必要がある、家族を殺しているとなるとかなり頭がいかれている可能性もある


『あぁ、まぁ難航を極めたがな、今度フランスで大規模な召喚実験が行われるのは知ってるか?』


「いや初耳だ・・・まさかと思うけど例の奴が関与してたりしないだろうな・・・?」


フランスと言えばイギリスと海を挟んで隣にある国だ、距離的にはかなり近い、ヨーロッパ圏に強い影響力を持つらしいテオドールの情報網に引っかかったのは偶然ではないだろう


『それに関しては安心していい、今回のは他の近隣諸国と合同で行われる実験、しかも警備はかなり厳重、不審者の影は今のところない・・・いやなかったというべきか』


テオドールの言い回しに静希は僅かに眉をひそめる、その言い分だと今は不審者が見え隠れしているように聞こえるからだ


『どうやら例の御嬢さんはその実験が行われる日に何かしらのアクションを起こす気らしい、いや起こすかもしれないって言った方が正しいか・・・実験が行われる数日前に到着するようにフランスに移動しようとしてるらしい、しかも場所は実験が行われる街に・・・明らかに何かするつもりだろう?』


「よくわかったな、普通身分とか隠すだろうに」


『もちろん偽装してたさ、パスポートやら身分証明やらな、でもこっちはそういう狡い手口は慣れてるんでね』


犯罪者は当然のようにその顔や身分を隠そうとする、指名手配されているのであれば当然の行動だ、静希がかつてそうした様に、そのエルフの研究者もそうしていたのだろう


だが嘘偽りに関してはテオドールの所属しているような不正を働くことが当然である組織に勝るものはない、特に犯罪を犯した人間であればすぐにそう言った情報は手に入ってしまうのだろう


本当にこいつは敵に回すと厄介になりそうだなと思いながら静希はとりあえずメモを文字で埋めていく


『で・・・だ、お前から頼まれていた依頼だが・・・本当に手を回していいのか?』


静希が頼んでいたこと、もしそのエルフの行き先や行動がわかったら静希の所に依頼として持ってくるように手配しろという内容だ


静希が直接絡むのであれば個人での行動よりも依頼として数人で向かったほうが行動としてはやりやすいし助かる


その場合、日本の委員会に手を回してもらわなければいけないため静希個人ではどうすることもできないのだ


「あぁ・・・その実験の日っていつだ?そのあたりに持ってきてくれると助かる」


『ちょっと待て、スケジュールを確認する』


恐らく手帳か何かを見ているのだろう、紙をめくる音が聞こえる中、テオドールのあったあったという声が聞こえてくる


そしてその日時を聞くと、静希も手帳を確認してその日になにかないかを確認し始める


するとそこには予定としては校外実習と書かれている、完全にかぶってしまっている様だった


「まずいな・・・校外実習が入ってる・・・」


『校外実習・・・?あぁ依頼を学生だけで行うってやつか?ならそれに組み込んでやろうか?』


テオドールの言葉に静希は悩んでしまう、恐らく可能だろう、校外実習に悪魔関係のことが入ったとしても静希としては特に問題はない、日程が少し伸びるくらいのことはあるかもしれないがそれも多少は大目に見てもらえるだろう


だが問題は陽太たちを巻き込んでしまうという事だ、悪魔との戦闘経験があるとはいえ陽太達を静希の個人的な問題に巻き込むのは少々気が引ける


日曜日なので二回分投稿


前に比べて一話当たりの投稿数が少なくなってると思ったら一回分の量が増えることが多くなっていただけだったという、なんだか情けない理由です


これからもお楽しみいただければ幸いです

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