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J/53  作者: 池金啓太
二十二話「二月半ばの男女のあれこれ」

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将来と今

「よかったね鏡花ちゃん!これから頑張りがいがあるね!」


翌日、メールにてそれらのことを報告すると、明利は我が事のように喜びながら鏡花のことを祝福してくれた


鏡花と明利は久しぶりに二人で学食にやってきており、静希と陽太に聞かれることなく自由に話すことができていた


「まぁ・・・その・・・これからが大変だけどね、いろいろと頑張らなきゃ」


「そうだね・・・でも結婚しようだなんて・・・私も言われてみたいなぁ・・・」


「あいつだったら大丈夫でしょ、いつか必ず言うわ」


明利からすれば結婚などまだまだ予想もできないような未来である、まだ高校の一年目が終わろうとしている頃に結婚などと言われてもはっきり言ってイメージできないのは仕方がない


社会のことも、働くことも、その苦労も、その嬉しさも、ほとんどを知らない学生である彼らからすれば、そんな未来は遠すぎる、陽太が言ったのはそういう次元の話なのだ


だが鏡花は絶対に静希がプロポーズすると確信していた、今までの静希の挙動を見てそう思ったのだ、それが明利と雪奈同時かどうかはわかりかねるが、確実に婚約することになるだろう


「あ、そう言えば昨日帰りにね、風香ちゃんと優花ちゃんが静希君にチョコ渡してたんだ、おいしそうだったよ」


「へぇあの二人が・・・静希モテモテじゃない、明利はライバル多くて大変ね」


鏡花の言葉にさすがの私も小学生に焼きもちは焼かないよと得意げにしているが、自分の外見が小学生並であるという事を自覚したうえでの発言だろうかと、少し苦笑する


静希を慕う東雲姉妹、幼さゆえの憧れにも似た恋心だろう、それが本気なのか、それともただの憧れなのかは、恐らく彼女たち自身も理解していないだろう、理解するには彼女たちは幼すぎるのだ


彼女たちの幼い恋が決して実らないという事を知るのは、そのことに気付けるのは、一体いつの事だろうか


「そう言えば鏡花ちゃん、陽太君と付き合うことになったのはいいけど、これからどういう風にアタックしていくの?」


「ん・・・詳しくは決めてないんだけど・・・私と一緒にいたいなって思ってくれるように頑張るつもり・・・かな」


はにかみながらそう言う鏡花に明利はニヤニヤと笑みを浮かべながらふぅんと鏡花を見つめる


恋をすると女の子は変わる、そして恋が実ってからもそれは同じ


鏡花はようやく恋を実らせた


彼女の何か月にもわたるアプローチの末、それを掴みとった、傍で見てアドバイスしてきた明利としては嬉しい限りだった


「何か聞きたいことがあったら何でも言ってね、私達がアドバイスするから」


「ん・・・まぁ・・・お願いするわ・・・あんまり過激なのはやめてよね?」


「ふふ、わかってるよ」


明利は笑いながら食事を続けている、鏡花からすれば明利達は自分よりも随分先を行っている存在だ、今の鏡花はまだ陽太と一緒にいることしか考えられず、事に及ぶなどという事も実行できそうにもない


明利に何度もそれらしいことを進言しておきながら自分のこととなるとこれだと僅かに自己嫌悪に襲われながら、鏡花も料理に箸を伸ばす


自分の作った料理に比べれば圧倒的に劣るそれを口に含みながら、鏡花は小さくため息をつく


「ちなみに質問なんだけど、あんたの所はさ、静希がリードするの?それとも雪奈さん?」


「・・・私がリードする選択肢がないのは何で?・・・えっと、時と場合によるかな、静希君は結構いろいろ考えてくれるし、雪奈さんは特に考えずに自分のしたいことを言ってくる感じで・・・場合によっては私だってリードするよ?」


ふふんと胸を張りながら自慢するのだが、明利が積極的にあの二人をリードしている様子など全く想像できなかった


どちらかというと明利は振り回される側であると思うのだが、今はそれは突っ込まないでおこうと鏡花は小さくうなずく


明利の言う通り、静希を中心とした恋愛模様は少々特殊で、あるローテーションのようなものがある、それぞれが要望を順々に言っていったり、自分のしたいことややってほしいことをお願いしたりと、明言したわけではないが暗黙のルールが存在しているのだ


複数人の恋人がいる時点で、そう言ったものは必要になるのだろう


最近、鏡花は考えを改めたのだが、静希が恋人二人を擁しているというより、明利、あるいは雪奈が恋人二人を擁しているのではないかとさえ思えてくるのだ


基本三人の仲が良すぎるというのもあるのだが、誰が誰を想うという一方向のそれではなく、三人がそれぞれを想うという二方向への好意が成り立っている


奇妙な構図であることは否めないのだが、それが絶妙なバランスで安定しているのもまた事実


そんなことを考えていると鏡花はふと思い出す


「・・・食事中にする話じゃないかもしれないけどさ・・・あんたってもう静希と雪奈さん、三人でしたわけ?」


鏡花の質問の意図を最初は明利自身理解できていなかったのか、きょとんとしていたが、数秒してからその言葉の意味を理解したのか顔を赤くする


そして否定もせずにうつむいてしまう


その反応を見て鏡花は小さくため息をつく、答えを返さずともこの反応がすべてであるからだ


自分はもう少し健全な付き合い方をしていこうと心に誓いながら、鏡花は目の前の小さな同級生を見て苦笑する


それぞれが幸せであるなら、それが一番である、そのことを鏡花は理解しているが故に何もいう事はなかった


これから陽太と自分がどのような方向へ進むのか、彼女自身わからない、だからこそ全力を尽くし、全力で尽くすのだ


今回で二十二話終了、明日から二十三話が始まります


今回はちょっと短め、ショートストーリーみたいなものでした、主に鏡花の


これからもお楽しみいただければ幸いです

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