表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
J/53  作者: 池金啓太
三話「善意と悪意の里へ」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

77/1032

密告 説教

「あぁもう何であそこまでいってるのにもうちょっとのアタックができないかな明利は」


ベランダの境にある壁を変換でかるくどけ、静希の部屋が見える窓の前で鏡花はやきもきしながら背負われている明利を見つめている


「でもみなよ鏡花ちゃん、明ちゃんは幸せそうだよ?あれだけでいいって感じだね」


「ダメですよ、もっとアタックしないと!静希だって明利のこと邪見にしてないし、むしろ仲いいじゃないですか」


「仲がいいから今の関係のままでいたいのかもよ?」


「そんなベッタベタな、静希って思い切り明利に甘いじゃないですか、私や雪奈さんに向ける言葉や視線とはえらい違いですよ」


「まぁね、明ちゃんは今でこそあんな感じだけど、昔はもっとびくびくしていたからねえ」


「へー、メーリってそうだったんだ」


「・・・」


覗いている二人の後ろから突如声がする


「「ぎゃああああああああああああ!」」


二人の悲鳴に静希は驚いてベランダに出てくる


そこには腰を抜かしてのたうちまわっている鏡花と雪奈の姿がある


「二人とも何やってるんだ?」


「ご、ごきげんよう静希、いい放課後ね」


「あ、し、静、いい放課後だね」


腰を抜かしたまま何とか平静を繕うが今更遅い


「質問に答えやがれ、なんでうちのベランダにいる?」


「この二人はいかがわしくもここから部屋を覗いていたのよシズキ」


「ほう?」


メフィの密告から真実を知った静希は二人を睨みつける


「ちょっと待つんだ静!そんな悪魔の虚言に騙されてはいけない!私たちは無実だ!」


「そ、そうよ!私たちは善良なチームメイトじゃない!」


何とか自分は助かろうとメフィを悪役にすることで窮地を脱しようとしているのか分からないが、虚言はどちらが言っているのか静希にはもろわかりである


「ほう・・・ならベランダにいる理由とベランダの壁が変形していることについて詳しくお話を聞こうじゃないか」


「・・・」


「・・・」


「よし、硫化水素はどのくらいできているかな」


「待って待って待って!悪かったってばぁ!」


「許して!出来心なの!雪奈さんが無理やり!」


「ちょっ!鏡花ちゃん裏切ったわね!?」


硫化水素など材料さえ集まっていないのだが、はったりでも二人は大いにあわてて罪をなすりつけ合っている


その間、明利は恥ずかしさともどかしさを抱えて顔を真っ赤にしながら静希の背中で小さくなっていた


もはや醜い争いとなりつつある二人を部屋の中に強制的に迎え入れ正座させる


「んで、なんで俺の部屋に?なんで覗きなんてしていたんだいお嬢さん方」


「いやね、一人で向かった明ちゃんが静に襲われないか心配で」


「何年来の付き合いだと思ってんだ、そんなことしねえよ・・・鏡花は?」


「あんた達の、その絡みが見たくて張り込んでました」


「御大層に能力まで使って侵入するとは、さすがエリート様はやることが違うなぁおい」


若干静希の額に青筋が走る


まずいと鏡花と雪奈は本能的に危険を察知する


「で、でもね?悪かったと思ってるわよ?でももしかしたらほらいろいろ手伝えるかなと」


「そうそう!明ちゃんの掃除とかその他色々とか手伝えるかもと」


「手伝おうとした結果ベランダに侵入か、何をどう手伝うつもりだったのかもう一度事細かに詳しく教えていただけると私としては非常にありがたいのですが?」


敬語になっていく静希を前に二人はどんどんと萎縮していっている


このままでは命が危ない


本格的にそう思いかけた鏡花は雪奈にアイコンタクトを送る


「ごめん静!今度埋め合わせするから!」


「そういうことで明利!頑張りなさいよ!」


二人は同時に走り出し自分たちのいたベランダからまさに逃げるようにその場を立ち去った


「ったく、あの二人は・・・」


「・・・静希君、私は気にしないよ?」


「そういう問題じゃない、メフィが機転利かせなければいつまでも覗いてたぞ」


「ふふ、お手柄だね」


「あら、なら何かご褒美頂戴よ」


「考えておくよ」


ふわふわと宙を浮くメフィはその言葉に上機嫌になる


「だいたい雪姉は・・・鏡花もあの人に感化され過ぎだ・・・」


「あの二人は仲良さそうだったね、知り合ったばっかりなのに」


「そうだな、雪姉は気を配るタイプではないけど、感覚でそういうのができる人だからなぁ、引かれ合う何かがあったんじゃないか?」


静希とは正反対で思考を繰り返して行動するタイプではなく思ったことを口に出し、行動するタイプだ、そういう意味では陽太に近しい部分がある


違うとすれば陽太と違い間合いを心得ているというところだ、心身共に


「ところで明利」


「なに?」


「いつまで乗ってるんだ?」


「・・・っ!」


今までずっと気がつかない程にこの体勢が馴染んでしまったのか、明利は真っ赤になって静希の背中から飛び降りる


「ご、ごめん!重かったよね!ごめんね!」


「いやお前は軽すぎる、ちゃんと飯食べてるのか不安になるよ」


静希の身長は百七十弱、明利の身長はどう見積もっても二十センチ以上は離れてしまっている


ここまで小さいと中学生や小学生に間違えられても仕方なさそうだ


「食べてるよ、でも伸びないんだもん・・・」


身長が小さいのは明利のコンプレックスの一つだ、どうにかして伸ばそうと静希に相談を持ちかけてカルシウムの錠剤をプレゼントされたこともあるのだが、効果はいま一つ


「なによメーリ、あなたはこのまま可愛いままでいいじゃない!自信持ちなさいよ!ほら!」


「ひゃい!メフィさんやめてぇ!」


抱きついて小さな身体をまさぐり始めるメフィを横目で眺めながら静希は作業を続けた


結局、メフィのせいでほとんど掃除は進まず、作業も中断されながらだったためにほとんど成果は上げられなかった


エヴァQが見たい・・・けど見れない・・・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ