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J/53  作者: 池金啓太
二十二話「二月半ばの男女のあれこれ」

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ヘタレと告白

「鏡花ちゃんはいろいろヘタレさんだから私たちが全力でバックアップするから、安心して告っちゃいなさい!」


「・・・その言い分には激しく反論したいですが・・・その・・・まぁ・・・ありがとうございます」


主に反論したいのはヘタレという部分だろうが、鏡花の今までの行動を聞いて雪奈が「うわぁ・・・鏡花ちゃんへたれ・・・」というセリフを言っていたのを彼女自身聞いている


実際自分の行動が情けないというのも理解しているだけに強く反論できないのだ


鏡花は圧倒的な雪奈のプレッシャーを前に明利に助けを求めるが、明利も雪奈の台詞に同意なのか、苦笑しながら目をそらす


もうこれは告白するしかないのかと思いながら、鏡花は歯噛みする


「で、でもその・・・告白とか・・・私は・・・」


「うむ・・・怖いのはわかる、私だって断られたらどうしようって思ったよ、実際静には明ちゃんがいたしね、でもそれを乗り越えれば最高だよ!イチャイチャし放題だよ!この前だって明ちゃんなんか」


「雪奈さんストップ!それ以上はいわないでください!」


どうやら雪奈はついうっかり明利の恥ずかしいエピソードを話しそうになったのだろう、明利が飛びつくようにして雪奈の口を押さえると、今度は明利が鏡花に向かい合う


「えっと・・・告白したとしても返事を貰わなくてもいいんじゃないかな?私はあなたのことが好きですよってことだけ伝えて、そのままにしておけば陽太君も鏡花ちゃんを意識すると思うよ」


「・・・告白して放置って・・・なんかおかしくない・・・?」


告白とはつまり自分が相手に好意を抱いているという事を暴露することに他ならない、となれば相手からすればイエスかノーという選択肢以外選びようがない


もちろん返答を先延ばしにするようなパターンもあるだろうが、結局はイエスかノーのどちらかになるのだ


明利の作戦の場合、告白しておいてあとはいつも通りに接するという事になる


そんな状況に鏡花が耐えられるとは思えない、何よりデリカシーのない陽太のことだ、日常においてもすぐにいろいろと聞いてくるに違いないのだ


「いくら陽太君がバカでも、告白されたらしっかりいろいろ考えると思うの、今までの鏡花ちゃんの態度とか、表情の変化とか、きっとどこかに気付くと思うんだ」


「考える前にあいつの場合すぐに聞いてくると思うわ・・・本当にお前俺のこと好きなのか?とか」


陽太の性格をほぼ把握している鏡花はその光景が容易に想像できた


告白をしたその次の日あたりに普通に学校で、まるで宿題の答えでも聞くような気軽さでそのように聞いてくる陽太の姿


我ながら何故あんな馬鹿に惚れたのかと呆れてしまうが、そこは惚れた弱みである


「そうなったらそうなったで勝負どころだよ!鏡花ちゃんは聞かれたらすぐに好きだよって返すの!当たり前みたいに!そうすれば陽太君も何かしら考えるはず!たぶん!」


「・・・自信ないんじゃないの・・・」


明利も恋バナと言うものは好きなのだろうか、少しテンションが上がっているように見える


恐らくはどこかの少女漫画で見た状況の受け売りだろうが、少しは理に適っているように思える


相手の答えを自分に届かせる前に話を逸らしたりして返答させるだけの時間を許さずに意識を自分に向けさせる


そしてなおかつ自分は好意的に相手に接する、そうすれば自分のいい面をまずは見てもらえるだろう


ただ、鏡花は出会って間もない頃、陽太とは犬猿の仲だった


一緒に訓練を始めてからはその仲も改善されたが、その分悪い面をしっかり見られている


今さらいい面を見せてもそのマイナスが消えるかと言われると微妙なところである


「でも明ちゃんの案はなかなかいいと思うよ、告白するけど返事は聞かず意識させる、恋愛のエキスパートっぽいよ!男をもてあそぶ悪女みたい!」


「雪奈さん、そのセリフ全然嬉しくないです、別に陽太をもてあそぶつもりとかないですから」


陽太程ではないが雪奈もそれなりにバカだ、考えて物を言わなかったり考える前に行動したりすることがあるため歯に衣を着せるという工程そのものを忘れることがある


前衛の人間はどうしてこう・・・と思いかけるが、前衛でありながら頭のいい石動という例があるために前衛型がバカであるという認識はひとまず改めることにする


「でも・・・そうなるとどうやって告白とかすればいいんですか・・・?返事も聞かずにって・・・逃げても追いつかれるだろうし・・・」


鏡花の足は決して遅くないが、陽太の走る速度に勝てるはずもない


陽太が気になって追いかけてきた場合、まず間違いなく追いつかれるだろう


「そこはあれだよ、いつもみたいにして、陽が『義理かよ』とか言ってきたら『本命よバカ』とかさりげなく言うとか」


「さりげなくって・・・それ絶対聞き返されますよ」


雪奈がする鏡花のモノマネが少し似ていたからか、そしてなおかつそんなことを自分が言うであろうことが想像できたからか鏡花は少し笑ってしまう


自分の言いそうなセリフであることはわかっている、そして実際そんな場面だったら、自分はそんなことを言うのだろう


「まぁ、セリフとかはまだ時間あるし、チョコはケーキってことで、本命の人にはハート形、義理の人には普通のカットケーキでってことでいいかな?」


「本当にそうするの・・・?うぅハードル高い・・・」


明利のまとめに鏡花は項垂れながらその場に寝転がる、気が重いと思いながらも、僅かに体温が上がる、その時のことを想像して心臓が跳ね上がる


陽太に告白なんてしたら自分は死ぬんじゃないだろうかと思うほどに鏡花は緊張してしまっていた


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