表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
J/53  作者: 池金啓太
二十一話「生命の園に息吹く芽」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

756/1032

戦いが始まる

屋上に出ると同時に、何匹かの奇形種の視線が静希達に集中する


気配や足音だけで判断できるような個体もいるとなると、なかなか厄介だ


動物としての原形をとどめている個体もいれば、元の動物が何だったのかもうわからないような形をしているような個体もいる


「あーあ・・・すごい数だな」


「動物園のほとんどの奴らが逃げてるんだもんな・・・そりゃこうなるか・・・」


「時間を稼ぐと言ったが・・・これだけの数だと・・・」


石動はまだ緊張しているようだが、戦闘になれば吹っ切れるだろう、前衛の人間はそういうタイプが多い、もし戦闘を始めても狼狽える様なら、静希が叱咤しなければならない


静希や陽太にとっては初めての集団戦の実戦、しかも相手の方が大多数だ


能力を持っていない個体の方が多いかもしれない奇形種とはいえ、なかなかに辛そうである


「よし陽太、いっちょ派手に行くぞ、ここから五十メートル前進、そこで一発線香花火だ」


「オッケー、巻き込まれんなよ?」


陽太が能力を発動しその体が炎に包まれると同時に、右腕に炎が集中していく


数秒すると右腕にはかなり大きな槍が出来上がる、以前門を破った際の槍に、攻城兵器にだいぶ近づいている


この大きさの槍も、もはや数秒で作れるだけの実力を陽太は有しているのだ


「陽太は全速力で前方五十メートルの地点までダッシュ、俺らはその後に続く、石動、お前は俺を陽太のところまで連れて行ってもらう、けど俺の速度に合わせろ、いいな?」


「あまり指示はしないのではなかったのか?」


「これが終わったら自由にやらせてやるよ、陽太準備はいいな!?」


「いつでも!」


やる気と炎をみなぎらせている陽太を確認して静希は集中を高め、右手にオルビアを、左手には拳銃を構える


「よし!行動開始!」


掛け声とともに陽太は大きく跳躍して見せる


静希達のことなど全く考えない大きな跳躍、そして着地点にいる奇形種を叩き伏せながら咆哮をあげた


静希と石動もすぐに後に続いた、と言っても陽太程の跳躍は静希はできないため、建物から陽太を追いかける形となる


先に走るのは石動、奇形種を切り伏せながら陽太が先に向かう地点まで移動する、静希のスピードに合わせるためか、その移動速度はあまり速くない


だがその低速での移動が、逆に静希の攻撃支援の効果を十分に理解させた


石動が攻撃を仕掛けようとする奇形種が、回避行動をとる寸前、静希の放つ釘が奇形種の足に命中し怯ませるのだ


急に足に激痛を覚えた奇形種は回避行動をとることができず、そのまま石動の刃の餌食となる


移動しながらだというのに、静希は奇形種だけではなく、石動の動きもよく見ている


そして石動の攻撃が避けられないように相手の動きを制限させる


そして静希自身も少し遠くにいる奇形種たちへの攻撃をやめない


フォローを行うのはトランプで、中距離攻撃は拳銃で、至近距離はオルビアで


決定打となる攻撃ができなくても、静希は徹底的に支援に回るほうが性に合っているのである


そして静希達が行動を開始して数秒も経たないうちに、陽太は目的の地点に到着、静希のいう線香花火を発動した


それは線香花火のような儚さは持ち合わせていない、荒々しく、猛々しく、だが一瞬で終わる炎の爆散だった


槍の暴発、静希はその挙動を線香花火と呼称した


陽太の腕に作られる槍、それが暴発するときにあたりにまき散らす炎がまるで花火のように見えたことが原因でもある


静希と陽太のコンビネーションの中に、水素爆発を起こすキャンドルサービスという名があるように、攻撃の名称を付けることで動作をわかりやすくしたのだ


そして陽太は、その名を気に入っていた


「はっはぁ・・・!どうだ奇形種ども!」


陽太の姿を確認し、追っていた奇形種、そしてもともと陽太が目指していた地点にいた奇形種たちはその炎をまともに受け、ほとんどが戦闘不能状態に追い込まれていた


これで一時的な陣地確保はできたことになる


「恐ろしいな・・・響の能力がこのように作用するとは・・・」


「こっからは持久戦だ、あいつらが動きやすくなるように、可能な限りこっちに引き寄せるぞ」


「オッケー!思いっきり暴れてやる!」


暴発させた槍を再び作り直した陽太はやる気をみなぎらせている


辺りに生き物の焼ける匂いが漂うが、そんなことは静希も陽太も気にしていない


石動が一瞬、焼け焦げた奇形種たちの亡骸を見てうつむくが、すぐに切り替えて自分の体を覆う血の鎧の一部を先刻のような中距離攻撃用の刃付の鎖状に変化させていく


「・・・五十嵐、フォローは任せるぞ」


「あぁ、好き勝手に暴れろ、やりやすいようにしてやるから」


先程の数秒の移動の間に、静希の支援を少し評価したのか、石動は深呼吸しながら集中を高めていく


やはり前衛の人間は切り替えが早い、こういう人間は実戦では本当にありがたいと思うばかりである


「おい静希、こっちもフォローしてくれよ?」


「しばらくは一人でがんばれ、俺は新米の石動君の相手で忙しいんだ」


「・・・私を新米扱いか・・・なるほど・・・確かめさせてもらおうか」


静希の言葉に石動もようやく緊張が解けてやる気が出てきたのだろう、殺気とやる気をみなぎらせているのがわかる


ようやくエンジンがかかってきたかもしれない、そう思いながら静希達は戦闘を開始した





静希達が戦闘を始めてから約一分後、奇形種の配置が換わり始める頃に鏡花たち避難チームも動き出した


鏡花の指示で可能な限り一カ所に集められた職員、そして鏡花をはじめとする移動と防衛の人員が職員を囲む形で配置される


そして鏡花は短い集中と共に、能力を発動した


配線などを傷つけないように能力を発動し、まるでパズルのように屋上が開き、地面がせりあがっていく


周りの奇形種から見えないように壁を形成し、その場から徐々に移動していく


一瞬、視線の隅に静希達の戦闘地点が見えるが、すぐに見えなくなる、壁を作ったおかげで、下からも横からも、もう自分たちを目に映すことはできない状態になっている


「明利、ナビよろしくね」


「うん、樹蔵君達もフォローお願い」


明利が能力を発動すると、それに呼応するように樹蔵も能力を発動する


周りの奇形種の配置と、安全なルートを模索し、明利は鏡花へ指示を送っていた


ゆっくり動き出す巨大な足場に職員たちは一瞬動揺していたが、安心している表情をのぞかせている者もいた


「上下、南南東二十メートル地点に奇形種の群れ、そこから何匹かこっちにきてる、蹴散らせ」


「「了解」」


樹蔵の指示を受けて二人の能力が発動する


楽器から放たれる音が湾曲され指示された地点まで誘導され、その効果が発動する


音が届いた瞬間、その場にいた奇形種の体が上下左右に揺れる、それは同時に鈍器で叩きつけるような衝撃を伴って訪れた


近づこうとすれば訪れるその衝撃に、奇形種たちはその方向に進むのは危険と判断し進行方向を変えていった


上村と下北の能力の発動タイミングはほぼ完璧と言える、下北が持つ楽器から放たれる音を上村が曲げ誘導し、目的地に正しく届くようにしているのだ


「鏡花ちゃん、進行方向を左にやや修正、ルートを変更します」


「了解、進路変更」


明利と鏡花が移動に専念し、樹蔵、上村、下北が奇形種に対しての警戒を行う


一見チームワークを発揮しているように見えるこの動きは完全なる分業によって成り立っていた


普段連携し慣れている者同士で協力したほうがいい成果を期待できる、静希が班をこのような形で分けたのにはそういう理由もあった


索敵を行いながら明利は静希達の挙動にも注意を払っていた


静希達の目的通り、戦闘の場所に奇形種たちは集まりつつあった、奇形種となったことで好戦的になったせいか、目に見える敵に対して接触するという性質でも持ち合わせているのか、派手に暴れるという言葉通りに戦闘を行っている静希達は大量の奇形種に囲まれている


「明利、あっちは大丈夫よ、集中しなさい」


いつの間にか不安が顔に出ていたのか、静希達の心配をしている明利を叱咤するように鏡花は凛とした表情を見せる


「・・・うん、大丈夫、ルート形成完了、チェックお願いします」


「了解、確認するわ」


静希が大丈夫だと言ったのだ、自分が心配してもどうにもならない


明利は再構築したルートを記した地図を鏡花に見せ静希から渡された銃を軽く握り、静かに目を閉じる


今のところ誰も負傷していない、進行率はおよそ二割ほど


まだ時間はかかるが、確実に事態は進行している


「明利、到着地点に城島先生たちに待機してもらえるように連絡しておきましょ、ルート変わったらその都度連絡する感じで」


「了解、電話するね」


鏡花の言葉に明利は携帯を取り出して城島を呼び出す


すでに鏡花は集中状態に入っている、これだけの質量の物体を建物などを巻き込まずに可能な限り早く動かすのは相当に集中力がいるだろう


五十人以上が乗っているこの足場、高さは二階建ての建物程ある、鏡花の額にはわずかに汗が滲んでいる


「あ、もしもし城島先生ですか?現在園外に向けて移動中です、少々ルートを変更したので到着地点に待機していただけると」


高い集中を維持しているであろうことがうかがえる鏡花を横目で見ながら明利は城島に現在位置と、これからの移動ルート、そして到着地点を告げる


城島も城島で奇形種が正門あたりにやってこないように尽力しているようだ、今のところ園内から逃げ出した奇形種はいないという事がわかる


『負傷者がいないのならそれでいい、お前たちは全力で職員の人たちを連れてこい、いいな』


「了解です・・・それでは失礼します」


明利は通話を切ると再び目を閉じ集中状態に入る


後方では樹蔵が忙しく上村と下北に指示を飛ばしており、能力と共に楽器を操る姿が見えている


みんなできることをしているのだ、自分もできることをしなければ


そう言い聞かせ明利は今まで行ってきた自分の索敵能力を全開にして最も安全な道を模索し始める






一方、囮となって奇形種たちをおびき寄せている静希達は僅かに疲労を覚えながらも向かってくる奇形種たちを打倒していた


炎をあたりにまき散らしながら奇形種を焼き殺す陽太は僅かに嫌気がさしながらも大きく咆哮する


この咆哮で周囲にいる奇形種を自分たちの所へとおびき寄せるのだ、大きな音を立てられる能力は囮を行う上で最も重要なことでもある


そして陽太の咆哮を聞きながら、石動は自分の近くにいる静希の挙動に感心してしまったいた


いや、感心というよりこれはもはや感動に近い


石動の攻撃目標に対して、最適なタイミングで最適な場所にアシストを入れる、単純なように聞こえるが石動の攻撃速度は決して遅くない


自らの体についた刃もそうだが、体から伸ばした刃のついた血の鎖の速度は腕を振るうそれよりも数倍速い


なのに静希はその刃が捉える目標を瞬時に判断し、その場所にトランプを飛翔させて一瞬だが奇形種の動きを阻害して見せるのだ


「陽太、あんまり遠くに行きすぎるなよ」


「オーライオーライ、わかってんよ」


そして先ほどまでは石動のフォローに徹していた静希は、その時々に陽太へのフォローも行い始めている


それはつまり、石動のフォローに慣れ始めているという事だろう


元より静希のトランプの操作能力は高い、昔からトランプの操作能力を上げる訓練を行っていたためか、五十三枚のトランプをまるで手足のように操れる


最近はトランプ自体を隠して能力がばれないように戦闘を行うことが多かったが、全てのトランプを展開して戦うと、圧倒的なまでの補助能力を持つ


攻撃用の物質が入っていないトランプでも、急に奇形種の眼前に出せばそれだけで視界を塞ぎ、攻撃を与えられる隙を作る


攻撃用のトランプは回避しようとしている奇形種に対しての行動キャンセルにつながるように当て続ける


しかも自分に近づいた奇形種に対しても対応をしている


前衛二人と比べ数は圧倒的に少ないが、その処理能力は自分のそれとは圧倒的に違う、それを石動は実感していた


「どうした石動、動きが鈍ってるぞ」


「・・・あぁすまない、少し考え事をしていてな」


僅かに攻撃の速度が鈍ったのを察したのか、静希は薄く笑いながらトランプを飛翔させ続ける


静希が石動の攻撃さえも把握できるようになっているのは、偏に雪奈との訓練のおかげだった


至近距離で放たれる雪奈の高速の斬撃に比べれば、中距離へ放たれる石動の攻撃を把握するくらいは訳ない


ただその数が多いために最初は少し戸惑ったが、石動の癖と視界を把握することですぐに慣れることができた


と言っても石動の全容を収めていないとアシストなどできない、その為背後が完全に死角になるが、そこは陽太に任せている


時折こちらへやってくる奇形種はトランプの中にいるメフィやその手に握られているオルビアが即座に警告を飛ばしてくれる


徐々に奇形種の密度が少なくなっていく中、静希達の戦闘は一時的に小康状態に入っていた


奇形種が迷い始めているのだ、周りに倒れ伏している大量の奇形種の死骸を見て、恐怖を感じているのだ


奇形種に変化して好戦的になったと言っても、本能的に死への恐怖は持ち合わせている、静希達に挑めば自分たちは死ぬとどこかで判断したのかもしれない


「どうする静希、休めるのはありがたいけど・・・」


「派手に暴れなくてはこちらにおびき寄せられないぞ」


「・・・あいつらの現在位置がどれくらいか・・・少し場所を移動するか」


明利達が移動を始めれば、静希達が囮となっている場所からはどんどんと遠ざかることになる


そうなると静希達が奇形種をいくらひきつけても、明利達の方にいる奇形種をこちらに誘導できない


その為定期的に明利達に近づいて彼女たちの方に向かおうとする奇形種を自分たちの方に引き寄せる必要がある


ただこの場合気を付けなければいけないのは明利達と近づきすぎてもいけないのだ、近づきすぎれば戦闘の巻き添えを受けるかもしれないし、万が一奇形種が明利達に襲い掛かった場合、負傷者が出る可能性がある


明利達が移動を開始してからの時間と照らし合わせて、静希は僅かに眉をひそめる


「よし、陽太、あっちに五十メートル移動、そしたら今度はキャンドルサービスだ、派手にいくぞ」


「オッケー、んじゃ行くか!」


右腕の槍を前に突き出して周りを囲んでいる奇形種を文字通り薙ぎ払いながら陽太は全力で進んでいく、静希と石動もゆっくりと移動を開始しながら戦闘地点を変えていく


周囲には大量の奇形種の死骸が横たわっている、首が切断されていたり胴が両断されていたり、頭部が焼き潰されていたりとさまざまである


静希は一瞬目を伏せ、動物たちに黙とうをささげながら移動を開始する


陽太が目標地点に到達すると、静希のトランプが陽太の体の近くを飛翔しその中から水素を放出していく


轟音と衝撃


陽太の姿を確認して襲い掛かってきた奇形種の何体かがその爆発に巻き込まれ動かなくなっていく


「陽太!明利達が今どこにいるか跳んで確認しろ!」


「あいあい!」


爆発が収まってから陽太に追いついた静希の指示に従って陽太が垂直に跳躍すると、視界の中に鏡花の能力でせりあがった足場を確認することができる


現在位置から大体五、六十メートルと言ったところだろうか


最初静希達が戦闘していた場所は明利達の進行方向から大体真逆の方向に位置していたため、移動しても完全に近づくという事はないようだ


向こうの進行速度から考えれば位置的にはちょうどいい場所かもしれない


「大体距離六十、今も移動中だな」


「オッケー、んじゃ数分間この辺りで戦闘するぞ・・・っていっても今ので結構吹き飛んだか」


「そのようだな・・・まだやってきているようだが」


流石に動物園というだけあってたくさんの動物がいる


中型だけではなく、小型や大型の動物もいるのだ


小型動物はまだいいが、大型動物が一気にやってくると静希達でさばききれるか微妙なところである


幸いにして今のところ接触しているのは中型の奇形種のみである


その分数が多いのが難点だが石動と陽太、そして静希がいれば何とか持ちこたえることくらいはできた


再び戦闘を開始すると、静希達はわずかな違和感を感じることができる、地面がわずかに振動しているような気がしたのだ


そしてその振動の原因に気付くのに時間はかからなかった


「・・・あぁなるほど、来るとは思ってたけど・・・やっぱりか!」


三人の視線の先には、動物園と言えば必ずいる動物、ゾウがこちらに向けて歩いていた


先日静希達と接触したときの穏やかな瞳は今はなく、こちらに向けて、いや正確には近くにいる動物全てに対して敵意を向けているように見える


その証拠に自分に近づこうとする奇形種に対してその鼻を叩き付けたり踏みつけたりと攻撃を続けている


その皮膚全体が紫に変色しており、非常に気持ち悪い色合いだがその分弾性が上がっているのだろうか、振り回す鼻がまるでゴムのようにしなり、奇形種たちを弾き飛ばしていく


そして視界の隅には他のゾウもいる、今はまだこちらに接近はしていないが、やがてこちらにやってくるだろう


あのゾウたちが群れて行動していなかったのは不幸中の幸いではあるが、このままだとゾウ相手に連戦することもあり得る


他のゾウもそれぞれ体の一部位が奇形化しているようだが、今は皮膚が奇形化しているゾウに対する対策を講じなければ危険である


あの大きさの動物に踏みつけられただけで、人間は簡単に死亡する、可能な限り早く戦闘不能にしなければこちらが危ない


だが危険ではあるがそれは百も承知、むしろ自分たちの方にやってきてくれるのであれば好都合だ


あれほどの大型動物が明利達の方に向かえば確実に負傷者が出る、自分たちの方に向かってくれるという事は、それは囮として自分たちが役割を果たせていることでもある


「五十嵐、どうする?あれほどの大きさ、一撃で仕留めるのは難しいが・・・」


静希は一瞬悩んだ、大型動物であれば足に傷を負わせるだけで行動不能にできる、先程のカバがそうだったように、動かなくするだけならできるかもしれない


だが周りが闘いの空気に変わっている中、負傷した動物を見て肉食動物や雑食動物たちがゾウを狙わないとも限らない


そうなると能力を発動させるきっかけを与えることになる、あの巨躯で能力を発動されたらそれこそ手が付けられなくなる可能性がある


もちろん、ゾウが能力を持っていない可能性だってある、ただの動物で、ただ奇形化させられてしまっただけかもしれない


だがもし能力を持っていたら


そう考えた時、どうすることが一番適切な行動であるか、静希は理解していた


安全に、そして万全に事を運ぶなら息の根を止めておくしかない


静希は諦めるようにため息をついてから口を開く


「動きが遅いから連続攻撃で仕留めるしかないだろうな・・・陽太と俺がフォローで、石動が攻撃力の高い一撃で頭にとどめだ」


石動の能力は血の量に依存する、今までの戦闘から扱う血の量はかなり増え、攻撃範囲とその威力もだいぶ高くなっている


それを一つにまとめ上げて一撃を放てば、恐らくゾウの強固な皮膚と骨を貫くことくらいはできるだろう


問題は確実に当てる方法だ


「んじゃ陽太が膝カックンしてゾウを跪かせろ俺は目を潰す、石動は頭が下がったら一撃だ」


「了解、膝カックンとか懐かしいな」


「それまでに周りにいる連中を片付けなくてはな、少々ハードだが・・・」


石動の言う通り、一匹に集中して攻撃を与えるためには周りにいる奇形種たちを一時的にでもいいから押し返すか、その数を減らさなくてはならない


この中で一番危険に晒されるのは静希だ、前衛として静希を守らなくてはならないという使命感を抱えているのか、石動は一層速度を上げて奇形種を打倒していく


やがてゾウが自分たちに接近し、その足を振り上げて踏みつぶそうとしてくる中、静希達はすぐその場から離れ回避すると同時に先程決めた通りに動き出した


陽太は槍を使いゾウの足の関節部を攻撃して強制的に膝をつかせる、瞬間静希のトランプが二枚ゾウの眼球めがけ釘を射出する


そして祈るように目をつぶり血を一点に集めた石動が大きな鎌のような形状の刃をゾウの頭部へ振り下ろす


振り下ろされた血の刃はゾウの強固な皮膚と頭蓋を突き破り、その脳を破壊し完全に死亡させた


誤字報告が十件分、さらに月曜日なので合計四回分投稿


そろそろ、そろそろ誤字が落ち着いてくれないかなと思う今日この頃


ストック的にではなく自分の精神的になかなか辛い・・・というか恥ずかしい


これからもお楽しみいただければ幸いです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ