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J/53  作者: 池金啓太
二十一話「生命の園に息吹く芽」

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動物たちの咆哮

「ちなみにいつくらいに軍はここに来られますかね?それだけでもわかるとありがたいんですが」


「ん・・・まだ確認はとれていないが・・・明日の夜、あるいは明後日、月曜日の朝からという事になるだろうな」


静希達が実習でいられるのは明日まで、つまりは日曜日までだ


もし月曜日に軍が来ることになると日曜日の夜から月曜日の到着まで完全に無防備になるだろう


奇形種になるとはいえ動物も睡眠する、夜はまだ問題ないかもしれないが朝からはどうなるかわからない


とはいっても実習の時間を増やすなどと言うことができるはずもない、引き継ぎすることができないという事も考えると、事前に対策を練っておいた方がいいかもしれない


「鏡花、一応明日は檻を強固にしておいた方がいいかもだな」


「そうね、研修に混じって少しずつ頑丈にしていくわ」


もし自分たちがいなくなっても、動物たちが暴れだしても壊れないだけの檻を作ることができれば職員の安全は八割方確保できる、問題は職員が檻の中へ自らの意志で入った場合と檻で抑えられないレベルの大きさの動物についてだ


自分で止めようとしてはいってしまえば、頑丈な檻など意味がなく奇形種の餌食になるだろう、自分たちがここを離れる前に職員に注意しておく必要がありそうだった


そしてもう一つの問題、檻で抑えることができないほどの大型の動物、この場合はゾウやサイ、カバ、キリンなどがあげられる


彼らが本気で体当たりをしようものならいくら檻を頑丈にしたところでいつかは破られてしまう、物理エネルギーというのは恐ろしく、ただ重さと速さがそこにあるだけで強大な破壊力を有してしまうのだ


封じる方法はいくつかある、だがそれをするにあたって職員の非難がありそうなのもまた事実だ


方法の一つは巨大な溝を作りその区間の行き来を完全にできなくしてしまう事


大きければそれだけ跳躍することは難しくなるため、二メートルから五メートルほどの幅の溝があればそれだけで移動は難しくなる


だからこそ動物園の閲覧可能な檻でもそのような工夫がしてあるのだ


問題は溝を作った後完全に行き来できないようにすることである


動物園などでは客との間にだけ溝ができているが、静希と鏡花が考えているのは動物を中心に三百六十度すべてに溝を作り完全に孤立させる方法だ


そうすれば暴れても問題はなく、誰かを傷つけるようなことはないだろう


だが間違いなく職員から意見が出るはずだ、職員が行き来できるようにだけはしてほしいなどの意見が最有力だが、そんなことをしたら意味がないのだ

何のためにそんな手間をかけるのかと言えば職員を守るためだ、職員が行き来できるようにしては本末転倒なのである


そしてこの方法にはもう一つ問題がある


仮に動物たちが能力を有していた場合、その能力を使って溝を飛び越える可能性がある


そうなるともう止められない、職員の安全は守れない


静希も鏡花もそのことに気付いている、だからこそあまり表情が良くない


どうにかして自分たちがいなくなった後も職員たちの安全を確保できないものかと思考を巡らせるのだが、いい方法が見つからないのである


「寝る前に向こうの班とも軽くブリーフィングをしておけ、向こうは向こうで何か考えがあるかもしれんからな」


「了解です、それじゃ失礼します」


鏡花の言葉と共に静希達は城島達に頭を下げた後、とりあえず各自部屋に戻り明日の準備を進めることにした


するとちょうどよく石動達も報告を終えたのか部屋に戻ってきたようで、明日の準備を進めながら軽く方針を固めておくことにする


先程静希達が聞いた内容と、やるべきことを話すと、石動達もおおむね同意のようだった


「守るという事には何の異論もないが、そうなると幹原の負担が大きくなるな・・・」


「あ、あまり気にしなくても大丈夫だよ」


今現在、この動物園内のリアルタイムの状況を把握できるのは明利だけだ、石動の班の索敵係の樹蔵は遠視という能力の性質上、ピンポイント、あるいは俯瞰でしか状況判断ができない、その為檻の中の動物の状況を把握できないのだ


「今回俺らの仕事全然ないな・・・まぁ仕方ないけどさ・・・」


「普通の奇形種ならまだしも、ここの動物相手じゃ・・・ねぇ・・・」


上村や下北は今回は奇形種が相手という事で攻撃して動きを阻害することを目的に行動するつもりだったようだが、相手に怪我をさせないように拘束するという事が主な行動基盤になってしまっている今、できることがかなり限られている様だった


有事の際には必要ではあるがこの二日間、ほとんど能力を使っていないのが現状である


実際静希だってこの二日間能力を使っていない、攻撃という方法で能力を使う人間は今能力以外のところで行動するしかないのだ


「戦闘がないならそれに越したことはないだろ、それに能力は使わずに実習達成とかだってあり得るだろ?」


静希は今まで能力を使わずに実習をクリアしたことなどはないが、将来能力を使わずに依頼を完遂することもあるかもしれない


今まで危険な内容だっただけに、今回の内容は面倒ではあるがそこまで危険だとは思わないようなものになりつつある


今できることは、職員を守ることと、後々やってくる専門家の人間に提出する資料を作成することくらいである


「五十嵐、一ついいだろうか?」


ほとんど話が終わりかける中、石動が挙手する


全員の視線が集中する中石動は少し悩みながら静希達が作った資料を見ていた


「成分の混入は把握できたのだが、それを中和できるようなものの確認などはしなくてもいいのだろうか、可能なら治療までできればよいと思ったのだが」


石動の質問に静希は視線を明利に向ける、現在薬学に最も精通している彼女の意見を求めるのが最も的確であると判断したのだ


そして明利は静希の視線の意味を理解して口を開く


「できるならそうしたいけど、時間も設備も足りないの、薬を作るにはそれだけ時間もかかるし、専用の機材も必要だし、ここにはそういうの無いから・・・」


「そうか・・・となると我々は専門家が来るまでの間に合わせをするしかないという事だな」


「そうなるな、奇形種がいるだけならまだしも奇形化を防ぐなんてことは俺たちじゃできない、できること以外を無理にやる必要はないからな」


いくら今回二班の合同で動いていると言っても、できることが増えるかと言われると微妙な話だ


他の班ならまだしも静希達と石動達の班は主に戦闘系行動に特化した構成になっている


静希達は陽太を前衛に置き、静希と鏡花が援護を行い明利が索敵と治癒などの後方支援を請け負う、ときには陽太を囮にして静希と鏡花が不意打ちを行うというフォーメーションも行うさまざまな行動パターンをとれるチームだ


一方的に攻撃したりする場面では強みを見せるが、防衛など、不意打ちを受けると弱い面を見せるのも特徴で、相手より先手を取ることで実力を発揮するタイプの班である


対して石動の班は、石動を前衛に置き、上村と下北が援護や中距離攻撃、さらには治療なども請け負い樹蔵が索敵を行うバランスのとれたチームだ


エルフという事もあって石動の前衛としての能力はかなり高く、それをフォローする中衛の二人のコンビネーションも万全、事前に樹蔵が目標の場所さえ察知していれば一瞬で事態は終わる


高い攻撃力と行動力を誇る石動班だが、行動範囲が広域にわたるとその行動能力は一気に下がり、後手に回ることが多くなってしまう


これは索敵の能力の問題なのだが、そう考えると明利の索敵がいかに優秀であるかが理解できる


「お前らのチームって前衛は石動しかいないけどさ、それで何とかなるもんなのか?」


「何とか・・・とはどういう意味だ?」


陽太の言葉に石動は首をかしげる、互いにポジションが同じ人間でもここまで違いが現れているのも珍しい


片やバカ、片やエルフ、比べるまでもないほどの違いだ


「うちだとさ、たまに静希が前に出たりするんだけど、前衛一人だと相手を押さえられない時ってないか?」


「ん・・・あまりないな・・・私の場合援護を受けたらすぐに終わらせるし・・・」


その言葉に、石動の実力を知っている静希は戦慄を覚える


以前夏休みに東雲姉妹と一緒に石動と訓練をしたことがある、二学期からの幽霊事件では一対一で手合わせをしたこともある、仮に静希が全力で戦っても石動相手に勝てるかどうか


持っている手札全てを使っても恐らく全力で戦う石動相手には勝てないだろう、それほどの相手である


彼女が陽太と戦った時どうなるか、静希は想像できない


阿鼻叫喚の地獄絵図となるのは間違いないだろう


「お前らんところは響だもんな、でもその代りに幹原がいるんだから楽なもんだろ?」


「索敵に関しては樹蔵より幹原の方が優れているからな、今回のことでよくわかった」


「え、そ、そんなことないよ」


素直に褒められることで明利は照れてしまうが、石動と比較される陽太はむすっとしてしまっている、前衛として負けていると言われているような気がしてあまりいい気分ではないのだろう


こればかりは陽太と石動の性質の違いというほかない


陽太は猪突猛進で、考えなしだが石動は状況に応じて自らで考えて行動することができる


柔軟な頭脳と瞬間的な判断能力があり、なおかつ能力も強い、前衛としての能力はぴか一だ


だが陽太だって負けてはいない、発展途上とはいえその能力の制御性と応用性はどんどん上がっている、能力が円熟期に達したときにどうなるかはまだわからないのだ


「能力の強弱談義はそこまでにしましょ、明日もあるんだから、今日は早めに寝て明日早めに起きないと、動物たちが起きるのは早いんだから」


鏡花が静希達の議論を一度止め、この場の締めに入る、今は動物たちが休み、就寝しようとする時間帯であるためにそこまで警戒する必要はないが、明日の朝からどうなるかはわからない


見張りを立てようにもその範囲が広すぎるため意味をなさないのだ


「明日は朝が一番忙しいわよ、なにせ全部の動物の食事とかもあるんだから、その後は研修する職員の護衛、大変だと思うけど明日で最後よ、気を引き締めていきましょう」


鏡花の言葉に全員納得したのか、了解と言って全員就寝の準備に入る


こういう時にしっかりとまとめることができるのも班長としての実力の内だ


そう考えると鏡花は徐々にではあるが、人をまとめる、人の上に立つために必要な技術や能力を付けてきているように思える


その分、かなり苦労をしているのは当然と言えるだろう








翌日、静希達は夜明け前に目を覚まし、すでに動き出している職員たちにつきそって動物たちの様子を確認しに行った


先日の深夜にすべての動物のための餌を確保してもらったために鏡花をはじめとするチェックが行える人間で餌の確認を行っていた、結果成分の混入は認められなかったそうで、職員たちは安心して餌を与えていた


朝の様子としてはただの動物としか言いようがないが、少なくとも暴れだすような傾向はない、そして夜の間に奇形化した動物もいないようだった


ほっとする反面、これからまた奇形化する個体がいるかと思うと嫌気がさす

今回も静希達は石動達の班と別れて行動している、職員も万が一のことを考えて研修を二か所だけに絞って行ってくれている、こうなってくるとやりやすくもあるが、その分現状の把握が難しくなる


朝食などの世話を終え、今は研修の護衛をしているのだが、そこが一番問題なのだ


なにせ研修に来ている職員の数がかなりいるのだ


今は二つに分けているとはいえ、通常の職員がその指導、そして研修に来ている人間や新人、それら全員合わせると五十人近くなる


今は石動の班と分けることでその数を半分にしているが、これらすべてを把握するとなるとなかなかしんどい作業である


「丁度いい機会だっていうのはわかるんだけどさ・・・万が一のこと考えて中止するわけにはいかなかったのかしら」


「そう言うなよ、ただでさえ稼ぎ時に休園してるんだ、それにこれからのことを考えると今の内しかまともにできる期間がないんだろ」


これから軍や専門家たちの監視下に入るとなると、恐らくまともに研修をしている暇などはなくなる


ここの職員だけの話ならまだしも、外部からも研修生を呼んでいるとなれば話は変わる


他の職員としても可能な限り研修は受けさせたいし、こういった経験も必要になると思っているのだろう


自分の身の危険と研修とを比べた時に何故自分の命の方を重くできないのかと思うところだが、そのあたりは無能力者の危機管理能力の無さと言ったところだろうか


城島も散々忠告していたようだが、研修をやめるつもりはないらしい


教員の方で軍が到着するのを早めてもらうように打診しているようだが、こればかりは現場の意見だけでどうにかなる問題ではないようだった


「にしても動物の世話ってだけでもいろいろあるんだな、案外勉強になるかも」


「お前さっきから黙ってると思ったら研修聞いてたのかよ、俺らには必要ないから警戒だけしてろ」


動物の世話の方法などと言っても、普通のペットなどで見られる犬猫ならまだしも大型動物や希少動物のことを話されてもこれから先役立つとは思えない


その動物の注意事項やなだめる方法など聞いたところでまず間違いなく静希達のこれからに役には立たない、なにせ静希達が対峙するような動物は大体が危険なものが多いからでもある


しかも今職員が研修を行っているのはカバ、間違いなくペットとして飼うには向かない大型動物である


静希達が動物達と職員に気を配っていると、周囲の空気が一瞬変わる


そのわずかな変化に、一班の人間は全員が気づけた


それは寒気とでもいえばいいのか、何かが起こるという経験からくる警告だった


明利は即座に警戒して索敵に集中、静希と陽太は職員たちの方に近づき、鏡花はすぐに能力が発動できるように意識を整えた


そしてそれは起こった


目の前にいた動物たちが突然大きな鳴き声をあげながら暴れはじめたのだ


静希は近くにいた職員を動物から離れさせるように突き飛ばし、陽太は暴れる動物と職員たちの間に自分の体を割り込ませて能力を発動した


目の前の動物が唐突に前触れもなく暴れだすという行動に、職員たちは一瞬呆けていたが、すぐに事態を理解した様で檻の中から我先にと退避しようとする


職員たちが完全に退避し終わるより先に、それは起こった


暴れだすカバの数は増えていき、檻の中にいたすべてのカバが大きな鳴き声を上げて暴れだし、奇形化を始める


「おいおい、なんだよ集団ストライキか?」


「微妙に違う気がするけど・・・なんだよこれ」


今まで檻の中の一匹が奇形化するというのはよくあったが、檻の中全ての動物が奇形化するなどと言うことはなかった


唐突に始まった異常事態の中で明利の声が響く


「静希君!動物園の中にいる全部の動物が奇形化し始めてる!」


「あぁ!?ぜ、全部!?」


明利の言葉にその場にいた全員が耳を疑った、すると静希の携帯に石動から電話がかかってくる


『五十嵐緊急事態だ、こちらの檻の動物たちが急に奇形化しだした、私達だけでは押さえられん、処分するぞ』


どうやら明利の言葉は本当のようで、あちこちで大量に奇形化が起こっている様だった


奇形化が起こるとは思っていたが、まさか動物園全土でしかもほぼ同時にこんなことが起こるとまでは予想できなかった


「石動、こっちも奇形化が起こってる、職員の人たちの避難を最優先にしろ、どこかの建物に逃げ込むことを念頭に入れてまずはそこから離れろ、いいな!」


『りょ、了解した!』


石動もこの状況にあせっているのか、少々声が上ずっている、だがそれは静希も同じ、これほどまでに大量に奇形種が生まれるとなると職員を守り通すのもかなり難しくなる


「鏡花!職員の人たちを守りながら外に誘導しろ!明利は索敵を続けて一番近くの安全な建物までナビ!俺と陽太は殿でこいつらを止めるぞ!」


「「「了解!」」」


静希の指示を聞き洩らすことなく受け止めたチームメイトたちはそれぞれ即座に行動を開始した


奇形化を始めたカバは体をあちこちにぶつけたり、地面に足を叩き付けたりと自らの体の痛みを何かにぶつける形で発散させようとしているように見えた、そしてその中で一匹の視線が静希と陽太の方に向く


「陽太、こうなったらしょうがない、こっちに向かってくる奴は処分するぞ」


「了解、巻き込まれないように距離空けとけよ」


陽太は右腕に槍を作り出しいつでも戦闘が可能なように準備する、そして静希も拳銃とオルビアを取り出しいつでも攻撃できるように集中し始めていた


「おら来いよ!ライオンより強いんだろ!?」


静希が陽太から距離を置くと同時に陽太は挑発するように叫んで見せる、言葉が通じていないと考えてもいないような発言に静希は呆れるが、どうやらこちらを睨んでいるカバは陽太に標的を移したようだった


姿勢を低く、そしてゆっくりと加速し陽太へと突進してくるカバの攻撃を、陽太はあえて避けなかった


頭を掴んでその動きを止めようとするが、カバの前進を止めることができずに壁際まで一気に押され叩き付けられ、壁に押し付けられてしまう


「陽太!フォローいるか!?」


「いらねえ!静希は他の奴らがこっち来ないようにしておいてくれ!」


陽太の要望通り、静希は即座に奇形化しているカバたちの足を拳銃や釘を使って撃ち抜いていく


体重が重い動物は、その足にかかる負荷から足にけがをするとまともに動くことができなくなる、処分するとは言ってもすべてを殺す必要はない、ここは足止めさえできればいいのだ


「俺にこの距離まで近づくとどうなるか、教えてやるよのろま野郎!」


陽太はその体の炎をたぎらせ、右腕についている槍をカバの首に思いきり突き立てる


深々と刺さっていく槍がカバに傷を作るが、そこから溢れる血を即座に蒸発させ裂傷と火傷を同時に作っていく


「くらえおらぁ!」


陽太の叫びと同時に深々と体内まで刺さった陽太の槍がその制御から離れて暴発する


体内から大量の炎を吹きだされたことで、疑似的な爆発にも似た現象が引き起こされカバの体が体内から一気に焼かれていく


煙と湯気を立てながらその場に倒れたカバを軽くどけながら陽太は静希の元へとやってくる


「鏡花たちの後を追うぞ、予想が当たってなきゃいいけど・・・」


「やばいんだな?オッケーすぐに追おう」


嫌な予感は総じて当たるものである、静希が万が一のために捕獲という選択肢を捨てて鏡花を職員たちと一緒に行かせたのにはわけがある


そしてその嫌な予感は、見事に的中することとなる


静希達がカバの檻から出てくると、そこはまさに凄惨というにふさわしい状況になっていた


そこらじゅうに奇形化し檻を破壊して逃げ出した動物たちがあふれている


幸いにして鳥類などは檻の中にいるようだったが、大型の動物や肉食動物、それに幾つかの雑食動物は檻から逃げ出してしまっている


どうやったのか、そんなことを考える暇などない


静希と陽太が辺りを見渡すと園内の一角に壁を展開している場所があり、そこに動物たちが群がっているのが見える、恐らくあれは鏡花の能力だ


それを把握すると同時に静希と陽太は駆け出し、囲んでいる動物たちに攻撃を仕掛ける


静希が銃や釘で先制攻撃を仕掛け、奇形種たちが怯んだすきに陽太が強力な一撃をお見舞いしていき、その命を絶っていく


一掃しようにも騒ぎを聞きつけて奇形種たちはどんどん集まってくる、このままでは避難させることなどできはしない


「鏡花!この中にいるんだな!」


「そ、そうよ!周りの奴らが邪魔で身動き取れないの!」


流石の鏡花でもあれだけの大人数を抱えてしまうと防御のために一時的に身をひそめるしかなかったのだろう、どうするべきかと悩んでいると静希は視線の先に客相手に土産物や食事を出すための建物があるのを見つける


「鏡花!周りの敵は俺と陽太が蹴散らすからお前は近くの土産物屋に行け!足場を作ってそこを歩けば行けるだろ!」


「わ、わかった!周りの奴らは任せるわよ!」


鏡花の言葉と共にあたりの地面が著しく陥没していき、同時に鏡花や明利、そして職員を乗せた巨大な足場が出来上がる


その上に大勢の人が乗っているという事に気付いたのか、周りの奇形種たちが一斉に襲い掛かろうとするが、それを静希と陽太が許すはずもない


拳銃と釘、そして陽太の体術で鏡花たちに近づこうとする奇形種たちを文字通り蹴散らしていく


ゆっくりとだが建物に進み、足場が建物に到着すると同時にその屋上に職員たちが一斉に降りていき建物の中に逃げ込んでいく、そして建物の窓や扉を鏡花の能力でふさぎ、完全に籠城状態に入った


「静希、俺らはいいけど、石動達はやばくないか?」


「あぁ、たぶんやばいことになってるな、助けに行くぞ、鏡花!石動達の救助に行くぞ!明利!あいつら今どこにいる!?」


未だ屋上にいる鏡花と明利に叫ぶと、明利は集中してあたりを索敵する


「えっと、あっち!距離大体二百メートル!」


明利が指差す方向を見てみるが、檻などがあってその姿までは確認できない、だが行かないわけにはいかない


土曜日+誤字報告五件分+評価者人数300人突破を記念して合計四回分投稿


評価者人数は増えにくいのを考慮してお祝いの頻度を100人単位から変えようと考えています、誤字が少し落ち着いたらその旨を報告しようと思います


これからもお楽しみいただければ幸いです

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