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J/53  作者: 池金啓太
二十一話「生命の園に息吹く芽」

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点と点の可能性

食事と報告を終えた静希達はすぐに行動を開始していた


石動達は研修を行っている職員の護衛、静希達は餌や薬品の調査をメインにそれぞれ動いていた


万が一のために全員動物用の注射器と睡眠薬を所有し、誰でも奇形種に対応できるようにしている


成分解析となると、生き物にしか同調できない明利の出番はなくなり、物体に対して同調を行える鏡花の出番となる


もっとも鏡花は薬学などに精通していないため明利の知識が必須になるが、その場に獣医として駐在している職員も合同で餌や薬品のチェックを行うことにした


動物たちが飲む水に何か仕掛けられている可能性もあるかと思ったのだが、遠藤の話によればこの動物園で使用している水道は一括してある場所で管理し、同じ場所から引いているらしくもし水に仕掛けがされていた場合職員にも同じ反応が見られるのではないかという事だった


明利が職員何人かに同調したがそれらしい成分は発見できず、飲み水に混入されているという可能性はほぼ消えたことになる


その為餌と薬品に重点を置くことにしたのである


餌と一言で表してもその数と種類は膨大である、特に肉食、草食、雑食、それらで与えるものが全くと言っていいほど違ってくるのだ


保管方法も、貯蓄場所も異なるために、まず優先して一か所に保管されている薬品の方を調べることにした


「ここが薬品置場だよ、ここの鍵は私と責任者しか開けないから細工をするのは難しいと思うけど・・・」


「それでも万が一があります、仕入れた段階ですでに細工をされていることもあり得ますので」


鏡花の言う通り、この奇形騒ぎが第三者の仕業だった場合、薬品を入手するより前に何者かの工作を受けていた可能性は捨てきれない


一つ一つ薬品の成分解析など行わないだろうし、そんな手間暇をかける意味も時間もない


「なぁ鏡花、これ全部調べるのか?」


「バカ、そんなわけないでしょ、ここ一か月で投薬されてるのだけよ、その為にリスト作ったんだから」


今までせっかく作った資料が無駄にならずに済んだと言いたいが、それでも薬品の数は十数種、これだけの数を調べるのにどれほど時間がかかるやら


「こうなると俺と陽太はいらないな、石動達の援護に行くか・・・?」


「行っても邪魔になるだけじゃね?それに明利が近くにいたほうが何かあった時にすぐに現場に駆けつけられるし」


静希とは対照的に陽太は随分と事態を楽観視している様だった、確かに明利がこの場にいればすぐに異常を察知できるし、現場に向かうこともできるだろう


だがやることがないというのはなかなかに精神的な苦痛となって静希に襲い掛かる


薬品のチェックというと、試験管やスポイトなどを使うイメージがあるが、鏡花のそれは全く異なる


薬品の入った瓶に能力を使い、その成分を解析していくのだ


ただの物体と違い、薬品は複数成分の混合物、専門の知識のない鏡花にとってはなかなかに難解な内容だったようだが、明利と獣医の助言により一つ一つ確実に解析を終えて行った


そしてあと少しで薬品の解析が終わるという頃、明利が急に顔を上げた


その反応を見た瞬間に静希と陽太は警戒状態に入った、明利が何かを感じ取ったのを即座に理解したのである


「明利、場所は?」


「・・・これは・・・タヌキ・・・タヌキの檻で・・・出血・・・奇形化が始まってる」


静希はすぐに頭の中で園内の地図を開き、現在位置と現場の位置関係を把握する、静希達がいる場所とタヌキの場所では少し離れている


そこで静希は携帯で石動を呼び出すことにした


『もしもし、問題発生か?』


「あぁ、タヌキの檻で奇形種発生だ、今どこにいる?近ければすぐに向かってくれ」


その言葉を言い終るよりも早く陽太が全力疾走でその場から離れる、恐らく現場に向かったのだろう


『今私たちはワニの檻の近くにいる・・・タヌキの檻は・・・一分もあれば』


一分、陽太の全速力とどちらが早いかと聞かれると微妙なところだが、陽太一人で動物を大人しくさせられるとは思えなかった


「今陽太が向かったけど、あいつじゃ拘束はできそうにない、急いで向かってくれ」


『了解した、それでは切るぞ』


石動が向かったのであれば拘束し睡眠状態にするのは可能だろうが、その後の治療が行えるかは微妙なところだ、傷が治せないのであれば奇形種は起きた後も暴れるだろう


薬品のチェックが終わったらすぐに明利を連れてタヌキの檻へ向かったほうがいいかもしれない


明利もそれを理解しているのか、チラチラとこちらを見て複雑そうな表情をしている


今自分がやるべきことは薬品の解析の手伝い、それは理解しているが、傷ついている動物を治したいという思いもあるのだ


「静希、明利を連れて行ってきていいわよ」


それを察したのか、鏡花が薬品のチェックをしながらそうつぶやくと、静希と明利は目を丸くした


「え?大丈夫なのか?」


「もうだいぶわかったわ、あとは獣医さんと一緒にやる、わかったことがあったら報告するから」


まだチェックを始めて一時間も経っていないというのに、調べるべき項目と内容、そしてコツをつかんだのか鏡花は不敵に笑って見せる


こういう時に天才はありがたい、そう思いながら静希は明利の手を取って礼を言いながら現場へと向かうことにした





静希達が現場にたどり着くと、丁度石動の能力で奇形種を拘束し睡眠薬を注入しているところだった


「遅かったな、あのタヌキ結構暴れたぞ」


その場にはすでに到着していた陽太がいる、そして陽太の言葉通り、檻の中には他のタヌキが何匹か怪我をしている、どうやら奇形化したタヌキが暴れた際に巻き込まれたのだろう


「ひどいね・・・他の子たちを先に治すよ」


「あぁ、そうしてやれ」


明利は負傷したタヌキに近づき能力を発動しその傷を癒していく


そうこうしている間に奇形化したタヌキの意識が喪失したのか、石動はその体を覆っていた血の拘束具を解いていく


姿を現したその外観は、ほとんどがタヌキのそれなのだが、手足だけが爬虫類のような形へと変わっていた


タヌキと爬虫類のつなぎ目の部分が多く出血しており、痛々しく血をにじませているのがわかる


明利はすぐに傷を癒すと、タヌキの体をわずかに撫でる


「悪いな石動、別の所にいたってのに」


「なに構わない、護衛は他の班員たちに任せてきた、一匹だけなら私だけで十分事足りる」


自分一人で対応できる、その言葉は慢心でも自慢でもない、純然たる事実だ

エルフが奇形種程度に後れを取るなどあり得ない、特に今この場で奇形化したようなひよこ同然の相手に苦戦するようなことはないのだ


「私は戻るが、そちらは順調か?」


「まぁまぁだな、薬品のチェックはもうすぐ終わる、あとは餌だけど、こっちの方が難航しそうだ」


「そうか、そちらも頑張ってくれ」


そう言って石動はその場から走って立ち去る、軽快な足取りとは裏腹に、その声にはわずかに疲労の色が浮かび始めているのに静希は気が付いた


無理もない、石動も昨日からほとんど動き続け今もなお緊張状態を保っているのだ


いつ現れるかもわからない相手に対して集中を持続するというのは非常に疲れる


静希達はこういった事態に半ば慣れてしまっているためにそれほどではないのだが、今まで比較的普通な内容が多かった石動達からすれば今回の実習は非常に疲れるだろう


「静希、俺らはどうする?」


「一度ここで待機だ、鏡花にメールして薬品チェックが終わったらこっちに来てもらうように言っておく、こいつをちゃんと拘束しておかないとな」


今は眠りの世界に落ちているとはいえ、目が覚めた時に暴れないとも限らない、今までの奇形種たちと同じように、今のうちにこの個体専用の檻を作っておく必要があるのだ


そしてタヌキを見張るついでに檻の中を見渡した静希はあることに気付く


能力の痕跡が全くないのだ、あるのは爪の痕や抜け毛だけ、暴れたというにはいささか小規模なものであるのがわかる


「なぁ陽太、このタヌキ能力使ったか?」


「いいや、噛みついたり引っかいたりはしてたけど能力使う様子はなかったぞ・・・ていうか能力ないんじゃねえのそいつ、最後まで使わなかったし」


陽太の言い分に静希はそんなことはないだろうと言いかけるが、そこで思考を改める


普通の奇形種ならばともかく、今生まれているのは後天的な奇形種だ、能力を持っていなくとも、魔素を大量に入れる器として体が作り替わっただけ

つまりは能力を持たない奇形種も十分にあり得るのだ


自分よりも早くその可能性に気付いた、というより恐らく勘でそう思ったであろう陽太に、静希はため息をつく


「・・・お前ってなんで妙なところで頭がいいんだろうな」


「ん?そんな褒めんなよ、照れるだろ」


実際のところあまり褒めてはいないのだが、陽太はこれでも実月の弟だ、核心を突くことが今までなかったわけではない


陽太もたまには頭を使うことがあるのだなと思った瞬間、静希はあることを思い出す


それはいつだったか、静希達がある場所に入った時に聞いた言葉だ


人工奇形種


静希が連れるフィアも、もともとはある研究施設にいた奇形種の中の一匹だ


そして人工奇形種を生み出す研究をしていたあの施設、さらには以前城島が言っていたあの言葉、静希が左腕を失ってから伝えられた事実


世界中で奇形研究を行っている研究者が誘拐された


自分たちの周りで起きた、奇形種に関するその事件、そして今回の後天的な奇形化事件、まったく無関係なのだろうか


どうにも引っかかる、今まで奇形種と多くかかわってきただけに今回の事件の異常さは十分に理解できる


点と点にすぎないが、これが完全に無関係であると言えるのだろうか


少なくとも今何らかの成分によって動物の奇形化が起こっている可能性が高い


自分たちはまた何かに巻き込まれたのではないかと、そう思えてならない


そこまで考えたところで静希の携帯が震え、鏡花からのメールが届いたことを知らせてきた


内容は以下の通り、薬品のチェックは滞りなく終了、今からそちらへ向かう

何ともシンプルな内容だったが、今はこれで十分


鏡花がこちらに到着したら薬品のチェックの結果についても聞いておかなくてはならない、そして先ほど静希が考えた可能性についても





「なるほどね・・・確かに関係ないかって言われると、私も自信ないわ」


鏡花がタヌキの檻にたどり着き、奇形種用の檻を作り出したところで静希は報告を受けた後で自分の考えを鏡花に話していた


薬品のチェックに関しては問題なく終了、明利の感知した成分は確認できなかったとのことだった


となると怪しいのは後は餌のみである


「奇形関係の研究者の誘拐、そして起きたこの奇形化騒ぎ、繋げるにはまだ情報が足りないけど、少なくとも奇形種っていうワードでは繋がってる」


「また面倒事に巻き込まれたってことね・・・ったくもう嫌になるわ」


あくまで可能性の話ではあるが、静希の仮定に鏡花もおおむね同意している様だった


彼女も今まで多くの面倒事に関わってきただけに、面倒事に関する勘のようなものが培われてきている、そして彼女もこの件が先に起こった研究者誘拐と無関係ではないと思っているのだ


「ってなるとあれかしら、研究者誘拐して奇形化できる薬作らせて、今はその実験、あるいはこの事件そのものが目的ってことかしら」


「可能性はあるな、俺はまだ実験段階だとにらんでる、この事件を起こすことが目的だった時、何がしたいのかよくわからん」


研究者を誘拐し、研究をさせて奇形化の薬を作らせる、そこまでは問題なく可能であるように思える


世界中の研究者が合同で研究すれば技術革新を起こすのはそうそう難しくない、特にその技術が専門的であればあるほど


だが問題は今こうして起こっている奇形化が、事件を起こしている人間にとってどの段階であるかだ


静希のいうように、これがただの実験だというのであれば特に矛盾はない、多くの動物のデータがとりたいという目的に沿ってこういう事を起こしていると考えれば自然だ


だがこの事件そのものが目的だった場合、その理由が謎である


この動物園を潰すことが目的だとしたらもっと的確で楽な方法がある、わざわざ研究者を誘拐する意味はない


または静希や鏡花の勘が外れ、以前の研究者の誘拐とは何の関係もない可能性だってある


今回の事件をどうにかするためには、その背後とこれまでの事件などの関係性なども明らかにしていかなくてはいけないのだ


この辺りは静希達ではなく、軍や警察の仕事かもしれないが、関わってしまっているために完全な無関係でもいられないかもしれない


「どっちにしろ私たちが今やるべきはここの対応よ、考えるのは暇なときにしなさい」


「了解、そうするよ」


この件は城島に報告するとして、静希達はまず自分たちにできることをするべきだと意識を改める


奇形種を拘束した後、静希達がやってきたのは餌などが保管してある場所だった


大型の冷蔵、あるいは冷凍庫になっており、餌が保管されている


ただ動物の檻の近い場所に保管するのが定石であるらしく、肉食なら肉食の、草食なら草食の動物の餌置場があるらしい


静希達が最初に向かったのは最も数の多い雑食用の餌置場だった


動物の種類が多いだけあって、かなりの数の量と種類があるが、それらすべてを調べるような余裕はない、一種類の一部を適当に取り出して調べるだけになってしまう


「明利は同調に集中してていいわよ、なんとなくコツは掴んだから、陽太達は奇形種が出たらすぐに動けるようにしておきなさい」


「あいあい了解」


陽太は特に何も考えていないのか、餌の保管庫の入り口部分から外を眺めている、明利は獣医と共に時折鏡花にアドバイスをしながら動物園内の索敵を怠っていない


静希は陽太と同じく入り口付近で待機しながら考えをまとめていた


先程鏡花と話していた奇形化の目的の話である


もし何者かがこの事件を引き起こしていたとして、その目的は何だろうと考えていたのだ


第一に考えられたのは、人工奇形種の完成


以前奇形実験の際に、人間を実験体にした時、被験者は奇形化し死亡したという事を教えられた、その研究の完成が目的ではないかと考えたのだ


エルフに協力を要請し、精霊などの力で無理やり魔素を注入すれば、静希の右腕のように奇形化し、注入する魔素の量を間違えれば死に至る


では、体の許容量を増した状態にしてしまえばどうだろうか


どういう効果があるのかわからないが、無理やり魔素の許容量を増やす効果を持った薬を長期間投薬し、人工的に奇形種を作り出す、能力の有無にかかわらず体だけを作り替える


もし動物でそれができれば、人間にもそれが可能である確率は高い


研究のため、目的としてはこれが一番しっくりくる内容だった


だが研究のためだけにこれだけの事件を起こしたかと聞かれると微妙なところだ


どんな研究だってその先に利益があって初めて成り立つ、この奇形化の事件がただの実験だったとして、その実験結果からどんな利益が得られるのか


この奇形化はただの偶然ではない、静希達が関わったことはただの偶然かもしれないが、何者かが何らかの目的をもって行っていることの一端であることは間違いない


思考をいくら巡らせても、可能性はいくつも浮かんでくるが一定領域から先が真っ暗になる


情報が少なすぎるのだ、今日の夜にでも城島とこの件について話してみるのもいいかもしれない


そして餌を調査していた鏡花たちが何かを発見した様だった


「静希、反応あったわよ」


鏡花が持ってきたのはいくつかの餌だった


固形物のものが多いが、その中に微量ながら明利の言っていた成分が検出されたらしい


「これで間違いなく誰かが餌に細工してるってことになるか・・・この餌の仕入先とかも確認したいけど・・・他の餌も確認しておくか」


「そうね、ここにあるのは果物とか穀物とかだけど、他の草とか肉とかもチェックしないと」


今のところ奇形化しているのは草食、雑食の動物だけだ、肉食動物が奇形したという報告は上がっておらず、明利の索敵に引っかかってもいない


その後、鏡花と明利の調査中、二匹ほど発生した奇形種に対応したが、肉食の奇形種は発見されなかった


だが肉食用に用意されていた餌にも明利の発見した成分は付着しており、この動物園にいるすべての動物に与える餌に例の成分が混入されているのが発覚したのである


日が落ちた後も続けられたその作業が終わったのは二十時近く、静希達は疲れた体を引きずって宿舎の方に戻ってきていた


入浴と食事もほどほどに、静希達はひとまず城島に報告に向かっていた

そして静希は昼間鏡花と話した内容を相談することにした


「という事なんですけど・・・どう思いますか?」


静希の考えを話すと、城島は腕を組んで悩み始めた


静希が話した内容は


以前起こった奇形研究の研究者が誘拐された件と今回のことが関わっているのではないかという可能性、そして何者かがこの動物園に細工をしているのではないかという事柄である


城島自身、静希のいう事は理解できるのだろうが、反応に困っている様だった


「・・・五十嵐、お前のいう事が間違っているとは言わん、今回のことに関しては何者かが関与しているのはまず間違いないだろうが、以前の誘拐事件と関わっているというのは少々突飛に聞こえるぞ」


「う・・・まぁ俺もただの勘でしかないので、明確な証拠があるとかではないんですが・・・」


静希が自分の勘を信じて行動するという事は、それほど多くないが、その勘も捨てたものではない、特に今回は鏡花もそうかもしれないと思いかけているのだ


「ちなみにお前たちは明日以降はどうするつもりだ?その成分が発見されたことは職員にすでに伝えた、今急ごしらえだが別の食料を用意しているらしい」


今貯蓄している分の餌のほとんどに細工をされている以上、その餌を与えるわけにはいかないため職員たちはあらゆる手を使って動物たちを飢えさせないように食料を確保しようとしているらしい


動物たちの原因が餌にあるかもしれないとわかった以上、それらが込められた餌は食べさせられない


「俺たちがいなくなった後はどうなるんですか?」


「まず軍の人間が駐在する、そして一か月間はここは閉鎖になる、そして専門家で例の成分を解析する、幸いにもお前たちが大量に捕まえたおかげで実験体には困らんからな」


その言葉に静希達は視線を合わせながら唸ってしまう


これから自分たちができることと言えば今日石動達が行っていた職員の護衛と奇形種が発生したときの対応位のものだ


原因がわかった以上、これ以上行動を増やすよりも軍が来るまでしっかりと職員たちを守るのが自分たちの仕事であるように思える


「とりあえず、職員の人たちが研修をしているのの護衛と、奇形種が生まれた時の対応をしようかと・・・他にできることなさそうですし・・・」


「・・・まぁそうだろうな・・・わかった、くれぐれも注意しろ、何が起こるかわからんからな・・・もし職員が何か言ってくるようであれば苦情は私達の方へ回せ、いいな」


「わ、わかりました」


苦情


職員が静希達にそれを向けるとしたら、静希達が動物を処分したときだろう

静希達としても動物を殺したいわけではない、だが職員の命と天秤にかけた時、どうしても動物の方が軽くなる


命の重さに差などないという人もいるかもしれないが、人間社会に生きる者にとっては、人間の命は他の動物よりも重いのだ


自分とあまりかかわりのない他人の生き死になどにあまり興味のない静希でも、死ぬのが人間か動物かという選択肢なら、迷わず動物が死ぬ手段を選ぶ

残酷と言われても仕方がないが、どちらだけしか助けられない状況というのは必ず存在する


城島は万が一に起こるその事態を想定している、静希達の性格を把握し、その事態が起きた時に静希達をかばうために自分達教員に矛先を向けさせようとしているのだ


「あの先生、一ついいっすか?」


「なんだ?」


「今日捕まえた奇形種って、もう搬送されたんすか?」


陽太の質問に城島はそうだと肯定し、その時の写真と書類を見せてくれる


鏡花が作った檻をトラックに乗せて搬送する姿や、能力で移動させているのが見て取れる


委員会と協力体制にあるというだけあって仕事が早い、捕まえた数自体が少ないとはいえ手早い仕事というのはこちらとしてもありがたかった


「委員会は来てくれるのに、軍はまだ来られないんですね」


「そこは仕方がないだろう、軍は一応は武力だ、大ごとになっていない状態で動かすのには時間がかかるんだよ」


以前城島が行ったのは訓練という名目で部隊を招集するいわば裏技のようなものだ、正規の手続きを行って軍を動かすには多くの人間の許可が必要で、その許可をとるのには必然的に時間がかかる


部隊の展開力よりも、そこまで至るまでの工程に時間がかかるのだ


誤字報告十件、そしてブックマーク登録件数が2700件突破したため合計四回分投稿


お気に入り登録がブックマーク登録になっていたことに今さらながら気づきました、数字しか見てなかったから全然気づきませんでした、いやはやお恥ずかしい限りです


これからもお楽しみいただければ幸いです

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