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J/53  作者: 池金啓太
二十一話「生命の園に息吹く芽」

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考察と報告

入浴を終えた静希達は一度話し合いをするべく、石動班が入浴している間に男子の部屋に集まっていた


静希は左腕に仕込んだ武器の整備も並行して行いながらとりあえず今日のことを思い返していた


ここで考え等をまとめてから城島に報告するためでもある


「とりあえず明利、私たちが書いたものと実際に同調してみての結果と考えを教えてくれるかしら?今わかっていることだけでいいわ」


「うん・・・今のところ薬品などの過剰な反応は見られないんだけど、この動物園の動物のほとんどに一定の成分の反応があったの、動物が作り出せる成分なのかもしれないから明日からちょっと調べておこうと思うんだけど」


動植物に詳しいと言っても、それらが作り出すことのできる成分をすべて暗記しているというわけではなく、この動物園内にある資料を使って調べる必要があるのだという


当然と言えば当然だが、いくら得意分野とはいえ何もかも知っているというわけではないのだ


「その成分が入ってるような薬品を与えた記録っていうのはあったの?」


「ううん、書いてもらった中にはなかったの、だから動物が自分で作ってるのかと思ったんだけど」


「餌になんか混ぜてあるとかそういうのは?栄養剤とか混ぜてたりするんじゃね?」


「餌の部分には果物だとかしか書いてないけど・・・もしかしたら混ぜてるのかもな、明日職員の人に聞いてみるか」


自然に与えられる食べ物だけで完全に栄養を管理できるかと言えば、実際は難しい


その為に餌自体に栄養をとなるサプリやその粉末などを混ぜることは別段おかしいことではない


明利の言う成分というのが一体何であるかはわからないが、動物たちに害がない以上特に問題はないのではないかと思える


「鹿の方はどうだったの?他の個体に奇形化しそうな傾向とかあった?」


「ううん、みんな元気だったし健康状態も問題なかったよ、奇形化の傾向も皆無、何であの子だけ奇形化したのか全然わからないの」


頼みの綱となっている明利でもわからないのではそれこそ専門家を呼ぶしかなくなる


奇形化についてはかなり大々的に研究されているという事もあり日本にもその権威は存在する、以前静希達が護衛した平坂がその一人である


「とりあえずわかることは全部レポートにして提出しようと思ってるけど、まだ全然資料とかの確認もできてないから・・・」


同調すればいいだけではなく、実際に与えられたものとの比較などもしなくてはいけないために明利がやることはかなり多い


こういう時に力になれないのが歯がゆいところだ、できることと言えば資料を作成したり、探したりすることくらいなのである


「明日は引き続き同調作業と・・・あとは資料作成、それに職員の人に餌の事とかについて聞かなきゃいけないわね、明利、今のうちにその動物達にあった成分の名前だけでいいから書きだしちゃってくれる?」


実際にその成分がどんな作用をするのかは知らないが、動物園で与えているものであれば職員が知っていたとしても不思議はない


成分の名前だけでもわかれば職員に聞けば何かわかるのではないかとふんだのだ


「・・・ところでさ・・・あんたはさっきから何やってるわけ?」


そこまで言って鏡花の視線が静希に向く


静希は左腕を外した状態で中にしまわれている武装を徹底的に手入れしている様だった


片手しか使えないために時折明利が手を貸しているが、非常に視覚的な圧迫感がある光景である


「メンテナンスだよ、今回動物と戯れすぎたからな、誤作動とか起こさないようにしてるんだ」


「・・・なんでもいいけどもうちょっとその格好どうにかできない?片腕取れてる映像とか心臓に悪いわよ」


静希達だけならまだいいのだが、今は石動の班とも合同で動いている、見られたときの反応を考えると今は隠しておいた方が無難ではないかと思えてならないのだ


同級生の片腕がいつの間にか義手になっていたなんて知ったら石動達がどのような反応するかわかったものではない


「わかってるよ、とりあえずさっさと終わらせるからちょっと待っててくれ」


そう言って静希は着々と内蔵武器の手入れを終わらせていく、油臭い空気が辺りに充満するが、窓を開けて換気することで新鮮な空気で相殺しようとする


それだけ寒気が部屋に満ちるが、匂いを我慢するくらいなら寒さを我慢したほうがましである


「・・・ていうか今回それ着けてきたのね」


「ん?大砲の事か?そりゃそうだせっかく完成したんだからつけなきゃもったいないだろ」


静希の左腕には源蔵の作った大砲が取り付けられている、単発式とはいえ強力な威力を有していることは鏡花もその眼で見ている、生き物に対して使うようなものではないことも把握済みだ


「暴発とかしないでしょうね?」


「今は弾を入れてねえよ、何かあったらすぐ入れるつもりだけど、さすがに動物園でドンパチはしたくないからな」


仮にこの動物園にいる最大の動物に使ったとしても重症、あるいは一撃で殺すことのできるだけの威力が静希の左腕には用意されている


能力者がこういうテーマパークには入れないのはこういった危険を排除するためなのだなと鏡花はしみじみと納得した







「なるほどな・・・では明日は調査活動が主になるというわけだな?」


「はい、明利を中心に調査書を作り、もし原因がわからないようであれば専門家の方用にレポートを作成するつもりです」


ひとまず考えと予定をまとめた静希達は一度城島に報告にきていた


彼女自身静希達がやろうとしていることを理解しているのか、鏡花の報告を受けても特に疑問を持った様子はなかった


「気を抜けとは言わんが、お前たちが緊張していると動物にもその緊張は伝わる、幹原と五十嵐は接触時は注意することだ」


「了解です・・・でも明日はちょっと緊張が強くなるかと・・・」


「えっと・・・明日から肉食動物とか大型の動物に接触するので・・・」


今日静希と明利が調査しに行ったのは草食と雑食の動物達である


比較的おとなしいタイプから気難しいものまでたくさんいたが、好戦的な個体は群れの中でも半数に満たない程度


だが肉食獣は違う、基本的に肉があれば食らいつくし、好戦的な性格をしている動物が多い


そして接触するのは肉食動物だけではなく大型動物もだ


例を挙げるのであればゾウなどがこれに当たる


足踏みをするだけで危険が伴うような状態で接触しなくてはいけないのだ、緊張するなという方が無理である


「そのあたりはお前達で折り合いを付けろ、動物に無駄な刺激を与えるようなことはするな、手間が増えるだけだ」


「刺激しなくても今日あの有様でしたけどね」


「ははは・・・」


実際特に何をしたわけでもないのに動物たちは静希や明利達にすり寄ってきたり攻撃的になってきた、人間に慣れているというのは恐ろしいものだと再確認できた瞬間でもある


相手が自分たち人間に慣れているというだけでここまで反応が違うとは思わなかった、今まで相手にしてきた奇形種とはある意味根本から違うと言ってもいいだろう


今回の相手はただの動物だが、むしろその方が厄介だった


「ちなみにせんせー、この調査って全部の動物にやるんすか?」


「どうせやることもないだろう、それがどうかしたのか」


陽太の視線が明利に向くと同時に、陽太が言いたいことを静希や鏡花は理解した


つまり、明利の負担が多すぎるのではないかと言いたいのだ


今のところ動物に対して同調できる人間が明利しかいないから仕方のないことではあるのだが、成分の解析からそのチェックまでほとんどを明利頼みにしているのが現状だ


そんな状態をあと二日も続ければ無論その負担はかなり大きくなる、なんとかその負担を軽くできないかと城島に打診しようとしているのだ


「俺らがやらなくても専門家の人とかがやるんでしょ?だったらダラダラしてても問題ないんじゃ・・・」


「ふむ・・・まぁ今日捕獲した目標も研究機関でしっかり調査を受けるだろうが、だからと言ってお前たちが怠けていい理由にはならんな、できることはやれ、幹原の負担を減らしたいならお前たちが自分で動け」


陽太の言いたいことを城島も察したのかそう言うと返す言葉がないのか、陽太は不承不承ながらわかりましたと返事をして見せた


陽太のいう事も一理あるが城島のいう事も正しい


やる必要がないという事と、やらなくてもいいという事はまた別の意味を持つ


静希達の場合はそれをすることができる、だからやる


時間は余っているのだ、やらない理由は今のところない


幸いにして二日という猶予はある、それをフルで使えば全動物のレポート位ならば作成できるだろう


「思うところはあるだろうが・・・まぁこういう機会は稀だ、今のうちに楽しんでおけ、こういう場所には入れるのは一生にあるかないかだ」


城島自身、恐らく動物園に来たことなどほとんどないだろう、あったとしても能力を発現するより前の話だ


物心つく前のことなどあってないようなものだ、実際にこういったテーマパークには入れること自体非常に稀であるのは事実、だからこそ城島は動物たちと触れ合うためにも静希達にこういう指示を出しているのかもしれない


「あぁそれと、知っての通り職員の人間が研修などを行っている、その邪魔だけはしないようにしろ、あちらの仕事を邪魔するとこっちの仕事が増える」


「わかりました、十分注意します」


静希達は姿勢を正して自分たちの部屋に戻ることにした


報告は終えたとはいえやることは山積みだ、動物達への同調に、食事などのチェック、書類や資料の作成


今までやってきた実習の中でもひどく地味な内容、一日目を終えた段階で静希はすでに少しげんなりしていたが、それは他の人間も同じである


だが同時に今まで触れ合う機会のなかった動物に近づけるというのも、動物園の裏側を知れるという事も楽しみでもあった


「とりあえず戻ったら資料を全員で確認しましょ、少しでも明利の負担を減らさないと」


「そうだな、さすがに明利に働かせ続けるのは問題だし」


「わ、私は気にしないけど・・・」


「俺らが気にするんだよ、手分けしたほうが早く終わるだろ?」


明利一人に負担を増やすわけにはいかない、班の中で役割がしっかり決まっているとはいえ楽をしていいはずがないのだ


月曜日なので二回分投稿


投稿していて気づいた、今日は七夕か・・・といってもやることなんて街に飾られてる笹に書いてある願い事を見るくらいですけども


これからもお楽しみいただければ幸いです

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