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J/53  作者: 池金啓太
三話「善意と悪意の里へ」

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難解な任務

「ずいぶん近代のエルフは性質が悪いのね、虫唾が走るわ」


「いや、性質が悪いのは頭の固い老害だけだ、昔の栄光にしがみつこうと必死なのさ」


呆れながらも城島は資料に目を通す


「そういえば神格についての資料も何もないんですか?」


あらかた資料に目を通した鏡花の言葉に城島は舌打ちをする


「あぁ、何一つよこさないで神格の鎮静化だとさ、これは笑うところか?」


「少なくとも他力本願ここに極まれりって感じですね・・・」


他人の不幸だけなら存分に笑ってやったんだがなと悪態をつくが、その不幸や尻拭いが自分のところに回っているのでは笑えない、本当に性質が悪い


「にしてもこんなふうに直接指名もできて無理も通せるって、どんだけエルフって偉いんです?私達二年エルフいないからよくわからないですよ」


二年生にはエルフがいない、そういえば前に城島がそんなことを言っていた気がする


実際に対峙したとはいえ相手は十歳、だがそれでも静希達と遜色ない程度の能力を使用していた、自分達より上の存在であることは確かである


「昔からエルフは強くてな、学園創設時はエルフの数はもっといて上層部はほとんどエルフが占めていたと言っても過言じゃない、能力が全ての時代だったからな、だが最近は出生数が減っているのかエルフが少なくなり、権力も弱まっている、それでも根強くコネと力を持っている、こういう無茶ができる程度にはな」


まったく嫌気がさすと吐き捨てて資料を放りだす


「神格についての情報なし、村については石動任せ、結果さえ出せば方法は問わず、事前情報なんてスズメの涙ほどですね」


メフィがいなければその神格とやらがどんな存在なのかすらもわからなかっただろう


エルフには協力や助け合いと言った単語がないのかと思えるほどに一方的だ、はっきり言って正気の沙汰じゃない


「本当に何様かしら・・・石動さんの協力なくして成功はないわね・・・」


「石動が協力的なのが幸いだな・・・」


「うん、そこだけはありがたいよね」


「その村長の頭を一度ぶったたいてやりたい気分だ、悪意でもなきゃこうはいかねえぞ」


「案外、悪意がたっぷり詰まってるのかもよ?」


「だとしても依頼は依頼・・・か」


全員でエルフ族の村長の悪態を吐きながら資料に目を通す


資料には地形図、エルフやエルフの村について、そして召喚に使用した術式などが載っていたが、静希達にはさっぱりだった


「さて、明日になったら今日の話の内容と村についての詳しい話を聞かなきゃな、他に確認したいことは?」


「一つある、メフィストフェレス、お前は今回の件協力するつもりはあるのか?」


城島が睨むがメフィは平然としている


「愚問ね、私は私と、そしてシズキの為にしか動かないわ、誰かの、ましてエルフの為なんかに誰が動くものですか」


ある程度予想はしていたが、こうまではっきりと述べられると協力は難しそうだ


「なら五十嵐、緊急時はお前がこいつに命令するんだ」


「先生、俺はこいつに命令なんてできないですよ」


「なぜだ、契約しているだろう?」


「シズキとかわしたのは対等契約よ、『お願い』はあっても『命令』はないわ、一番大切なのは信頼関係なのよ」


悪魔がよくいうよとため息をつきながら抱きついてくるメフィを軽くいなしている静希


すでに悪魔の取り扱いをある程度学んでいるようだった


対等契約、通常行われる上下関係などではない、その名の通り互いに対等であるという証のようなもの


静希はこの上位悪魔に『対等』の存在であると認識されている


収納系統の能力者で、落ちこぼれで『引き出し』と呼ばれ、長年馬鹿にされてきた彼が、悪魔に魅入られた


城島はてっきり喜々として小間使いのようにしているのかとも思ったのだが、どうやら現実は違うようだ


「お前たちの状態がどうなのかは知らないが、くれぐれも問題は起こさないでくれ、五十嵐、手綱はしっかり握っておけ?」


「握っててもこいつその気になったらすぐに逃げ出しますよ」


「別にいいのよシズキ?私の上に乗っても」


「メフィ、お前はそういういい方を少し慎め」


見ろ、明利が顔を真っ赤にしてしまっている、きっといろいろと想像してしまったのだろう、非常に気まずい雰囲気だ


「何だ静希!お前こんな美人にそんなことしてんのか!?うらやましい!恨めしい!」


「じゃあ今すぐ代われ、心臓をいつでもどこでも握りしめられているような緊張感を味わいたいのなら今すぐに代われ喜んでバトンタッチしてやる」


その眼は病んだ重病患者のような荒みっぷりだった、それこそストレスで胃をやられないか心配になってくる程に


「わ・・・悪かったよ・・・」


「あらひどいわね」


どんなに美人の恰好をしていても、どんなに美しい容姿を持っていても、どんなにいやらしい性格を装っても、突き詰めれば悪魔だ


片手で静希や周りの人間を瞬殺できてしまうような恐怖の象徴だ


直に味わった静希も陽太もそして鏡花も、その恐怖がどんなものか知っている


掌で転がされてどんな対抗をしても小指であっさりはじかれて、虫でも潰すかのような容易さで自分達の命を奪える


そんな存在が目の前の美女なのだ


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