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J/53  作者: 池金啓太
二十一話「生命の園に息吹く芽」

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鏡花が陽太に求めるもの

静希の言葉に、鏡花は唸りながら自分の頭の中を整理している様だった

陽太の何が欲しいか、何をしてほしいか


それを考え出したら止まらなくなったのだ、恋する乙女の思考能力とは時として恐ろしいものである


明利や雪奈は、最近静希にしてほしいことを普通に言うようになっている、可能な限り察するつもりである静希も、そのほうが楽なのだ


陽太はバカだ、察するなどと言うことができるはずがない


となれば鏡花が自分から口にするしかないのだ


恥ずかしいところも何もかも陽太に見せると宣言した以上、できないとは言わせない


「・・・そう言われると・・・なんていうか・・・困るわね・・・」


鏡花はどんどん思考を進めるのだが、今すぐに何をしてほしいのかと考えた時に、思いつかなかったのだ


「なんでもいいじゃんか、例えばデートの最後に一番してほしいこととか」


「んんんん・・・」


正確に言えばありすぎて絞り切れないというのがあるが、一番してほしいことと言われると、回答に詰まってしまう


どれも一という番号を付けるには少し足りない気がするのだ


どれも魅力的で、心躍る内容ではあるが、一番と聞かれると首をかしげる


「あ・・・そっか」


そこまで考えて鏡花は気づく、ようやく気付く、自分が陽太に求めているもの、自分が欲しい陽太の何か


「何か思いついたの?」


「あー・・・なんて言うか・・・うん、思いついた・・・」


「じゃああとはそれを口で伝えることだな、告白どうこうはさておいて、伝えるってのは必要なことだぞ?」


言葉にするのは簡単だ、そんなことをよく聞くが、本当は言葉にするまでが難しいという事もある


特に鏡花の場合はその傾向が顕著だ


「じゃあ鏡花ちゃん、デートの後でそれを言おうよ、きっとロマンチックだよ?」


「え?まだデートの影も形も内容も決まってないんだけど、そこは決定なの?」


「いいんじゃないか?今から計画立てて・・・あー・・・途中校外実習はさむかもな」


今から一から計画を練ったとして、かかる時間と予定の調整から、新年初めての実習をまたぐことはほぼ確定かもしれない


まだ詳しい内容は全く分かっていないが、とりあえず静希達の場合面倒なことになることは当然のことであると思っていていいだろう


そう言う意味では、その苦難を超えた後でお疲れ様的な意味で行ける場所の方がいいかもしれない


「んじゃあれだな、早速デートのことについて陽太君とお話してきなさい、時間は待ってはくれんぞ」


「そうだね、じゃあ私たちは退散しようか」


「ちょっ!ここまで来て放置!?あんたらまともなアドバイスほとんどしてないわよ!」


アドバイスが欲しくて二人を頼ったというのに結局のところ何一つ具体的なアドバイスを貰っていないのだ、これから何をすればいいかどんな風に話を進めればいいのか、鏡花は全く分かっていない状況だ


気付かれたかと静希は舌打ちしながら鏡花の方を見る


「ていわれてもなぁ・・・実際お前らが行きたいところに行けばいいわけで・・・俺らの出る幕ないぞ?」


「じゃあ経験者としてその場にいて意見出してよ、どうせあのバカ変なこと言うんだからダメ出しとか」


「二人のことを話すのに私たちが口出しするのは・・・ちょっと・・・」


今までさんざん口出しをしておきながら今さら何を言うのかと叫びたくなるのを抑えながら、鏡花は足で地面を叩く


瞬間、静希と明利の足が地面にわずかに沈みその場から動けなくなる


まさかこんなくだらないことで能力を使うとは思っていなかっただけに静希と明利は驚いていたが、それだけ鏡花が切羽詰っているという事が覗えた


「お願い!最初だけでいいから!切り口だけ見つけてくれればあとは自分で何とかするから!」


拝み倒すように必死に頭を下げる鏡花を見て静希も明利も居た堪れなくなっていた、まさかここまで鏡花が頼み込むとは思っていなかっただけに複雑な心境だった


「じゃあさ、お前今まで陽太がなんかして欲しいとかの話題って聞いたことないのかよ、一度くらいあるだろ?そこから考えてみたらどうだ?」


「・・・そんなこと言ったって・・・」


鏡花は今まで陽太と話した内容を思い出そうと頭の中をフル回転させていた

と言ってもほぼ毎日のように一緒にいる二人だ、会話の内容もその数も膨大、その中から目的のものを探し出すとなると困難極まる


そんな中、鏡花はある会話を思い出した


それは去年のことだ、学校内の行事の中で何気ない雑談の中に含まれた、陽太の言葉


丁度、静希と明利が付き合いだして間もなかったころだったように記憶している


それは鏡花が聞いた、陽太が珍しく誰かに何かを欲したような言葉だった


本当に何気なくて、今までずっと思い出すこともなかったが、こうして頭の隅に存在していてくれたことに、そして自分の記憶力に鏡花は心底感謝した

それは信頼の証でもあると鏡花はその時に思った記憶がある


鏡花が何か思い当たることがあるとわかったのか、静希は鏡花の頭を軽く叩き、足を解除するように要請することにした


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