悪魔の住処
カエデとの情報交換もそこそこに、静希と明利は帰宅することにした、途中ヘロヘロになって倒れそうな雪奈を回収し、家に帰るといつものように人外たちが我先にとトランプの中から飛び出す
夕食の準備を終えてから、静希はいつものようにくつろぐメフィに視線を向けた
「メフィ、昼間に言ってたあれの事、聞いていいか?」
「昼間?・・・あぁ力と道の事ね」
それは泉田が過去の話を、悪魔と出会った時の話をした時に出た単語だ
ずっと気になっていたがあとで教えてあげると言われて放置していたが、家に帰ってきたのだ、しっかりと話してもらうことにする
「そうね、まずどこから話そうかしら・・・シズキは私たちみたいな悪魔とかが普段どこにいるかって知ってる?」
メフィの質問に静希は首を横に振る
普段人外たちと一緒にいる静希だが、静希と出会う前に人外たちがどこにいて何をしていたのかは知らないのだ
「普通にそこら辺をうろついてるんじゃないのか?精霊とかは至る所にいるみたいなことを言ってたような・・・」
「それも間違いじゃないわ、精霊や神格とかはこの世界の物質や依代にいることが多いの、でも私みたいな悪魔とかそれに近しい人外はまた事情が違って・・・どう説明すればいいかしら・・・」
メフィもこういった説明をするのは初めてなのか、少し悩んでいたようだったが、部屋に置いてあった静希の財布から五百円玉を取り出して手にとって静希に見せてくる
「これでいっか、今私たちがいるこの世界がこの五百円玉だと思ってね、静希達は表に、本来私たち悪魔とかは裏に、それぞれ交わることが無いように暮らしてるのよ」
コインの表と裏、決して交わることのない境界線で分断された場所にいる二つの存在
多くの悪魔がいるというメフィの言葉の割にその存在が認知されていないのはそういう事情があったのかと静希は納得する
「てことは、お前たち悪魔は別世界の存在なのか?」
「んん・・・別世界っていうのは正しくないわね・・・同じコインである以上世界は同じなのよ・・・でもなんていえばいいかな・・・場所が違うというか・・・位相がずれてるというか、次元が違うというか」
メフィもこの辺りは正確に表現することができないようで腕を組んで非常に悩んでしまっている
自分の住んでいる世界のことを正確に説明できないのは静希も同じだ、身の回りを言葉に変えるだけでかなりの言葉が存在する、しかもそれでも伝達率が百になることはない
だがもし交わらないようにしているのであれば、どうやって悪魔たちはこの場所に現れるのか
そこまで考えがいたった時に静希はエルフの召喚を思い出す
「あぁ・・・だから召喚陣とかが必要なのか」
「そういうこと、精霊とか神格は依代から引っぺがすためにそれ専用の術式を構築するけど、悪魔のはまた別、私たちの住んでる場所につながる道を作るためのものを構築するの、その中で誰を召喚するかはその召喚陣次第ね」
以前メフィは精霊の召喚陣と悪魔の召喚陣は全く別物だと言っていた、なるほどそういう事情があったのかと静希は納得する
精霊などは現象や物質などに宿っていることが多く、神格は自らの神器などに身を寄せることが多い
神格は強い力を持っていればいるほど、依代から引きはがすのが困難になるため下級のものしか基本は召喚できないと誰かが言っていた気がする
「で、力が集まりやすいとかそういうのの話だけど、召喚に使われるエネルギーなんだけど、確かイスルギが龍脈がどうのって言ってたわよね?場所によってはその力が収束するところがあるのよ」
「もしかして、勝手に召喚陣みたいなのができるってことか?」
「言いかたがあれだけど、まぁそういう事、でも起きる確率はあんまり高くないわ、こっちとあっちの場所とかずれとかタイミングとかが一致しないといけないし」
何度か石動に説明された召喚陣の作成法、召喚陣を作り、大地にある龍脈とリンクさせることで召喚陣を起動することができる
竜脈はコンセントで、召喚陣は電化製品、そこまでコードを伸ばす作業が必要だと彼女は言っていた
メフィの言っている場合、あちらとこちらで同じ場所で同時に龍脈の力があふれることがあれば道が開くことがあるのだという
泉田が遭遇したのは、そういう偶然と奇跡の産物だったのだろう
「まてよ?じゃあさメフィとかこっちに召喚された悪魔ってどうやって向こうに帰るんだ?召喚陣を自作するのか?」
今まで静希はそこまで悪魔の召喚などに立ち会ったわけではないが、メフィはかなりの数の人との契約を交わしている、何度かこの世界にきて、そして向こうに帰っているという事でもある
「あー・・・まぁいろいろ方法はあるわよ?人間に協力してもらったり、自然に道が開くのを待ったり、シズキの言う通り自分で道を作って勝手に帰る奴もいるわ」
「自然発生の道はあまりできないんじゃないのかよ」
「さっきも言ったけど力の集まりやすい場所っていうのはあるのよ、そこで十年か二十年くらい待てば一回くらいはできるわ」
メフィの言葉にそういえばこいつは人間じゃないんだったと思い出す
時間感覚がそもそも人間のそれとは違うのだ、電車が二十分後に来るならそれくらい待つかというような感じで二十年待つこともあるのだろう
退屈なことが嫌いなメフィは待つことはしたくないらしいが、どうしても戻りたい時は仕方ないこともあるのだという




