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J/53  作者: 池金啓太
二十話「とある家族のアイの話」

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契約者の共通点

静希の言葉に泉田は何度も何度も頭を下げて見せた


本当にただ娘を助けたいだけなのか、静希の頭の中にはまだ疑念の感情が渦巻いている


「それとこれは当然ですが、俺が悪魔の契約者であると他言しようものなら、命は無い物と思ってください」


「もちろん、恩を仇で返す様な真似はしません、誓ってこの胸に秘めておきます」


口約束なんてはっきり言ってないようなものだが、命はないという静希の脅しにも何の驚きもなく返して見せた


度胸がいいのかただ単に嬉しくて恐怖を感じないのか不明だが、静希からしたら怪しさが増したように見えてしまう


「じゃあちょっと娘さんの様子を見に行かせてもらいます、協力するのは今日じゃなくても構いませんね?」


「えぇ、お二方にも予定があるでしょうから、可能な日を連絡してくれればこちらも準備をしておきましょう」


どうやらかなり機嫌が良くなっているらしく、泉田は静希が何を言っても許容しそうな勢いである


考えていないのか、それとも考えたうえで承知しているのかはわからないが、とりあえず静希と明利は客室から一度出て家の中にいるであろう娘、泉田愛を探し出す


「静希君、よく協力する気になったね」


家の中を探す中、そう言った明利に静希はため息をついて返す


「ん・・・まぁなんだ、あんな小さい子を見殺しっていうのもあれだったしな・・・」


「てっきり協力はしないと思ってたよ、静希君疑り深いし」


「そうだな・・・ていうか最近人を疑ってばっかりだからな・・・ちょっと疑心暗鬼もどきになってるかもしれん・・・」


そう言いながら静希は頭を掻いて自らを戒めはじめる


なにせ今までどこかの誰かに狙われたり策略に陥れられたりと、あまりいいことが無かったのだ、身内ならともかく赤の他人には最初から疑念を持って接するというのがデフォルトになってしまっている気がした


「あ、見つけた、えっと、愛ちゃん?」


「・・・はい、なんです?」


泉田の娘はリビングにあるソファに座り本を読んでいた、明利が呼ぶと本から視線を上げ部屋に入ってきた二人を注視する


「えっとね、ちょっと手に触らせてね」


「?」


泉田愛は明利が何をしたいのかわからなかったようだが、静希は明利が彼女の体に同調して調べているのだと理解し少し離れた場所から二人の様子を眺めていた


『にしても意外だったぞ、お前が好意的に誰かを見るなんてな』


『あら失礼ね、私にだって好みくらいあるわ・・・それにその理由も気づいてるんでしょ?』


メフィの言葉に静希は何のことやらととぼけて見せるが、静希も何とはなしに気づいている


そしてそれを確信づけるようにメフィはそれを口にして見せる


『あのイズミダって人・・・理知的で純粋、それでいて強い想いもある、しかもどこかネジが外れてるわ、シズキ、貴方にそっくり、少し狂った部類の人間よ』


『・・・それは褒めてるのか?』


『もちろん、最高の賛辞のつもりよ』


メフィにとっては狂っているという言葉が賛辞にあたるのだろう、静希にとってはあまりうれしい言葉ではなかったが、少なくとも静希が感じていたのとおおむね同じ内容だ


どこか似ている、泉田は静希と


テオドールとは別の意味で、いやどちらかと言えば本質的に似ているのは泉田の方だろう、頭がいいのに変なところで後先考えないで行動する、しかも自分の身を犠牲にする形での行動が多い


体の一部を奇形化させるようなバカは自分だけではないというのがわかってほっとしている反面、恐ろしいとも思ったのだ


『悪魔ってそういう人間が好きなのか?なんか似たようなタイプが多い気がするけど』


『うぅん、普通じゃない奴が好きっていうのは多いわね、思わぬ行動をとる人は一緒にいると退屈しないでしょ?』


退屈しない、何をするかわからない


そういう人間が悪魔の契約者になるんだなと思うと、呆れを通り越して少し笑えてくる


基本悪魔の契約者になるような人間はどこかネジが外れている


静希は言うまでもなく、エドモンドも大概頭のどこかのネジが吹っ飛んでいる、でなければ能力者の育成と活動を支援する会社など設立しようなどとは思わないだろう


そして泉田という男も相当いかれた頭の中身をしている


自分の娘のためとはいえ能力を使ってその体を犠牲に、医者としての地位すら捨てて強力な能力を使って見せているのだ


異常者であるとまではいかないが、悪魔の契約者は頭がいい代わりに、大事な部分がどこか抜け落ちているのだ


エドモンドは能力者でありながら研究者になれるほどに、そして泉田も同じように能力者でありながら医者になれるほど頭がいい


なのにどこかおかしい、これはもう立派な共通点と言えるだろう


自分もそのうちの一人なのだなと思うと頭が痛くなるが、もはや慣れたものだ、人外に引き寄せられるのはもう当然の物であると静希は認めている


そんなことを考えていたためか、静希は気づけなかった、泉田愛の体に同調していた明利の表情が、驚愕の色に染まっていることに


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