静希の回答
「・・・あ、あの、どうやって治療を行うんですか?」
今まで静観していた明利が口を開く、医学に関しては静希よりも明利に任せた方がいいだろうと、静希はそのまま明利に話の場を譲ることにする
「・・・娘が患っているのは、簡単に言えばその体に染みついて・・・いやその体がそうなってしまうというものでして、私がする治療は、そうなってしまった部分を丸々取り替えると言うものです」
「・・・それなら『神の手』でも治療は可能なんじゃ・・・」
現に少女と出会っている明利は、外見的にはあの少女が何か病を患っているようには見えなかったのだ
同調してみないことには細かいことはわからないが、それほどの難病であるのなら歩くことさえ難しいように思える
「以前、まだ有篠君が現役だった頃、彼女に頼んだことがあるのですが、首を横に振られましたよ、この子は手遅れだと」
泉田の言葉に静希はそういえばと思い出す
有篠が狂いだし、逮捕されたのは城島が特殊部隊に所属していた頃だ、となれば医者歴の長い泉田はもしかしたら彼女の現役時代にいろいろな形で面識を持っていたこともあるだろう
年齢と活動していた時期を考えると泉田がすでに医者を辞めた時になるだろうが、教授として医者に接触する機会などいくらでもある
実際に有篠晶に接触し、それでも治せないと言われたという事実に静希はさらに疑念が深まる
明利に視線を送り、そんな病気はあり得るのかを確認しようとするが、明利は深く考え込みながら自分の知識の中から該当する病気を探し出そうとしている
だがいくら考えてもそんなものは思いつかなかったようだった
少なくともただの病気ではないのは確かだ、病名を言わないところを見ると初めての発症例が自分の娘だったことも考えられる
「確か貴方の能力は、肉体の一部を作り出すことでしたね、どれほどの量を作るつもりなんですか?」
「・・・ほぼ全身です」
泉田の能力がどれほどの物かはわからないが、少なくとも全身そのまま作るとなるとかなりの魔素が必要になるのではないかという事がわかる
「あの、一度目の治療ではどれほどの量を・・・?」
「一度目もほぼ全身でした、その結果このざまですが・・・同じ量の魔素を注げるだけの器はできているという事です」
すでに一度奇形化してしまえば同じ量の魔素過剰注入を行っても奇形はしない、奇形化することによってそれだけの魔素を受け入れるだけの器ができたことになるからである
静希の右手がメフィと協力してジョーカーを使うたびに奇形化が進むのは、注入する魔素分を許容するだけの奇形化がまだ済んでいないからに他ならない
泉田はすでに覚悟もあり、実行もしている、今さら考えを変えるつもりは毛頭ないだろう
父として娘を助ける、本当にそれだけのために静希に助けを求めているのかもしれない
話を聞き終えた明利はちらりと静希を見つめた
彼女が自分から静希に助けてあげてという事はできない、まだ静希が自分を悪魔の契約者であると認めていない以上、自分からそのことを明るみに出すことはやってはいけないことだ
だからこそ、静希の方を見ることしかできない
そして静希もその視線の意味を十分に理解している
人助け
何とも静希らしくもない内容だ、自ら進んで誰かを助けるなどとほとんどしたことが無い静希からしたら、考えられないような内容だ、何の理由もなく自分の手の内を明かして自らを危険に晒しながら人助けなど
だが明利が視線で訴えるように、助けられるのに黙って見ているというのも目覚めが悪い話だ
「・・・ちなみに、成功確率はどれくらいなんです?」
「・・・正直に言えばわかりません、三割・・・いえ、二割もあればいい方かと・・・」
かなり絶望的な数値だ、少なくともそんな数値のために危険を冒すなど正気の沙汰ではない
そこまで考えが行き着いて静希は気づく、泉田はどこか静希と似ているのだ
自らの身内のためにことごとく無茶をし、どんな手を使ってでも救おうとし、そしてどこか狂っている
静希が泉田に感じていた親近感はこれが原因だったのかもしれない、エドモンドとはまた違う、恐らく自分に近いかつての悪魔の契約者
『どうするメフィ、お前としては協力は有りなのか?』
『ありね、こういうタイプは嫌いじゃないわ』
少し邪な声を出しながらメフィは笑う、泉田にどういう印象を受けたのかは知らないが少なくとも好感を抱いている様だった
どこにそんな風に感じる部分があったのかは疑問だが、とりあえず静希は泉田に向き合うことにする
「条件があります、まず明利に娘さんの状態を把握させること、そしてしっかりと報酬を用意する事、ただ働きはまっぴらごめんなんで、成功失敗に関わらず報酬はいただきます、あとは治療を行う際は俺たちも同席させること、以上です」
「それくらいなら何の問題もないです・・・では・・・!」
「・・・不本意ではありますが、協力しますよ、悪魔の契約者として」




