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J/53  作者: 池金啓太
二十話「とある家族のアイの話」

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接触を求める人

結論から言えば、電話をかけてきたのは先日静希の右手が奇形化したときに世話になった病院からだった


何か問題でもあったのかと思ったがそうではなく、どうやら静希の主治医である医者が静希の奇形を見て何とかできないかと何人かの知人に相談したところ、会ってみたいという人がいたのだ


実際に症状を見てみたいとのことで、時間があれば病院にきてくれないか、というのが電話の内容だ


そのことを明利と雪奈に話すと、明利は自分も行きたいと言い出した


静希の病状のことを心配しての事か、それとも会いたいと言ってきた医者を見てみたいのか、どちらかはわからないが一緒に病院に向かうことになる


雪奈は体重を落とすためにランニングをすると言ってきかず、今度は明利の作ったメニューの下、鏡花たちを監視役として演習場で走ることになった


かくして病院に来ることになった静希達だったが、静希の奇形を実際に見てみたいというのはあまりいい趣味とは思えなかった


ただの人間が急に奇形化したというのはあまり事例がないらしく、そう言う意味で興味を持ったのだろう、となれば医学だけではなく能力学にも精通している医者だろうか


昼頃に病院に到着した静希と明利は、あらかじめアポイントメントがあることを告げると病院の応接室で待たされることになる


「俺に会いたい人って誰だろうな、明利心当たりあるか?」


「んっと・・・能力学と医学に精通してるってことは能力者のお医者さんだから、何人かいるけど・・・その手を治せるとは思えないし・・・」


明利の知る中で何人か条件にあう医者は確かにいるが、今まで奇形の治療をしたという実績を持った人間は一人もいなかった


静希の右手を治せるとしたら、有篠晶のような高性能な生態変換を行えるような人間だけだ、本来のものとは違う形になってしまったものを治すというのは非常に高い技術が必要となる


それが生きた人間ならなおさらである


静希としては、これからもジョーカーの力を使っていくつもりのため奇形を治すつもりはないのだが、奇形を抑えることができるのであればそれに越したことはない


妙案でも聞ければいいのだがと思ってここに来たが、どう転ぶのかはまだわからずにいた


そんな中、応接室の扉がノックされ、中に初老の男性が入ってくる


「失礼、お待たせしました」


スーツを着こなし、眼鏡をかけ片足を引きずるように歩く男性が来るのを見て静希は立ち上がる


「えと、貴方が俺に会いたいと言っていた方ですか?」


「えぇ、初めまして、泉田順平と申します、現在は大学の方で教鞭を振っています」


「こちらこそ初めまして、五十嵐静希です、こっちは幼馴染の幹原明利です」


自身の名を名乗り静希と握手をする中、明利は目を見開いて驚いていた


「あ・・・あの・・・泉田さん・・・もしかして東都病院に所属していた泉田さん・・・ですか?」


「おや、御存知ですか?」


どうやら明利の知っている人物だったのか、その質問を肯定すると明利の表情が一気に変わり笑顔になる


「あ、あの、貴方の論文いくつも拝見させていただきました、とても勉強になって、その、すごく為になりました」


「ほぅ、という事はあなたも医学を?」


「はい、今度医師免許取得試験を受けるつもりです」


なんだか静希の知らないところで話が盛り上がっているようだが、その手の話に疎い静希は全く話についていけなかった


だが明利の様子から、泉田がかなり高名な人間であるという事が理解できる


「えっと、明利、この人のことを軽く説明してくれるか?」


「あ、ごめんね、泉田さんは前は大学病院で医者として活躍してたんだけど、能力を使った治療法やその制度を確立したり、難病の人を何人も治療した名医だったんだよ、今は退職されて大学の方で教授をしてるの」


「ははは・・・若い子にそこまで褒められると気恥ずかしいですね」


どうやら明利の話を聞くと、能力を含めた医学界にかなり貢献した人物らしい、大学の教授になってからも数々の論文を発表し、医学界を沸かせていたという


どうやらかなりすごい人物らしいが、なぜそれほどの人物が静希にコンタクトを取ろうとしたのかが疑問だ


「えと、泉田さん、何で俺なんかに会いたかったんですか?もう医者ではないんですよね?」


「医者ではないですね、たまに意見を求められることはあっても現役は退いたつもりです」


そう言って泉田はひとまず応接室のソファに腰掛ける


「今回お会いしたかったのは、まずその症状の確認と、もう一つあるんですが、それはまず患部を見てからですね」


恐らく静希の主治医から相談を受けた際に興味を持ったのだろう、普通の能力者が奇形化して生きているという事例自体がかなり稀であるために興味を持っても何ら不思議はない


とはいえ実験動物になるつもりはさらさらないため、もしそれらしい話を持ち掛けられた場合は突っぱねるつもりだった


とりあえず静希は右手のスキンを外して奇形化している右手を泉田に見せる

黒くなった皮膚、骨と爪が一体化し鋭く尖った指先、手の甲から突き出ている骨でできた鱗、どれも人間のそれとは違うものだ


そしてそれを見た泉田の視線が鋭くなる


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