表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
J/53  作者: 池金啓太
十九話「年末年始のそれぞれ」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

710/1032

ゲームをするために

静希は一度トランプからメフィをだし、部屋の中から携帯ゲーム機をいくつか取り出す


何度か実習に持っていたものもその中にはあり、もう一度メフィにそれらを持たせてトランプの中に収納する


『よし、メフィ、それがプレイできるかどうか試してみてくれ』


『なるほどね、シズキのやらせたいことがわかったわ、電源オーン!』


メフィが携帯ゲーム機を操作すると問題なく電源がつき、ゲーム画面が表示される


それを確認すると静希は笑ってメフィをトランプの中から取り出した


「よし、メフィには携帯ゲームをいくつか与えるか、それなら暇つぶしになるだろ?」


「いいわぁ・・・静希のトランプの中でダラダラゲームを延々とできるなんて、引きこもりになっちゃいそう・・・!」


メフィは恍惚とした表情を浮かべて携帯ゲーム機に頬ずりしている、何度か人外に聞いたことがあるが、トランプの中は特に何があるというわけでもないが心地いいのだという


常に最善の状態にされているという事もあってか、感覚的にではあるもののとても爽快感に近いものがあるのだという


入ったことが無い静希としてはわからないことでもあるが、とりあえずの人外たちの暇つぶしは問題なさそうである


「ねぇシズキ、これ私のセーブデータ作ってもいい?」


「あぁいいぞ、俺のデータ消すなよ?」


わかってるわよと言いながらメフィは機嫌よく宙を舞い始める、暇な時にやることができてうれしいのか早速ゲームを始める準備をしているようである


「あそうだシズキ、充電器!それと予備のバッテリーも!今のうちにたっくさん用意しておきたいわ」


「お前本当に遠慮ないな・・・まぁいいけどな、オルビアに邪薙も、今のうちにほしいものあったら言ってくれよ、用意するから」


「よろしいのでしょうか?それではノートと筆記用具をいくつかいただけますか?」


こちらは安上がりだなと思いながら静希は人外たちの要求の物を用意するために出かけることにする


なにせ予備のバッテリーなどはさすがに所持していないのだ、早いうちに充電して保管しておけばかなりの時間ゲームをプレイできるだろう


出費がかさむが、これも必要経費だ


「でも一人でやるのもあれよね・・・ねえ邪薙にオルビアも一緒にやらない?どうせ途中で勉強なんて飽きるわよ?」


「・・・いえ、さすがにそれは・・・」


出かける寸前のメフィの言葉に、オルビアは一瞬こちらに視線を向けて申し訳なさそうな顔をする


どうやらこちらの出費を気にしている様だった、なんともうれしい心遣いだが、確かに九日間勉強づめでは息も詰まると言うものだ


「構わないぞ、お前らはよく頑張ってくれてるしな、クリスマスプレゼントってことで」


「あー・・・日本じゃクリスマスにプレゼントするんだ、私には?」


「バッテリー何個も買ってやるからそれで我慢しなさい」


贔屓よそれと文句を言いながらもメフィは嬉しいようで、表情を緩めたままトランプに収納されていった


携帯ゲーム機二つにソフト二つ、そして充電器を複数


これはかなりの出費になるなと思いながら静希は小さくため息をつく


貯金は確かに学生にしては多いほどだ、依頼を複数受けたためにかなりの額が静希の口座には振り込まれている


だからと言って無駄遣いをするつもりは毛頭ない、これも必要経費


これから両親が帰ってくる際にメフィ達にはトランプの中で待機してもらうことが増えるかもしれないのだ、トランプの中でできる娯楽があればそれが何よりである


「マスター・・・本当によろしいのですか?」


「なんだよ、嬉しくないのか?」


「い、いえ、嬉しくありますが・・・その」


どうやらオルビアは随分と静希の金銭的な負担を気にしている様だった、彼女の性分として仕方がないのかもしれない


「いいんだよ、たまにはご褒美があったほうがいいだろ?それに日頃のお礼も含まれてるんだから、黙って受け取っておけ」


静希はそう言ってオルビアもトランプの中に収納する


ボードゲームやトランプなどで三人で遊んでもらうというのも手かもしれないが、この三人が仲良くトランプをする場面は想像できない


それにトランプゲームというのは案外飽きが早い、ルールを設定しても結局やるのはトランプ、必ず飽きは来るし、できることも少なくなっていく


それにトランプの性質上、床に置くことが多くなるが、静希のトランプの中に床という概念があるかどうかもわからないのだ、そう考えればゲームを渡した方がいくらかましであると言える


邪薙も収納し、静希が家を出ようと扉に手をかけた瞬間、その事柄が脳裏に浮かぶ


「まてよ、同じトランプの中に入れるとして・・・重量って平気か・・・?」


その言葉に人外たち全員が気付く、静希の能力の限界について


『あ・・・五百グラム・・・えっと・・・二つはいけそうだけど・・・』


静希のトランプの中はそれぞれ独立した空間を作り出している、意志疎通は問題なくできるようだが、その中で電波を飛ばせるかどうかは怪しいものである、となると同じ空間に入れることになるわけだが、そこで重量制限が問題になってくる


出かける前に気付けて良かったと静希はすぐにネットで今発売している最新機種の重さを調べると、バッテリー含めて約百九十グラム、バッテリーそのものの重さが四十グラムほどである


つまりバッテリーを抜けば三つの携帯ゲーム機を同時に一つのトランプの中に入れることができるが、それでは意味がない、三人同時にできてこそ意味があるのだ


「どうするシズキィ・・・これじゃ協力プレイできないわよ?」


ネットで調べている際にいつの間にかトランプから出たのだろう、メフィは少し情けない声を出しながら静希の頭に自分の顎を乗せる


恐らく楽しみにしていただけにショックが大きいのだろう、こういう時自分の許容量の少なさが恨めしく感じる


「・・・ここはあいつに頼るしかないか・・・」


静希は携帯を取り出し、電話をかけ始める


そして居場所を聞いてから移動すること数十分、たどり着いたのは明利の家だった


「というわけで、ゲーム機の軽量化を依頼したい!」


「何がどういうわけなのよ・・・」


静希が頼んだ相手というのは我らが班長清水鏡花だった


明利の家でガールズトークに花を咲かせているのをぶった切る勢いでやってきた静希が頭を下げながら鏡花に頼んだ事柄、それこそゲームの軽量化である


市販品で重すぎるのであれば軽くしてしまえばいいだけのことである


事情を説明すると、鏡花は渋々納得しながら静希が持ってきたゲーム機を手に取る


「えっと・・・なるほどやりたいことはわかったわ・・・これをバッテリー付きで三つで五百グラム以下ねぇ・・・」


バッテリー含めて約百九十グラムあるゲーム機を三つ、おおよそ全部で六百グラムある中から百グラム近い無駄な部分をそぎ落とすのだ、静希のような人間ではその作業は不可能、ここは頼りになる能力者である鏡花に頼むほかないのだ


「おじさんたち二十九日に帰ってくるんだ、じゃあそれまでイチャイチャしないとね」


「えと、そうだね、おじさんおばさんが帰ってくるんじゃ一緒にいられる時間も少なくなるし・・・」


「そういうの後でやってくれる?こっちは今集中してるんだから」


目の前でいちゃつかれるのを見ていられなかったのか鏡花は青筋を浮かべながら静希の持ってきたゲーム機の構造を理解するべく集中する


ゲームをプレイするうえで必要ない部分をそぎ落とす作業だ、少しでも間違えればゲームを動かせなくなってしまう


とはいえもともと携帯ゲーム機は限りなく軽量化することを目的に作られる、ほとんどが最良の形となっている中でそぎ落とすことができる部分は少ない


だが量産しているという事は、構造的に必ず無駄な部分は存在しているものである


鏡花はそれを探して無駄をなくそうとしているのだ


鏡花が集中しだすと、ゲーム機から欠片のようなものがテーブルの上に落ち始める


これが無駄な部分、このゲーム機が動くのには必要のない部分


少しずつ、本当に少しずつだが軽量化され最適化されていくゲーム機


そして数分後、精密作業を終えた鏡花が小さく息をつく


「はぁ・・・これで一つはオッケーね・・・あと二つ同じものを仕上げればいいの?」


「おぉ・・・さすが鏡花姐さん、まじぱねえっす、ありがとうございます、これ紅茶です」


「明利が淹れたやつじゃないの・・・ったくもう・・・」


悪態をつきながら静希が渡した紅茶を一気に飲み干し、近くにあったお菓子を口に含んで消耗を回復させ始める


大規模な変換と違い、精密な変換はまた違う意味で消耗する


特に電気機器や、精密機器に関しては手を加えること自体が難しかったりするのだ


「それにしてもゲームねぇ・・・トランプの中で通信できるのは確認したの?」


「それはこれからだ、明利、ゲーム機借りていいか?」


「はいどうぞ」


明利の持っていた同系統のゲーム機を借り、とりあえずはオルビアの入っているトランプの中に入れてみる


『オルビア、起動チェックした後で通信できるか確認してくれ』


『了解しました、少々お待ちください』


こういう時に人外たちに重量が無くて良かったと思うばかりだ、これで重量があったらそもそもトランプの中に入れられていなかったかもしれないが


数分してトランプの中からふたつのゲーム機を持ったオルビアが部屋の中に現れる


「問題ありません、同じトランプの中であれば通信機能は使えるようです」


「オーケー、あとはゲーム機を二つ買って鏡花に調整してもらうだけだな」


「簡単に言ってくれるわねまったく」


簡単に調整などと言っているが、鏡花もかなり集中してようやくできた作業だ、精密機械の調整というのは本当に細心の注意が必要なのである


内蔵されている機器の一つが破損すれば使用できなくなるようなものばかり、一つのミスが破壊に直結する以上鏡花もかなり神経質にならざるを得ない


無論、鏡花の能力があれば復元することだってできるがそれもかなり細心の注意が必要になってくる、何せこういった機械に組み込まれる電子回路などは極小で変換するにしてもかなりの集中力と知識を要するからである


「・・・まぁ、あんたには昨日の借りがあるしね・・・ただでやってあげるわよ」


「悪いな、また今度二人きりになれるようにセッティングしてやるから、んじゃちょっくら買ってくるか、ついでになんか買ってきてほしいものあるか?」


「あ、それじゃお菓子と飲み物買ってきて、それがケーキとかだったりするとお姉ちゃんは嬉しかったりするぞ!」


雪奈の全く遠慮しない要望に苦笑しながらも、静希はとりあえずメモしてオルビアを収納する


「静希君、私も行こうか?」


「いいよ、お前らはお前らで積もる話もあるだろうしな」


そう言って静希はゲーム機とソフトを購入するべく明利の家を後にする


問題解決できそうで何よりである、トランプの中にいる悪魔が微笑み、笑っているのを確認しながら静希は近くのゲームを売っている店へと向かった


誤字報告が五件分溜まったので二回分投稿


携帯ゲーム機はPSPを基準に考えています、モンハンの新作がPSPあるいはPSVITAで出たらいいのにと思う今日この頃


これからもお楽しみいただければ幸いです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ