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J/53  作者: 池金啓太
十九話「年末年始のそれぞれ」

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言語の変化

「正直に言ったほうがいいんじゃないの?親としては素直に話してもらったほうが嬉しいんじゃない?」


「下手に話して、滞在期間が延びたり、こっちに住むことになった場合、お前トランプの中でじっとしていられるか?」


静希の言葉にメフィはその状況を想像して無理ねと一言で切り捨てる


この悪魔にじっとしていろということ自体そもそも無理があるのだ、退屈を最も嫌うその性格上、ただ何もせずじっとしていろというのは酷と言うものである


「適当な本でも入れれば暇つぶしになりそうだけど・・・お前ら日本語読めるようになってたりとかは」


「簡単なのだったらね、ゲームでよく出てくる程度の物なら読めるけど・・・」


「昔の言語で書かれていれば問題はないが、今は随分と形が変わっているようだしな・・・」


オルビアと違って現代の日本語をほとんどマスターしていないメフィと邪薙はトランプの中に入ってしまうとトランプの中から見える光景を眺めることだけが娯楽になってしまう


何もすることが無いというのは苦痛だ、以前警察に拘束されたときでも寝る以外にやることが無かった静希とすればその辛さが身にしみてわかる


だがメフィ達はそもそも眠るという事をしない、オルビアもそうだが、普段夜はリビングで談笑や祈りなどを行っていると聞く


両親がいてはそれも難しくなるだろう


何とか暇つぶしできるようなものを用意したいところではあるが


「これを機に日本語覚えろよ、本とかだってそのほうがたくさん読めるぞ?」


「んー・・・だってねぇ・・・面倒じゃない人間の言語って、何で国によって違いがあるわけ?いっそのこと全部統一しちゃいなさいよ」


恐らくは全国の学生の半数以上が一度は思うこの手の事柄、何故言語統一をしないのかという考え、もちろん静希だって数度ほど考えたことがある


人間の言語は多種多様だ、国が違えば使う言葉も違ってくると言っていいほどに


それどころか同じ国でも使う言葉が違うなんて言う国だってある、国だけではなく部族という極小単位で使われる言語もあるほどだ、同じ種族であるのにもかかわらずここまで意思疎通の一つである言語が分岐しているのは人間位のものだろう


「面倒ということを知っているという事は、貴女は言語を学んだことがあるのですか?」


「大昔にね、何百年も前に少しだけ、あんな面倒なのは二度とごめんよ、どうせ数百年したらまた覚えなおしになるんだから」


恐らくは大昔にどこかの誰かと契約した際に学んだことがあるのだろう、少なくとも日本語ではないだろうが、過去の言語と今の言語は大きく変わっている


日本語でもそうだが、数百年という時間単位は文字にするとほんの数文字でしかないが、その時間は果てしなく長いものでもある


過去存在したものはことごとく朽ち果て、過去栄華を誇っていたものはほとんどが滅んでいるか形を変えることでしか存在できていない、それは文化の一部である言語も同様である


現在は古語などと言う言葉を用いて表現されるが、それが今の言語と似たような形で使用されていた時期もある、だが今の人間は古語の正しい使用法などの八割以上を知らないでいる、もちろん静希だって学校で教わる以上のことは知らない


日本の場合は明治時代に実施された全国統一話し言葉の制定という事案があったのが言語の大きな変化の原因の一つでもあるのだが、それはまた別の話である


数百年で言語はそれほどまでに大きく変わるのだ、何百年も生きてきたメフィとしてはいちいち覚えるようなことは面倒だからしたくないのだろう


「ちなみに聞いておくけど、邪薙はどうだ?これを機に日本語の習得は」


「ふむ・・・そうだな・・・もともと私の知る言葉に近くもある、これもいい機会かもしれないな」


どうやら邪薙は現代日本語の習得に乗り気のようだった、もともと日本の神という事もあり習得はそこまで難しくないかもしれない


「でしたらマスター、邪薙への指導はお任せください、九日間で日本語を完璧に使えるようにしてご覧にいれます」


「そうか?じゃあ頼むよ、お前も何かやることがあったほうがいいだろうしな」


オルビアは優秀だ、ほとんどの日本語も機械の扱いもすでに習得済み、その指導法に関してはどのような方法をとるかまではわからないが、任せて問題はないだろう


「となるとメフィはどうするかな・・・文字が読めないんじゃ漫画も小説も無理だし・・・」


「ふふん、さぁこの私を楽しませるものを用意しなさい」


まるで女王様気分で宙に浮いて笑うメフィに僅かに怒りを覚えたが、何時もトランプの中でじっとしてもらってもいるのだ、静希としても何か娯楽を用意してやりたいと思うところ、何かいいものはないだろうかと考えた時、静希はふと思い至る


それは自分のトランプの特性にも関わってくることだった


「なぁメフィ、ちょっとこれ持っててくれるか?」


「ん?これって、携帯?なんでこれを?」


いいからと言って静希は携帯を持ったメフィごと収納して見せる


その場から消えてはいるが、メフィと携帯電話はトランプの中に収納され、静希の能力で認識できていた


『メフィ、その状態で携帯は操作できるか?』


『ちょっと待ってね・・・えっと、動かすことはできるわよ、圏外だけど』


メフィの報告に静希は安心した、これでメフィに娯楽を提供できる


静希が確認したかったのは、トランプ内での機械の動作だ、メフィ達と普通に会話できているという事は収納されたものは停止するわけではない、能力によって最善の状態になり続けていると考えたほうが正確である


その時機械はどう動くか、メフィが携帯を操作できたという事はトランプ内で機械の操作が可能という事になる


無論無線電波などは通じないようだが、今はそれで十分だった


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