本質を扱う
静希がやったことはシンプルだった
先も言ったように、待ち伏せて罠にはめるだけ
ただその罠は、自然災害にもよく挙げられる、雪崩である
静希が前に出て足止めをし、その間に鏡花は能力によって静希達のいる場所よりも少し上に小さな振動を起こす、変換の能力を使えば朝飯前である
ただし距離が離れているうえに効果範囲が広いために高い集中と時間が必要だったが、十分に時間をかけて集中できる状態であったために困ることはなかった
一度降り、凍りかけた雪の上にさらに新雪が積もることで雪崩が起きやすいこの状況で、鏡花の能力は実に効果的にだった
大量の雪が巻き起こす雪崩はその場にいた密猟者をあっさりとらえ、静希達の視界の中から消して見せた
邪薙の障壁を足場にして上空を移動し雪崩の起きていない地点に着地すると、数十秒後に鏡花がその場にやってくる
「あーあ・・・これどうやって後始末すんのよ・・・」
「問題ないって、この先はまた山が続いている、道もないし人の建物がないのも確認済み、ただ谷状になってるから根雪になるかもしれないな」
鏡花の能力で部分的に振動を発生させ、局地的な雪崩だったとはいえその破壊力は計り知れない
人間の力だけではなく、自然そのものの力を利用したのだ、能力で起こせる攻撃の何倍、いや何百倍もの威力があるだろう
「密猟者は?死んだの?」
「いや生きてるだろうな、ギリギリのところで能力を発動するのが見えた、時間はかかるだろうけど脱出するだろうよ、今のうちにここから離れるぞ」
静希が上空に退避し、密猟者が雪の津波に飲まれる瞬間、その体を氷が包んだのが見えた、恐らく氷を防護壁代わりにして今も生きているだろう
もちろん雪に流され埋もれているかもしれないが、氷を作り出せるのであれば脱出手段はいくらでもある
そもそも今回の接触の目的はあくまで時間稼ぎおよび足止めだ、わざわざ止めをさす必要などない
今静希達がこうして接触している間も明利と陽太は着実に先に進んでいる、静希達からすれば雪の解けた後を追えばいいだけだから簡単に合流はできる
「にしても・・・わかってたことだけど、こういう使い方すると周りへの被害が大きいわね」
「確かにな、人がたくさんいるところじゃできない使い方だ、でもこれからの参考になるだろ?」
鏡花の能力は汎用性が高い、攻撃、防御、補助まで何でもこなせる、能力の出力も高いために大概のことは何でもできる、問題はその選択肢の多さと出力の高さ故に鏡花自身、強すぎる力を使おうとしないことにある
今回は僅かに振動を起こすだけで雪崩を発生させられるだけの条件がそろっていたからこそ簡単に事を成せた、以前の実習でも鉄砲水を起こすことだってできた
静希が今回あえてこのような大規模な攻撃をさせたのも鏡花のこれからを思ってのことでもある
せっかく強い能力があるのにもかかわらずそれを使わないというのは宝の持ち腐れ以外の何物でもない、使えるものは何でも使う、できることがあるならやってみる
それくらいの気概がなくては困るのだ
そして鏡花は今回それを体験した、自分の使える圧倒的な力とその利用法を
強すぎる力とはいえ、その力を思うが儘に使えたことで、その自覚と共に一種の快感を得ているはずだ、一度それを味わえば、また同じ力を使いたいと思うはず
これから鏡花は自然の力と自分の能力を融合した使用法を探したうえで応用してもらう必要がある、そうすればこの班の特殊攻撃力は急上昇する
天候や地形に左右されるとはいえ、その力は圧倒的だ、あって困るものではない
「・・・ねぇ静希、あんたどこまで本気なの?」
「・・・俺はいつでも本気だよ、手を抜くつもりはない」
鏡花の質問が一体どういう意味だったのかは分からないが、静希は本心で答える
手加減をするつもりは毛頭ない、それは静希の信条でもある
どんな意味の質問だろうとこれ以外の答えは静希は持ち合わせていなかった
「お、雪解けの跡発見、鏡花は痕跡を消してくれ、万が一にも追跡されないようにな」
「はいはい、跡形もなくしてあげるわよ」
この後追ってくる密猟者に見つかることの無いように雪解けの後や足跡もすべて、鏡花の能力で隠蔽していく
その後に残るのは周りと同じように雪が積もった状態となり、パッと見では周りと何ら変わりのない風景になる
雪解けの後をたどりながら数十分移動すると先行して足跡を追っていた陽太と明利の姿が見える、移動速度が遅いのはこういうところではありがたく思える、すぐに合流することができて全員内心ほっとしていた
「大丈夫だったか?ずいぶんでかい音してたけど」
「怪我とかしてない?」
「平気よ、ちょっと痛めつけてやったわ」
「鏡花姐さんの必殺技炸裂だ、跡形もないぞ」
静希の必殺技という言葉に陽太がやたらと反応し見たかったなぁと悔しそうにしていた、あれは確かに必殺技と言ってもいいくらいの代物だろう、上手く使えば一個中隊くらいは壊滅させられるのだから




