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J/53  作者: 池金啓太
十七話「追い追われる先に」

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意識の集中

「すいません、お風呂頂きました」


「上がったのね、ずいぶん男前になったわ、はい朝ごはん」


先程用意しておくと言ったのはこれだったのか、静希の前にはサンドイッチにオムレツという何とも朝食にしては豪華なものが並んでいる


先日まともな食事をとっていなかったことを考えれば一日の始まりである朝食を大量に食べておくのも必要なことかもしれないと思い、静希は手を合わせていただきますと言ってから料理を口に運び始めた


カウンターの奥にはテレビが置かれ、ニュースが流れている、今回の議員殺害についてのコメントをしているキャスターは犯人が能力者であるということがわかり嬉々として能力者全体をこき下ろしている


いい気なものだと思いながら聞いているが、とりあえず今のところ静希の実名までは出されていないようだった、未成年だからか、それとも警察が意図的に情報を押さえているのか、どちらにせよ実名が晒されないというのはありがたい


しかもその情報の中には先日静希が起こした事故の現場も挙げられている、犯人と思わしき少年を移送中に事故を起こし、犯人逃走というテロップまで出ている始末だ


反対する者もいないからか、ニュースの中のコメンテーターは好き放題に犯人である静希と今回の事故を起こした警察関係者を叱咤している


よく知りもしない癖にどうしてあそこまで饒舌になれるのか不思議なほどだ、彼らはそれが仕事だから仕方のない部分もあるのかもしれないが、当事者からすれば不愉快極まりない


果ては能力者に制定されている政府からの支援も打ち切るべきであるとか言い出し始めた、それと今回の件は関係ないのではないかとさえ思えるが、もう何も言うまいと静希はとりあえず口の中にオムレツを放り込む


「そうだカエデさん、昨日の音声データ、実月さんに送っておきたいんですけど・・・」


「あらそう?じゃあ私が送っておくわ、データそのまま送ってあげればいいのね?」


お願いしますと頭を下げるとカエデは奥から携帯端末を持ってきて先日のデータを実月に送信し始めた、これで保険はひとまず問題ないだろう、後は実月に直接お願いすれば問題ない


カエデについでにメールで頼んでもよかったのだが、さすがにそこまでするのは申し訳ないし、何より電話で直接頼みたいのだ、万が一にも声紋からここを特定されるなどと言うことがあってはまずい、なんとか別の手段で実月と連絡を取ることができるようにしなくては


「あぁそうだ、実月ちゃんで思い出したわ、昨日貴方が出発してから情報の更新があってね、すっかり伝えるの忘れてた」


「情報?いい情報ですか?悪い情報ですか?」


「・・・んん・・・どちらとも言いかねるわねぇ・・・」


カエデ自身その情報がどちらに転ぶのか判断がつかないのだろう、とりあえず彼女はそれを静希に見せるべく端末を操って画面に表示する


そこには今回の事件の解決に向けて喜吉学園の生徒に協力依頼を出すと言うものだった


それを見て静希は嫌な顔をする、あまりいいニュースではなさそうだった

しかもその依頼を出された先を見てさらに辟易する、そこには一年B組一班と書かれている


実月がどうやってこれを仕入れてきたのかなどは知らないが、実月が仕入れた以上この情報の確かさは保証されているようなものだ、となれば今、情報によれば今日から鏡花率いる一班の人間が静希を捕えるために動き出すということになる


相手は自分を知っている、そして自分も相手を知っている、相手がどのように行動するかをまず考えるはずだ


鏡花なら自分がどうやって動くと予想するだろうか、そもそも相手は自分を捕まえようとしに来るのだろうか、こちらに協力してくれないかと思う反面、恐らく必ずと言っていいほど見張りの警官などがつけられるだろうから、それも難しいだろう


となれば互いに接触しないようにするか、あるいは敵対していると見せかけて情報の受け渡しをするか、否、鏡花たちからすればまず静希としっかりと敵対しているという証明のようなものが必要かもしれない


そもそも自分がどこにいるのかも向こうはわかっていないかもしれないのだ、接触は期待せず、万が一視界に入っても見て見ぬふりをするべきだ、一応簡易連絡をできるようにちょっとしたメモくらいは作っておくべきだろう、使えるかどうかは後にして準備だけはしておくべきだ


「どうかしら?いい情報だった?」


「・・・ありがたいですけど・・・正直微妙ですね、どっちに転ぶか」


こういう時に離れていても意思疎通ができればよかったのだが、携帯などが封じられている今、相手の行動は予測で何とか判断するしかない


相手が持っている情報はどれくらいだろうか?静希程ではないにせよ城島がいるのだ、最低限現在の状況がわかる程度までは保持していて不思議はない、となると三人はどのように動くだろう


いや三人というのは正しくない、今静希の代わりになってあの班のブレインになっているであろう鏡花がどのように動くかだ、ある程度の情報を仕入れれば鏡花の頭脳であれば、すでに静希が目撃者に話を聞くところまで終えたという工程を終えているという可能性に勘付くだろう


問題はその後、彼女がどう動くかだ、静希が鏡花と同じ立場なら間違いなく目撃者か警察官に目をつける、警官の場合特定までは難しいだろうから恐らく事情聴取した警官全員に話を聞くのではないだろうか


そこまで考えて静希は鏡花たちに連絡する用のメモを作成し始める、自分が手に入れた情報、そしてこれからどう動くかを鮮明に記したものだ

相手は自分を裏切らない、その確信があるからこその賭けであると言っていい




メモを作り終え、朝食をとり終えた静希は、入念に変装をすることにした


鏡花たちが行動開始するのは時間的に恐らく昼近くだろうが、町で鏡花たちに会う可能性がある以上下手な変装をしてばれるわけにはいかない


「マスター、本日私は如何様に?」


「そうだな・・・一人でいると怪しまれるし・・・一応ついてきてくれ、後で変装させるからちょっと待っててな」


かしこまりましたとその場にたたずむオルビアを視界にとらえながら静希は着々と変装を済ませていく


今日はこれから久しぶりに雨が降るそうだ、雨は視界と透明度を物理的に下げてくれるため潜む側としてはありがたい、色のついた傘を用いれば顔や体格を多少なりとも誤魔化すことだってできる、雨の音で足音や声なども少しは紛れるだろうし、傘のおかげで個人の判断が難しくなる


無論、特殊素材と化粧によって顔を形成している以上、大量の水を被ると必然的に変装が解けてしまうという欠点があるが、雨程度であれば数時間なら問題なく行動できるだろう


「そういえば今日はどこに行くの?動き回ると危ないんじゃない?」


そういってコーヒーを飲んでいるカエデに一瞬視線を向けて再び鏡に向かい合う静希、変装中というのはそれなりに集中したいが無碍にするわけにもいかない


「今日はまず和田とかいうのが勤めてる警察署を見に行くつもりです、中には入りませんが、通過する形でどういうものかを見に行って、事件があった現場を経由して和田の自宅を下見して、それで戻ってくるつもりです、もし可能なら和田を実際に見ておきたいところですね」


先日夜中に動いて感じたのは地図上の表示と実際動いたときの地理に随分と違いがあるような気がしたのだ、普段動くような山などであればそこまで気にすることもなく動けるのだが、町の中を動くというのは意外と経験が少ない


見知った町であればすぐに場所と地図上の表示を連結させられるが、見たことも行ったこともない場所ではすぐには地図と現場を一致させることができないのだ


無駄な時間は割けない以上、少しでも時間を有効的に使いたい、この店の中でダラダラしているよりはずっと有意義な時間の使い方だ


警察署を見に行くというのも、そこに勤めている和田の通勤ルートを確認するためでもある、事件の真っただ中ということを考えると、もしかしたら警察署内で寝泊まりしていることも考えられる、見ておいて損はない


情報の中に和田の写真も載っていたが、その写真もいつの物かわからない以上、現物を見ておいて損はないだろう


夜に接触するということは決めてあっても、実際何処にいるのかも何をしているのかもわからないような状態だ、接触するのは多少乱暴な方法をとらなくてはならなくなるかもしれない


警察相手に立ち回るなんて面倒極まりないが、やるしかない現状ではそんな弱音は吐いていられない、覚悟を決めて大きく深呼吸すると同時に静希は変装を終える


「よし・・・次オルビア、ここ座れ」


「よろしくお願いいたします」


静希の変装は見事なものだ、その道の人間も注視しなくては見破れないであろう程に完成度が高い、その分時間をかけたという事でもあるが、少なくとも通行人や一般警察などではこの変装に違和感を覚えることはまず無理だろう


同じように今度はオルビアにも時間をかけて変装を施していく


男性のそれとは違い、女性のそれにはさらに時間がかかる


なにせ特殊素材を肉や肌としての質感を演出するための工程だけでなく。その上から化粧をする演出もしなくてはいけないのだから


倍とまではいかないまでも、相当の時間をかけ変装を終えた静希とオルビア、オルビアはギターケースに本体である剣を入れ、軽く背負う


七時に起きたというのにもう十時になろうという頃だ、少々時間をかけすぎたかもしれないなと思いながら静希は出かける準備を終える


「それじゃあ行ってきます、一応十九時くらいまでには戻るつもりですので」


「いってらっしゃい、途中でちゃんと傘買うのよ?」


カエデに見送られながら曇天の空の下二人は歩き出す


街中に入ると、そこには人があふれていて二人はすぐにその中に紛れることができた


「あの方には本当に頭が上がりませんね」


「本当にな・・・これが片付いたらちゃんとお礼言いに来なきゃ」


今回の件で、カエデには本当に世話になっている、一宿一飯などと言うレベルでは済まないほどの恩ができてしまった


静希は今まで、良くも悪くも特徴的な大人に恵まれる


自分のことを叱ってくれる、心配してくれる、笑顔で迎えてくれる、変わらず接してくれる、厳しく指導してくれる


運がいい、と一言で言ってしまえばそこまでだが、静希は本当に良い大人に巡り合える


「実月さんにもちゃんとお礼言わなきゃな、また借りができた」


「そうですね、すべてうまくいったら、何か贈り物をしてはいかがでしょう?」


「・・・あの人の喜ぶものって、ちょっとイメージできないな・・・」


今回静希が巻き込んだ人間は少ないが、その数名にこれ以上ないほどに助けてもらっている、巻き込みたくなかった数人に関しては、これからどうなるかはわからない


せめて明利達は巻き込みたくなかったのに、と頭の中で悔やむが、こんなことになってしまった以上は悔やんでも仕方がない


今は意識を切り替えたほうがいい


私情を入れてはそれが表情に出てしまう、もしこれで街中でうっかり誰かと遭遇したときに表情の強張りからばれることだってあり得る


変装しているとはいえ長く一緒にいた仲間だ、そのくらいのことはしてもおかしくないと静希はある種の信頼を彼らに向けていた


誤字報告が五件分溜まったので二回分投稿


これからもお楽しみいただければ幸いです

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