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J/53  作者: 池金啓太
二話「任務と村とスペードのクイーン」

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エルフの同級生

「ふざけるな!」


翌日、静希は謎の怒号によりたたき起こされた


何が起こっているのかもわからず周囲を見回すと東雲を除く全員が襖から外の廊下の様子を覗いている最中だった


時間を確認すると時刻は朝六時、なんだってこんな時間に騒いでいるのだろうか


「おぉ、起きたか、早く来い、なんか大変なことになってるぞ」


「何がどうしたんだよ」


襖の向こうに聞こえないように小声で話しながら静希は瞼をこする


目ざましにしては最悪だ、誰かの大声で起こされるなんてのは二度とごめんだと実感した朝である


「東雲を回収に来た班なんだけど、先生がちょっと・・・」


「捜索班に彼女を獣と間違えて討伐しちゃったって言ってるのよ、それであっちの人たちが・・・あっちのエルフがすごく怒ってて話がややこしく・・・」


「だいたい!そちらの班には『切裂き魔』がいたそうじゃないか!百戦錬磨の彼女が獣か人間かを見間違えるはずがないだろう!」


「こちらとしても遺憾だがな、やってしまったのは一年の方だ、そもそもエルフの長が早くに対応していればこんなことにはならなかったんじゃないのか?」


城島はずいぶんと高圧的に対応している


エルフの言葉も教師に対してずいぶんと失礼な言い方ではあるが、それに対してのあてつけだろうか


「てかなんでそんな嘘ついてるんだよ、嘘ついても一利もないぞ」


「なんでもエルフの態度が気に入らないんだって、私達に東雲がここから出ないように見張りさせたわ」


「なんつーか、先生らしいよ」


陽太の発言に心から同意する


何か意味があってのことならともかく、気にいらないからとは、城島らしいなんとも感情論に満ち満ちた回答だこと


「なら、ならあの子の遺体はどうした!?どこにある!?」


「山に埋葬したよ、あれがエルフだなんて知ったのはお前たちが来てからだったんだ、事前に何の連絡もせず、外部からの連絡も断ち行動していたお前達から何か知らされれば何か変わったかもしれないが、安心しろ丁寧に深くまで埋めた、あれなら野犬に掘り返されることもない」


「この・・・!」


さすがにやり過ぎだ、同級生のエルフの声が震えている、怒りか悔しさか、仮面の向こうからでもその感情が読み取れた


どちらにせよ城島はエルフの不備というよりエルフの対応を不満に思っているようだ


ずいぶん徹底的に責めている


「私達は依頼に従い、害獣を『駆除』した、文句を言われる理由はない、全てお前達エルフの愚かさが引き起こしたことだ」


「・・・!」


「さすがにそれは言いすぎですよ先生」


見ていられなくなって静希は襖を大きく開けて城島とエルフの間に立つ


「なんだお前は・・・」


「一班の班員だよ、初めましてエルフの同級生」


「・・・お前があの子を殺したのか・・・?」


「あぁもう、先生も芝居が過ぎますよ、ちょっとやり過ぎです」


「邪魔するなよ、ここからがいいところだったのに」


「東雲は確かにこの部屋から出していませんよ、問題ないでしょ」


その言葉に城島はあーあとつまらなそうに首をならす


「安心しろ、東雲風香は生きてるよ、まだ朝早いから寝てるけどな」


「生き・・・て・・・?」


襖の向こう側を覗くと、そこには穏やかに寝息をつく東雲の姿がある


「あ・・・あぁ・・・!」


力が抜けたのか、安心して腰が抜けたのか、エルフはその場にへたりこむ


「だが、うちの班員の機転がなければ本当に殺していてもおかしくない状況だった、そのことは肝に銘じておけよ、エルフ」


さすがに何か言い返す気力もないのか、力なくうなだれている


そこに恐らくエルフの班の引率教師だろうか、何人か教員がやってくる


「城島先生、詳しく状況を知りたいのでお話をよろしいでしょうか?」


「えぇ構いませんよ、たっぷりとこちらの文句を聞かせてあげます、五十嵐、そのエルフをこの部屋から出すなよ、東雲と一緒にだ」


「はいはい、了解です」


エルフに中に入るように促し、襖を閉める


さすがに騒ぎが大きいせいか、一班の人間は浮足立っている


そこで静希は違和感を覚えた


「なぁ、お前の班員は?二年生もいないな」


「彼らはエルフの村で奉仕作業を行っている・・・捜索は私と教員で行った」


「置いてきたってことかよ、すごいチームだな」


チームというより、明らかにエルフのワンマンチームと言った方が正しいかもしれない


今回はエルフの問題が関わっているから仕方ないかもしれないが、それにしてもひどい対応だ、最初からチームプレイを否定していると言ってもいい


エルフは東雲のそばにより、幼い少女が無事であることを心から喜んでいるようだった


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