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J/53  作者: 池金啓太
十七話「追い追われる先に」

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強すぎる違和感

静希はとりあえず手錠こそされないまでも、警察官二人が乗ってきたパトカーで近くの警察署まで連行されることになった


まさか二日連続で警察署に行くことになるとは思っていなかっただけに静希の表情はよいものではない


警察署につくと、静希は取調室のような場所に放り込まれた


一体自分が何をしたのかというような扱いだ、はっきり言ってまともではない


だが連れてこられるときに周囲の警察の反応を見た時、どうにも反応が二極しているような気がした


不思議そうな、気の毒そうな表情をしている人間と、明らかにこちらに疑いの目を向けている人間


前者がほとんどで、後者は数えられる程度しかいなかったが、警察の中でも今回のことがどういう事なのかを理解している人間は少なそうだった


「武器などを身に着けていたらすべて没収する、何かあるか?」


「いえ、普段は武器は使いませんから」


ボディチェックのようなものを受け、体に武器が仕込んでいないことを確認すると、先程静希を連行した警察官がテーブルの向こう側に座る


静希が能力者であることを知っていて武器の所持を確認しておきながら能力がいったいなんであるかを確認しないところが無能力者らしい


能力者によっては武器など意味がないし、身に着けていないからと言って武器を所持していないということにはならない


もう少し能力に精通した人間が来るべきではないのかと思えてしまう


「もう一度聞くが・・・君の名前を教えてくれ」


「五十嵐静希です」


「先日の十四時前後何をしていた?」


「学校で授業を受けていました」


「そして夕方からは警察署にきていた、その後は?」


「家に帰りました」


「家族は?」


「海外出張中です」


聞かれたことには素直に答えていくのだが、正直言ってこれが本当に必要なことなのかもわからない


一体どういう状況になっているのだろうか、静希は頭を回転させ始める、少なくともよくない流れであることは間違いないのだ


「あの、何で俺が事件の容疑者に?」


「君は聞かれたことに答えていればいい、余計な口を叩くな」


警官の言葉に静希は一瞬イラッとするが、怒ったら負けだと言い聞かせて警察の仕草をこまやかに観察する


調書に何かを書き記しているのはわかるのだが、一体何を書いているのかまでは見えない


アリバイもあるような人間をどうやって容疑者にできるのだろうか


殺害されたのが国会議員ということは、恐らく事件が起きたのは都心のどこか、少なくともここから一時間程度はかかる


だが能力者に距離的なアリバイは意味がない、なにせ転移系統の能力を使えば距離を一瞬で潰せるのだから


だが静希の場合は実際に授業を受け、その様子を教師もクラスメートも見ている


これでアリバイが成立しないとなるとかなり強引な犯人説を作られていそうなものである


「まだ俺は犯人ではなく容疑者なんですよね?なら聞く権利があると思いますが?なにが起こって、なぜ俺が疑われているのか」


「同じことを言わせるな、君はただ聞かれたことを」


「無能な人間に何を言っても同じでしょう?無能じゃないというなら俺の質問に答えて見せろ、それとも何も知らされてないから何も話せないのか?末端の下っ端ってことか」


あえて挑発的な発言をすることで静希は相手の動向を探ろうとした、その結果警察官は明らかに静希に怒りの目を向けて机を強くたたいて見せる


だが机を叩いて音を鳴らしたくらいでは静希はびくりともしない、その程度の脅しは静希にとって何の意味もない


「調子に乗るなよ能力者、飼いならされているならそれらしく大人しくいう事に従っていろ」


静希の顔に自分の顔を近づけ、胸ぐらをつかんでさらに脅しをかけようとしているのだが静希にとっては滑稽にしか映らなかった


顔が近くなって感じることは目の前にいる男の口が臭いことくらいである


「飼いならせてると思い込んでるバカのいう事を聞く奴はいませんよ、それとも尻尾を振って喜んでるふりでもしますか?」


「・・・!この!」


静希の挑発に警官は静希の頭を掴んで机に叩き付ける


大きな音が部屋の中に響き、静希の頭に僅かに鈍い痛みが刻まれるが、正直に言えば全然痛いと思わなかった


普段訓練で負っている痛みの方がよっぽど強い、それに左腕を失ったときの痛みの方がずっと強かった


「無抵抗な相手に暴力振るって優位に立ったつもりですか?言葉を返せないから手が出る、自分から無能の証明して恥ずかしくないんですか?」


挑発を繰り返すと警察官は静希の頭を掴んだ状態で椅子を倒し静希を転倒させる


その時にわざと大きな音を立てると、外から何事かと数名の職員が様子を見に来た


警察官は入ってくるなと注意を呼びかけるが、子供相手に何してるんだと何人もの職員から非難を受け苦虫を噛み潰したような表情をしていた


静希はこの警察署の職員から軽く手当をされ、これ以上暴行を加えないように数名の職員と一緒に取り調べを受けることになった


ここまでうまくいくとは思っていなかったが、少なくとも話し合いをできるような状況にはできた


怪我など負っていないし仮に負ったとしても左腕のおかげで自動回復するのだからほとんど無傷だ、イーブンとはいかないまでもまともな状況に持って行けたのは僥倖というべきだろう


恐らく静希を学校から連行したこの警察官はここの署員ではない、東京の本庁の人間だろう


理由として能力者への対応がお粗末だ、本当にこの署の職員なら喜吉学園が近くにある故に、能力者への対応は慣れたものであるはず、なのに本来するべきである能力への質問なども一切なくただの事務的な詰問に入った


もう一つの理由として、ここにいる署員の視線が明らかに不自然だ、少しだけ嫌悪感も含んでいるような視線が眼前の警官に向けられている


好意的に見られていないのは勤め先が違うからというだけではないだろう

あの横暴な態度に何かしら思うところはあるのだろう


先程の言いぶりから能力者を化物や獰猛な獣扱いしていたり見下したセリフを言うあたり、いかにも高学歴の無能力者といった感じである


「それじゃあ質問させてください、俺は何で容疑者扱いされてるんですか?少なくとも先程あなたが聞いた時刻、俺は学校にいた、事件の発生場所、時間、それらを教えてください」


静希の質問に、目の前の警官は眉間にしわを寄せたが、舌打ちをした後ですぐに書類を見てため息をついて見せる


「事件発生は昨日の十四時、東京にある被害者の事務所、君が容疑者に上がっている理由は二つ、一つは目撃証言があったこと、もう一つは、現場から君の物と思われる毛髪が見つかっている」


その言葉に静希は目を丸くしてしまった


どういう状況なのかを理解する材料が増えたのは喜ばしいことなのだが、まさかこういう情報が入ってくるとは思えなかったのだ


というより、目撃情報やら毛髪が見つかっているということにも驚いた


「・・・えっと・・・目撃・・・ってことは目撃者がいたんですよね、その人が、俺を見たと?」


「そうだ、五十嵐静希を見たと言っていた」


「・・・その人誰ですか?」


「教えることはできない」


静希は唖然としてしまっていた


その場に自分は居なかったのにもかかわらず、自分を見たなどと言う証言があり、行ったはずのない場所にもかかわらず自分の毛髪が見つかるなんてありえない


一体全体どういうことなのかさっぱりわからなかった


「えっと・・・じゃあ、その目撃証言と見つかった毛髪だけで、俺が犯人だと?」


「そうだ」


「その時間学校にいたのに?」


「能力者ならそのようなアリバイはいくらでも覆せる」


「・・・無茶苦茶だ・・・」


いくら無能力者が能力の実態について詳しくなくともまさかここまでひどい思考ができるとは思っていなかった


能力者を魔法使いか何かと勘違いしているのではないだろうか


「仮に、俺が能力でアリバイを作ったとして、教室で授業を受けている俺はどう説明するんです?幻でも使えってんですか?」


「その通りだ、我々の考えは、君は学校に幻をかけ、東京の被害者の事務所まで向かい、そして殺害、何食わぬ顔で元の学校に戻る、瞬間移動など使えなくてもこれなら問題なく犯行を行える」


「俺の能力収納系統なんですけど・・・」


「偽る方法などいくらでもある、現に目撃者は『五十嵐静希を見た』と言っている」


あまりの暴論に静希は頭を抱えながらも思考を続ける


無能力者の能力者に対する勘違いは何時ものことだ、それは気にしない、ここで疑われているのであれば疑いを晴らせばいい


問題になっているのは目撃証言と静希の物と思われる毛髪


そう考えた時一つ違和感を覚えた


「・・・あの、その目撃者の証言って、見た人がどんなだったかとかそういうのじゃなかったんですか?」


その疑問は警官の言った『五十嵐静希を見た』という証言だ


普通証言などでは身長がどれくらいで体格がどのくらいだとか、そういう表現になるのではないかと思うのだが、なぜ五十嵐静希などと言う個人の名前がはっきりと出てくるのだろうと不思議になったのだ


「いや、目撃者の証言は一貫して『五十嵐静希を見た』というものだったよ、だからその場に落ちていた本人と目撃者や職員以外の毛髪が君の物であると断定され、今詳細な検査を行っている、明日にでも鑑定は終わるだろう」


警官の言葉に静希は眉間にしわを寄せた


少なくとも静希には東京にいる人間に知り合いなどいない、そして議員の近くにいて、犯罪などを目撃できるような立場にいる人にも心当たりがない


なのになぜその目撃者は自分のことを知っている?


何かおかしい、そう思いながら静希は頭の回転数をどんどんと上げていった


誤字報告が五件たまったので二回分投稿


これからもお楽しみいただければ幸いです

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