表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
J/53  作者: 池金啓太
二話「任務と村とスペードのクイーン」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

64/1032

入浴(男子+α)

食事の際、東雲に肩を貸しながら全員で食堂に向かう


今日も食事は豪勢に出来上がっていた


大皿に乗った肉や野菜、大盛りの米に具だくさんの味噌汁


どこかの定食屋で出てくるような豪勢な食事だ、孤独であろうとグルメであろうとこれほどの料理が出てくれば食指が動くことはもはや確定的である


陽太も雪奈もいただきますの号令と同時に競争するかのように胃袋に詰め込んでいく


今日は特に動いたからエネルギーの補給が必要なのだろう、昼もこんな感じだったのだろうかと若干心配になってきた


「そういえばみなさんは明日のいつごろまでこちらに?」


「この子の迎えが来て、手続きが済むまでです、それまではご厄介になります」


「そうですか、さみしくなりますね」


さすがにこの大人数を抱えているだけあって食卓はやたらとにぎやかだ


陽太と雪奈がおかずを奪い合い、鏡花と熊田が世間話を、静希と明利がどれが美味いだのこれは何を使っているのかなど自由に話をしている空間も、あと少しと言ったところだろう


その輪の中に東雲も加わっていた


仮面の下の部分を外し、黙々と食事を味わっている


何も言わないが、非常に気に入ったのか口元が笑っているのが覗いている


その様子を見て村長夫妻は安心したのか食事を続けていた


「ほれ、後片付けが終わったら入浴だ、とっとと済ませろよ」


引率教師らしいことを言う城島の言葉に従い、皿洗いを終えた生徒達は入浴の準備を始める


「今日は男子が先だろ?昨日は譲ったんだから」


「えぇー、なによあんたの汗が混じった風呂に入れっての?」


「なら俺達はお前らの汗が沁み込んだ風呂に入るってわけだ」


どっちもどっちだがそれは別段気にするようなことではないのではないかとも思うが、もはやこの二人はどんなことでも口げんかができるのだ、今更何も言うまい


どっちにしろどちらかの汗が沁み込んだ風呂に入ることになるのだ、なんだかいやらしい響きがしたが静希にはそういう性癖はない


「じゃあせっかくだからここはお姫様に決めていただこうじゃないか」


雪奈が小柄な東雲を前に引っ張り出して来てにやりと笑う


「え?私ですか!?」


東雲もまったくの予想外だったのだろう、仮面越しでもわかるほどにおろおろしていた


生徒とはいえ全員自分より年上、その全員が自分に目を向けている、そんな状況に東雲はすっかり委縮してしまっていた


何とか助け船を出してはくれないかとチラチラと静希の方を見てくるがなんともできない、お手上げのポーズをして東雲の判断に任せることにした


「じゃ、じゃあ、男性が・・・先で」


「さあ皆の衆、姫の勅命だ、さっさと風呂に行くのだ」


「へーいへい、さすがお姫さま、わかってるね」


「ちぇー」


さすがにこの状況で反論はできないのか鏡花は少々不満そうだったが仕方ないと言った様子で肩をすくめていた


「にしてもだいぶ回復したみたいだなあの子」


「あぁ、この様子なら明日にはもう健康状態になれるって明利もいってたし、心配いらないだろ」


明利の栄養管理と体調管理はほぼ完璧だ


普通なら医療機関で数日点滴生活だろうが、こういう時に治療系能力者がいると非常に助かる、何せ同調すればその体の内部状況をほぼ完璧に把握することができるのだ、栄養補給に必要なものや食材などもすぐにわかってしまうのだ


「あら、これからお風呂?」


入浴の準備をして風呂にいざ入ろうとした瞬間、後ろから声が聞こえる


「うわ!悪魔」


「失礼ね、メフィストフェレスよ、ちゃんと名前で呼んで頂戴」


一糸まとわぬ姿でいるというのにまったく意に介さずに出てくるこいつはいったい何を考えているのか分からない


仮にも女の体をしているのになぜこんなにも無頓着というか遠慮がないのだろうか


「へえ、シズキって顔に似合わず凄いのね・・・」


「見てるんじゃない、それでも女か」


デコピンするといやーんなんて声をあげてくるくると空を回転していく


「何かお前慣れてないか?」


「あぁ、もう突然現れるのはしょうがない、俺の能力じゃこいつを拘束することはできないんだ」


「ということは五十嵐のプライバシーはほぼないようなものか、同情するぞ」


「同情するなら代わってくれませんか?」


「すまないな、俺にはこいつを許容するだけの大きな懐はない」


「そうよシズキ、懐もあっちも大きなあなたじゃないとダメなの!」


もはやセクハラレベルの発言だ、仮にも女性の姿をした人物が言っていい言葉じゃない


まぁ悪魔なのだが


「いい加減にしろ、男の入浴なんて見て何が楽しいんだ」


「色々楽しいけど?あぁヨータ、別に気にしなくても世の中サイズじゃないわよ」


「うっせー!お前戦闘の時とずいぶん違うじゃねえか!いつか消し炭にしてやるからな!覚えてろ!」


「楽しみにしてるわ」


もはや遊ばれている、急いで入浴を終えないとさらにからかわれそうだ


それ以上に男としてのプライドとも言えなくもない問題をそんなにあっさりと比較してしまうのはいかがなものか


陽太は自信を失くしてしまったのか隅っこで頭からシャワーを浴びている始末、後でフォローが必要かとも思ったがこればかりは静希にはどうしようもない


「にしても先輩随分落ち着いてますね」


「うむ、女性は四十を過ぎてからが最も輝くからな、メフィストフェレスの体は確かにすばらしいが、見た目二十歳過ぎと言ったところだろう、まだ俺のストライクゾーンには届かないからな」


そのドヤ顔はいったい何の意味があるのか、どちらにしろ高齢な人物をあげるというだけで特殊な事例なのにどうしてこうも堂々としているのだろうか


もう少し控えめに行動してほしいものだ


「先輩は特殊すぎます」


「そう褒めるな、照れるじゃないか」


褒めてないんですがと付け足しながら静希達は足早に入浴を終え女子たちと交代した


その後東雲が雪奈と鏡花の餌食になったのは言うまでもない


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
10年以上昔に読んだけれど、私の風呂どっちが入るか知識問題はここからだったか…笑
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ