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J/53  作者: 池金啓太
二話「任務と村とスペードのクイーン」

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人の親、エルフの親

「鏡花さん?」


「あぁ、サービス残業御苦労さまってな」


その残業をさせているのは自分なのだがそのことは黙っておく


鏡花には確かに後で何らかの詫びを入れなくてはならないだろう


今回の実習で一番功績をあげているのは間違いなく鏡花だ


事前の情報収集、戦闘時のフォローに金網の修復


汎用性の高い変換能力を持っているとはいえ、少々無理をさせすぎているのも事実


しっかりといたわってやらなければ


と、電話を見て思い出した


ようやく東雲も意識を取り戻し、実習中のマストオーダーも完遂したのだ、そのことを学校側に報告して何とか捜索隊に連絡を取れないものか


もしかしたらここにたどり着くのが早まるかもしれない


連絡などはすべて教員が管理しているので静希は知りようもないが、城島ならば何か知っているかもしれない


「ちょっと先生のところにいってくる、明利東雲を頼む」


「うん、いってらっしゃい」


「東雲、ちゃんと寝ていろよ」


「はい」


部屋を出て足早に城島のいる部屋へと向かう


ノックして返事があった後に入ると城島はテーブルの上に資料を並べて報告書を作成していた


仕事をしているのが新鮮に感じる教師というのもどうなのだろうか


「先生、東雲の保護を学校側から何とかエルフの方に報告できないんですか?」


「無理だ、いや、エルフの村に報告することはできるだろうが捜索隊の方に連絡するのは難しい、連中はすでに山に入ってしまっているしな」


「なら、エルフの村から誰か迎えに来るとか」


「自分たちが探すこともしないで学校に依頼した連中が迎えに来ると思うか?」


「・・・」


城島は書類を書く手を止めずに淡々と静希の質問に答えていく


エルフが彼女を探さなかったのは、彼女に悪魔が乗り移っているからだと知ってのことだ、被害は最小限に、身内にやらせるというのもある意味都合のいい建前でしかない


「なんでエルフの依頼主はうちの学園のエルフに捜索を頼んだんでしょうね」


「そりゃあ、身内の始末は身内でつけるって話だろう?」


「東雲に悪魔がついているってわかっているのに?」


「付いているからこそだよ」


「?」


城島の言葉を理解できずに静希は疑問符を飛ばす


「建前だろうがなんだろうが、エルフは学園に依頼を出した、そしてどんな理由であれそれが失敗すればその尻拭いは学園がすることになる、若いエルフが一人犠牲になったとあれば連中は喜々として学園に非難を浴びせるだろうよ、自分達の失態を学園側の公式な失態にすることで隠そうとしてるんじゃないか?」


「そんな・・・同じエルフなのに?何でそんなこと」


エルフはエルフと仲が良く、守りあって生きているものとばかり思っていた静希はどうにも信じられない


身内をトカゲのしっぽ切りのように使うなんて想像もつかなかった


「五十嵐、お前は確か一人暮らしだったな」


「え・・・はい・・・」


「両親はどうしている」


「えと、出張が多くていろんなところを転々としています」


「連絡は来るのか?」


「はい、一週間に一度くらい」


教師のような、いや教師なのだが、突然の質問に静希はうろたえながらも答えていく


「お前の親は、お前のことを心配しているか?」


「はい、でも両親ともに無能力者なので、怪我だけはしないようにとだけよく言われます」


無能力者は能力という物がどれほど危険なのかほとんど知らないで育つのが実状だ


ある程度の基礎は学ぶ、だがそれ以上の事は学ばないし関わらずに生きていく


怪我などというものではない被害が出ることも、静希の両親は知らないのだ


「そうだ、それが親って生き物だ、子供のことを心配して真直ぐに想ってやるのが親だ、だがな、エルフは違う」


手を止めて静希に向き合うと、静希は驚いた


城島が前髪の切れ目から鋭い目を晒し、静希を睨んでいた、いや普通にしているつもりなのだろうが、その鋭い眼光は睨んでいるように見えてしまう


彼女の眼には普段とは違う凄みがあった


「私たちが感じるような情愛や親愛、そういった物があいつらにはない、そうでなきゃ、東雲の親がいの一番に駆けだしているはずだ」


「・・・今回の東雲の依頼主は?」


「依頼主はエルフの村の長だ、彼女の親じゃない」


エルフに私達の常識は通用しないと突きつけて城島は再度報告書の作成に戻っていた


「きっと、捜索隊にいるエルフの親も同じようなやつなんだろうよ、エルフ全体の利益と自分の子を天秤にかけられるような」


そんなのは親とは言えんがなと吐き捨てて報告書の作成を続ける


エルフという生き物は、自分たちとは決定的に違うのだろうか


「だが、それはエルフの大人の話だ、子供はお前らと何ら変わりない、その点は安心しろ」


その言葉は救いがあるのかないのか、よくわからない言葉だった


「お前達も、提出用のレポートをすぐ書けるように要点をまとめておけ、後で楽だ」


「・・・はい」


エルフに私達の常識は通用しない


自分たちとは違う人種なのだなと改めて実感し、静希は部屋を後にした


一日ほど家を開けることになるので初めて予約投稿を使用しました


もしかしたらうまく投稿されていないかもわかりません・・・



楽しんでいただければ幸いです


感想をくれた方、ありがとうございます!非常に嬉しく、やる気が上がりました!


これからもこの作品を楽しんでいただければ嬉しいです

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