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J/53  作者: 池金啓太
十六話「示した道と差し出された手」

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今いる場所から見えるもの

「またそれは・・・面倒なことになっているんだね・・・」


一部の人間に悪魔の契約者として認知され、テオドールに暗殺されかけ、そしてテオドール経由で外交のカードに使われるかと思えばお姫様の道楽に付き合うことになった


そんなことを話すとエドは笑いながら紅茶を口に含んだ


「笑いごとじゃねえよ、こっちとしたらいい迷惑だ、お前だって一応俺と立場は変わらないだろ?」


エドも静希と同じく悪魔の契約者だ、国もしっかりとそのことは認識しているだろう


だがなぜかエドは飄々としていた


「ふふん、生憎と僕は世界中を飛び回っているからね、そう簡単に面倒事には巻き込まれないのさ、それに公的に認められているからこそ手が出しにくいのかもしれないよ?」


「・・・それってどういう事だ?」


エドの言葉に静希は眉をひそめる


公的な立場になると面倒が起るかもしれないからこそ静希は悪魔の存在を隠しているというのに、公的な立場だからこそ手が出せないというのは、少し理屈が通っていないような気がする


「簡単な話さ、大きな組織にはそれだけ派閥がある、それは国の規模でも同じ・・・僕みたいに国と国を自由に飛び回っているような人間にどこか国のお偉いさんが何らかのアクションを起こせば、それだけで問題行為になるんだよ」


一瞬何を言っているのかわからなかったが、静希はすぐにその言葉の意味を理解した


エドは幸か不幸か世界中を飛び回る職に就いている


もしこれでエドが研究者のままで国内に居続けているような立場だったら静希のように面倒事に巻き込まれることもあったかもしれない


だが世界中飛び回っている悪魔の契約者に、どこかの国の人間が何らかのアクションを起こせば、それがどこかの国への工作活動なのではないかと下手な勘繰りをさせる可能性がある


無論、ただ自国内の問題を片付けてもらいたいと思うかもしれないが、国際社会においてその歪みは大きな問題になる


公的に認められているということは必然的に他国にもその存在を知られているということでもある


互いの大きな存在が互いを牽制することである種のストッパーになっているということだ


単にあちらこちらに移動し続けているから接触しにくいというだけではないということだろう


「なるほどな・・・それじゃ俺も学校卒業したら父さんの仕事手伝うかな・・・」


「はっはっは、そりゃいい、そうしたら僕も手伝えるしね」


静希の父和仁は貿易商として世界中を渡り歩いている、以前その関係でエドと知り合いになったりした


将来父の仕事を手伝えば自分も面倒を押し付けられずに済むのだろうか


だがそうすると必然的に日本にいることは難しくなるだろう、オルビアがいるから会話は問題ないだろうが、書面上の取引をする場合は諸外国語をマスターしなくてはならない


そう考えると億劫になり、とりあえず選択肢の一つとして頭の隅に置いておくことにした


「ま、シズキはまだ学生だ、いろんな可能性がある、自分にできること、自分のしたいことをよく考えて選ぶといいよ、シズキなら変わろうと思えばいつだって変われる」


「まるで先生みたいなこと言うんだな、なんかそれっぽいぞ?」


「はは、もしかしたらそっちの方があっているのかもね」


過去研究者として大学にいた時よりも、父の仕事を手伝っていただけの時よりも、今の方が楽しいのだという


誰かと接して、一緒に悩んで考えて、少しずつ一緒に進んでいく、そんな回りくどくて面倒な工程が楽しいのだという


なるほど、静希がエドのことを何となく信頼できる理由が今わかった


エドは相手のことを思って行動できる、自分のためだけではなく、誰かのために行動できる


時としてそれは空回りすることもあるが、そこに悪意があることは少ない


一つ一つの物事を考えて、じっくりと煮詰めて、誰かのためになることをできる、そんな人間だからこそ信頼に値する


自分を含め周りにいる人の中で、人間性が優れた人物というのは意外と珍しい


静希や陽太は論外、鏡花は常識はあるが毒舌、明利は優しいのだが臆病、なおかつ静希に依存している


雪奈も静希達と同じく論外、熊田は性癖に難あり、城島は教育者としてそして兵士として優秀ではあるが性格に難あり


石動は一見まともだがその性格がまともかと言われると少し首をかしげてしまう、彼女はどこかずれていると言ったほうがいいかもしれない


東雲姉妹はまだ幼く、人格についてどうこう言える段階ではない


今になって思えば静希の交友関係にある人の中で性格面でまともなのはエドモンドくらいのものではないかと思えてしまう


職もあり、人格者、なおかつ恩を忘れず、誰かのために動くことのできるタイプの人間


「・・・どうしたんだい?」


「いや、お前がいてくれてよかったと思っただけだ」


「なんだいそれ、少し照れるね」


褒められているということは理解しているのか、はにかみながら紅茶を飲み干すとエドは息を一つついてみせる


「そろそろお暇するかな、紅茶美味かったぞ」


「そうかい?そりゃよかった、二人とも、お客さんのお帰りだよ」


そういって部屋の奥にいたアイナとレイシャを呼ぶと二人は小走りでこちらにやってくる


静希の方をまっすぐ見ながら、恐らくは顔を覚えているのだろう、目や鼻、髪型や肌の色などを一つ一つ確認しているようだった


そして二人同時に頭を下げるとまた部屋の奥へと戻っていった


「シズキはいつまでこっちに?」


「さぁな、数日って予定だけど・・・相手の都合次第だ、そっちは?」


「僕は明日にはもう仕事さ、今日時間が取れたのは本当に運が良かった、ゆっくり話もできたしね」


エドの言葉に静希はそうだなと僅かに笑みを浮かべてみせる


何も警戒しないで話すことができるというのはありがたい、テオドールと会って少しピリピリしていたが、十分和めた


「あの二人のこと、頑張れよ」


「あぁ、次会う時にはもっと成長させてみせるよ」


固く握手をして静希はエドの部屋から退出する


久しぶりに顔を見た友人が、また一つ困難に立ち向かおうとしているその様を見て、自分ももっと頑張るかと大きく伸びをしながら宛がわれたスイートに戻っていった





「あ、お帰り、誰もいなくてびっくりしたよ」


「すいません、ちょっと野暮用で」


シャワーを浴び終えた大野はこの部屋で待機していたらしい、苦笑いしながら冷蔵庫に入っていた水を口に含んでいた


ソファに深く腰掛けながら静希は大きく息を吐く


エドは自分と同じように、巻き込まれる形で悪魔と契約した


友を殺され、一時的には国から追われ、何を思ったのか、そこで何を感じたのか


その結果、エドは今過酷な道を行こうとしている、あえて流れに逆らうような道を進もうとしている


それに比べ、自分はどうだろうか


道の続くままに流されている、そんな気がした


学生だからこそ仕方がないのかもしれない、だがエドも言っていた


変わろうと思えばいつだって変われる


今静希がやりたいこと、やりたいと思えること


少なくとも将来への指針として何もないというわけではない、やりたいことが無いというわけではない


「俺の、やりたいこと・・・か・・・」


「さっきの話で少し考えちゃった?」


話をずっと聞いていた小岩は微笑みながら静希に視線を向ける


あえて傍観に徹し、静希とエドの交友を邪魔しないつもりでいたのだ


「まぁ・・・いろいろと・・・でも一つだけあります、やりたいことというか、やらなきゃいけないこと」


「それは、将来のために?」


小岩の言葉に静希は首を横に振る


将来のためというのは少し違う、もちろん将来的にやっておかなくてはならないことでもある


だがこれは個人的な問題でもあり、どちらかと言えば過去に関わることだ


「どっちかっていうと、清算しておかなきゃいけないことですね・・・きちんと借りは返さないと」


入浴のためにタオルや着替えを用意して浴室に向かう静希の瞳は、恐ろしいほどに鋭く、やる気に満ちているようだった


静希とエドが悪魔と契約するきっかけにもなった、召喚法を教えて回った人物、リチャード・ロウ


本名かどうかなどわかったものではないし、今のところ手がかりはこの名前だけだ


だがいつか、絶対に追い詰めて報いを受けさせる


自分だけの問題なら、面倒を押し付けただけ、それほどの怒りはない


しかし、もう自分だけの問題ではないのだ


自分以外にも、リチャードの策略によって巻き込まれた人間がいる


エドだけではなく、もしかしたら他にもいるのかもしれない


そう考えたら、このまま放置しておくには危険すぎる


やるべきこと、やりたいこと、リチャードを捕まえること


エドのように、未来を見ているようなものではない、静希はまず自分が負わされた負債を清算するところから始める


時間はかかるだろう、だが明確な意思により生まれた目的に、静希の頭はフル稼働していた


「五十嵐君、どうしたんだ?なんかずいぶん意気込んでるみたいだったけど」


「進路相談されてたのよ、お友達から」


進路相談と言われてもあまりいい思い出がないのか、大野は興味なさそうにふぅんと呟くだけだった


悪魔の契約者同士の対談


見方によっては、一部の人間は大騒ぎできるような内容だろう


だが彼らは友人で、ともに争う理由などない、ただ学生と社会人が話しているだけのそんな空気


大人として子供が目標を見つけるところを見るのはよいものかもしれないと思いながら小岩は微笑みながらソファに腰掛ける


教師になるのもよかったかもしれないなと、その道を選んだ先輩である城島のことを思い出しながら小さく息を吐いた


シャワーを浴びながら静希は自分にできることを一つずつ思い出していた

思い出せば思い出すほど、自分にできることがほんの少しであることを思い知る


誰かの力を借りなければまともに戦うこともできないのだから、厄介極まりない


だが幸か不幸か、静希は情報収集に置いて優位に立てるだけの人材がいる


そしてこれも偶然ではあるが自分は今イギリスにいる


頼むにはちょうどよく、できることもやれることもある


まずは状況を整理しておこう、そして体を休めておこう


『あの子たちどうなるのかしらね、楽しみだわ』


『あぁ、あいつが指導するんだ、きっといい能力者に育つ、時間はかかりそうだけどな』


アイナとレイシャ、エドが指導する二人の能力者


彼女たちがどのように成長し、どのような未来に生きるのか、静希には、いや誰にもわからない


だからこそ楽しみだった


誰も知らない未来に向けて育つ、いや友が育てる可能性の苗木


素直に、成功してほしいと、正しく育ってほしいと、そう願えた






翌日、ホテルのスイートでの朝を迎えて静希は若干不機嫌だった


なにせ起きると同時にテオドールが部屋に襲来したのだ


準備もまだしていないというのにせかしながら朝食をとる暇もなく身支度を整えさせられる


それは静希だけではなく大野と小岩も同様だった


まだ完全に覚醒していない頭を必死に動かしながら何とかして身支度を整えるとテオドールの車に乗り込んだ


「もっとさぁ・・・気の利いた起こしかたはなかったのか?」


「なんだ、耳元で鉛玉が飛び出る音でも聞きたかったか?スマートに起こしたつもりだったんだがな」


テオドールの来訪によって強制的に起こされたのはまだいい、その起こし方がもう少し平凡なものであればよかった


わざわざ音を発現できる能力者を連れて大音量での目覚まし時計、鼓膜が破れるかと思ったほどだ


「こちらの都合に合わせて行動してもらうのは当然、なにせ一国の姫君を待たせるわけにはいかないからな、あいつはお転婆だぞ」


「お前、わざわざこんな面倒をしてまであいつを俺に押し付ける意味あったのか?そこまで面倒かよ」


「面倒だな、少なくともお前とやり取りするよりずっと」


テオドールの言葉に静希はため息をつく


静希とテオドールがかかわりを持ってからまだ数か月、ほとんど連絡を取っていなかったことを考えれば頻繁に会うことになるだろうセラの方がよっぽど厄介なのだろう


ならば静希に押し付けてしまおう


わからなくもない理由だが、少なくとも巻き込まれる静希からしたらたまったものではない


「ところで、買い物って言ってたけど、一体何を買う予定なんだ?」


「さぁな、俺は知らん」


「役に立たねえな、普段荷物持ちとかやってるんだろ?」


「毎回買うものは違うし、何よりあいつの気分次第で何でも買う、あいつの行動を読めという方が無理だ」


子供には理屈が通用しないからなと言いながらテオドールは苦虫を噛み潰したような顔をしていた


恐らく一番の彼女の被害者はこのテオドールなのだろう


友人とはいえ一国の王子の娘、機嫌を損ねるわけにもいかないために我儘はできる限り聞いてあげていた結果がこのテオドールなのだ


なんというか、自分に対してあそこまで狡猾な行動をとれる人物がここまで情けない表情をすると少しだけ同情を禁じ得ない


「一応遠くから監視はつけておく、間違っても問題は起こすなよ?」


「はいはい、せいぜい不敬罪に適応されないよう注意するよ」


年下とはいえ王族、それなりの態度は必要だろう


重ね重ね英語という言語に敬語という概念がなくて良かったと思える


オルビアの簡易翻訳でも日本語で少し乱暴な言葉を使っても何の問題もないのだ


テオドールに送り届けられ、時刻を確認すると、現在イギリスの時間で朝八時半


丁度通勤や通学のための人が歩いている中、静希は待ち合わせとなる場所で呆然と立ち尽くしていた


「それじゃあ五十嵐君、僕らは少し離れた場所で待機してるよ」


「何かあったら連絡頂戴ね」


大野と小岩が二人で離れていく中、静希は建物に背を預けて道行く人や車、そして景色を眺め始めた


日本人というだけで目立つのだが、待ち時間というのも暇なものだ


携帯を使おうかとも思ったのだが、せっかくのイギリス、ただ携帯の画面を眺めているのもつまらないということで辺りを観察していた


すごく今さらかもしれないが、ただあたりにいる人々を見ているだけでここは自分の知っている土地ではないのだなと実感できる


通る人の背の高さ、肌や眼の色、建物や車、店の前の看板、何もかも自分の知っている日本の風景とはかけ離れている


慣れない景色と言ってしまえばそこまで、だがその中には確かな文化の片鱗が見て取れる


通りがかる人もやはり日本人、というか東洋人が珍しいのか、こちらの方をちらちらと横目で見ながら通り過ぎていく


注目を集めるというのはあまり好きではないが、異国の空気を味わうという意味では悪くないかもしれない


なまじイギリスという国にはあまりいい印象がないために、ここは少しでも楽しんでおくべきだろう


『マスター、明利様達へのお土産はいかがいたしましょうか?』


『ん・・・回る店を見ながら随時確認かな・・・もし紅茶とかお菓子とか売ってる店があれば買っていこう』


せっかくイギリスにきているのだ、本場の紅茶や茶菓子を買って帰りたいものだ


どのような方法で帰国することになるかはわからないが、その程度の重さならば問題なく持ち運べるだろう


紅茶を嗜むのは静希よりも明利、茶菓子を喜ぶのは明利よりも雪奈だ、二人のお土産としてはそれで十分かもしれない


となると自分は何を土産にしようかと迷ってしまう


そもそもイギリスの特産物がなにかも分かっていないのだ、もう少し下調べしておけばよかったと後悔しながら静希は人外たちと土産話談義をしながら時間を潰していた






「ミスターイガラシ、待ったかしら?」


それほど待っただろうか、九時に差し掛かろうという時に静希は声をかけられた


声をかけられた方を見ると、そこには先日会ったお姫様、セラが立っていた

小さなバッグに薄手のコート、そして茶色のブーツを履いて静希の方を向いていた


先日会った時とはまた別の印象を受ける、どちらかというとただの女の子という感じだ


「いや、さっき来たばっかだ、それで、今日はどこまでお供すればいいのかな?」


軽くふざけて会釈して見せると、セラは似合わないわよと言いながら笑っている


「ふふ、そうね、とりあえず季節ものの服を見たいわ、それに今度新しく出る化粧水、あとはアクセサリーも、他にもたっくさん!」


そういって歩き出すセラに追従して今日の予定を軽く頭の中で整理するのだが、なるほど、テオドールが押しつけたがるわけだ


女性の買い物は時間がかかる


これがただの女性であれば何でもないのだが、彼女は良くも悪くも一国の姫君


機嫌も損ねられないし放っておくことなどできるはずもない、護衛として近くにいるということは必然的に買い物にだって付き合わされる


面倒だ、今までの実習の中で一二を争うほどに面倒だ


「とりあえず、俺は土地勘ないからエスコートはできないからな、そこら辺は頼むぞ」


「わかってるわ、何ならいろいろ教えてあげる、せっかく来てくれたんだものね」


セラの笑顔にも、その言葉にも何の悪意はない、ただ純真に善意でそういっているのがわかる


子供というのはこういうものだ


外見は静希と同い年くらいに見えてもやはり幼いのだろう、東雲姉妹に比べれば大人びているが、それでも鏡花と比べると子供だ


比べる対象で明利と雪奈の二人を思いついたのだが、確実にこの二人は目の前のお姫様よりも子供だろう、片方は肉体的に、片方は精神的に


「買い物の前に少しお店に入りましょ、実は行きたいところがあって朝抜いてきたのよ」


「そりゃ丁度いい、どっかのバカのせいで朝飯抜きだったからな」


「あ、それってテオドールのこと?」


「あぁ、最悪の目覚ましを用意してくれてな、せっかくのスイートが台無しだったよ」


そりゃ災難ねとセラは笑っている、どんな起こされ方をしたのか想像しているようだったが、少なくとも静希が与えられた聴覚的苦痛はイメージできていないことは理解できる


理解できないほうが幸せだろうと思える中で、静希とセラは談笑しながら彼女の行きたい店というところに向かった


そこは喫茶店だった


以前静希が海外交流で行ったことのある店とはまた別の種類の店なのだろうか、中には何人かの客がいて、ほとんどがスーツを着ていた


ここはどちらかというと食事をとる場所に近いのだろう、メニューもケーキなどよりもサンドイッチなどの軽食メニューに偏っている気がする


「ここの紅茶とパイが美味しいって友達が言ってたのよ、一度来てみたかったんだけど、パイは朝限定らしいの、イガラシが来てくれて本当に助かったわ」


「俺はパイのために呼ばれたのか・・・なんか複雑な気分だよ」


少しだけ呆れながらも、ここまで無邪気に喜んでいるさまを見てしまうとさすがにこれ以上は悪態をつく気になれなかった


店の人を呼んで二人で同じものを注文したあと、静希がなんとなくメニューを見ていると、セラが自分の方をじっと見ていることに気づいた


「どうした?」


「あ・・・ううん、その・・・聞いちゃいけないことなのかもだけど、イガラシって能力者よね?」


「そうだけど?」


そもそも能力者であるからこんなところにやってきているという前提の話を考えると、少しだけ不思議な質問に静希は首をかしげてしまう


「あの、今私とイガラシは別の言語を使ってるのに、理解できてるってことは・・・能力を使ってるってことなの?」


「ん・・・まぁそういう事だな、詳しくは教えられないけど・・・探りを入れろとでも言われたか?」


視線をメニューからセラに移すと、その視線の鋭さをものともせずにセラは少し悩んだような声を出していた


「ううん、そういうのじゃないんだけど、テオドールに勝ったって聞いてたからもっとすごい能力かと思ったんだけどね、案外普通だなって」


「普通って・・・普通な能力なんてあるかよ、能力は全部特殊なものばっかりだ、それに俺があいつに勝てたのだってそこまで大したことじゃないぞ?」


テオドールはあまり強い能力は保持していないタイプの、どちらかといえば静希と同種の能力者だ


だからこそ動きが少し読めたし、一緒に人外たちがいたからこそ勝てた

静希の実力で勝ったわけではないのだ


「そうかしら?今まであいつ結構たくさん能力者と戦ってるのよ?それであいつに勝つんだもん、それなりに強いんでしょ?」


「・・・強いかどうかと言われると返答に困るな、自分じゃよくわからないからな」


少なくとも静希の自己評価では自分は弱い部類に入ると確信を持って言える

だが今ここでそれを言うわけにはいかない


注文した紅茶とパイがやってくるのを確認して静希はとりあえず紅茶を口に含んで見せる


「やっぱり大人なのかしら?質問のかわし方がテオドールに似てるわ」


「年齢なんて少ししか違わないだろ・・・ていうかあいつに似てるって言われるのだけは嫌だな・・・訂正しろ」


静希の返答が予想外だったのかセラは謝罪しながら笑い、テーブルにあるパイを口の中に運びさらに笑みを作った


土曜日ということで二回分、誤字報告が五件たまってプラス1、お気に入り登録件数が1900件突破してプラス一で合計四回分投稿


長い、地味に長いです


これからもお楽しみいただければ幸いです

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