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J/53  作者: 池金啓太
二話「任務と村とスペードのクイーン」

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説明

「関係者から多少の噂程度は漏れるかもしれないが、その程度なら許容範囲だ、班員にも二年にもいい含めておいたが、厳重に注意しろ」


「はい、承知しました」


これからの生活さえも左右しかねない状況にさすがに気持ちが重くなる、なぜこんなことになったのか、静希にさえ分からない


静希に抱きついて離れないこの悪魔ならその理由を知っているだろうが、素直に吐くとは思えない


「メフィストフェレス、お前も五十嵐を独り占めしたいのなら、私達の学園内で姿を現すのは禁止だ、いいな」


「んーシズキ以外のいうことを聞くのはしゃくだけど、一人占めしたいし、しょうがないから従ってあげる」


上手い、こういえばメフィは従わざるを得ない、だが静希からしたらいい迷惑である


できるのなら今すぐにいなくなって欲しいが、殺されるよりはましだ


「お前はこれからどうする?村の見回りに移るのか?」


「いえ、東雲に今の状況を詳しく説明しないと、まだちゃんと説明していませんでしたから」


ちゃんと話すと言っておいて後回しにしてしまっているのだ、きちんと一から説明しなければ


「本当のことを話すのか?」


「まさか、ちゃんと任務中に『偶然』保護したことにして話しますよ」


「ならいい、私は報告書を書いている、何か用があれば呼べ」


メフィにまたトランプの中に入ってもらい、お互いに部屋を出て途中で分かれる


東雲のいた部屋は誰もおらず、恐らく風呂に入っている最中なのだと理解できた


静希は自分の荷物を整理しながらため息をつく


スペードのQ、そして1、2、3番


今回戦闘において酸素水素、しかも切り札の硫化水素まで使ってしまった、この埋め合わせは容易ではない


『なに?会いたいなら今すぐにでもあってあげるわよ?』


「お前トランプの中にいても意思疎通できるのかよ・・・」


眺めていたスペードのQから聞こえてきた声にもはや嫌気がさしながらため息をつく


これから付き合っていくことになるかもしれないのだ、いちいち反応していたら身がもたない


『いったでしょ?人間の能力くらいで本当に私を拘束はできない、ないようなものよ、私がここに入っているのが心地いいから入ってるだけ、で?なんでカードを見つめてたの?お姉さんが恋しくなっちゃった?』


「違うよ、切札を使っちゃったから、また作らないと、と思ってな」


水素や酸素の準備はそれほど大変ではない、純水を買ってそれを電気分解すれば済む話だが、硫化水素は違う、器具を清潔に保ち不純物を取り除き、材料を入手するところから始めなければならない


途方もない上に、最初から使うつもりのなかった物を使ってしまったために入手のルートも確立できていない


収納系統の最も頭の痛い部分は入手するための金銭やルートなのだ


先立つものがあったとしても手に入らなければ意味がない


特にこの手の薬物は精製も許可がなければできない


その許可も必要だ、書類申請に今回の使用理由、悪魔に使ったなんて言えないからでっち上げなくては

やることが多すぎて頭が痛くなってくる


「あ、静希君、おかえり」


「おぉ明利、おかえり」


お互いにおかえりなどという不可思議なことになってはいるが、とりあえず明利は浴衣姿の東雲を背負ってやってきた


二人とも湯上りで肌が赤く染まっており、ほかほかと湯気が上がっている


もっとも東雲の顔にはしっかりと仮面が付けられていて表情はつかめないが


「さっぱりしたか?」


「はい、とても」


布団に横になり、大きく深呼吸している


のぼせたわけではないようだが、さすがにまだ体力や栄養が足りていないのだろう、ゆっくりと息をついて呼吸を落ちつけようとしていた


「そのままでいいなら、今まであったことをわかる限り説明するが、どうする?」


「・・・はい、お願いします」


待っていたのか、それとも聞かされたくなかったのか、微妙な間の後に東雲は静希に顔を向ける


「まず、俺達は喜吉学園の生徒だ、この村には校外実習でやってきた、内容は村の作物を荒らす動物の駆除、その過程でお前に会った」


「会ったのは・・・いつごろですか?」


「・・・今日だ、その動物を追い詰めてるときにふらふらしてるお前が茂みから現れて目標に襲われそうになってな、それで保護した、目標を退治した後、村に運んで、それで今に至る、何か思い出したか?」


「いえ・・・なにも・・・」


思い出すはずがない、半分ほどは先ほど先生とでっち上げた嘘なのだから


「お前がエルフの村からいなくなったのは、今から十一日前、ちょうどお前の記憶もそこで途切れている、そして意識朦朧としながらここまでたどり着いたんだろう」


意識朦朧として山二つも越えられるはずがない、朦朧とした状態が十日も続くはずがない、我ながら無茶苦茶な嘘だなと思いながらも説明を続ける


「あの、私の村の人は・・・なにか・・・」


「そこまでは分からない、だけど捜索として俺達の学園のエルフのいる班にお前の捜索を依頼したらしい、先生の話だと今日の遅くか、明日にはこの村にたどり着くだろうって」


「そうですか」


自分を探しに来てくれる人がいるということを知って安堵したのか大きく息を吐いてよかったと呟く


やはりこの辺りは十歳の女の子だ


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