陽太VS鏡花
ようやく初戦闘が始まりそうな・・・主人公ほとんど何もしてないけど
というわけでお楽しみいただければ幸いです
「というわけで、クールダウンさせられなかったよ」
「こっちもだ、火に油だった」
昼食を終え、クラス全員が演習場に出て能力の発動訓練をしている中、静希と明利は壁に寄りかかりながら演習場を眺めていた
土や砂、森、コンクリから岩場までありとあらゆる地形をブロックによって分け、どのような状況下でも能力を使えるようになるために喜吉学園の演習場は校舎よりも広く設計されている、静希たちはその中でも一般開放されているコンクリートブロックにいた
周囲のクラスメートは自分の能力を審査員に見せしっかり発動している様を良く見せていた
演習は基本教員と審査員、監査員がそろって行う、万が一の事故がないように十分注意して行われる
審査員は生徒の技術評価、監査員は生徒が危険に及ばないように注視する人員でどちらも教師と同じ教職員だが教師よりもさらに上の部類になる、それだけ実力を持った人しかなれないのだ
「にしても、宝の持ち腐れか、清水もいうねえ」
大体の会話内容を伝えてもらった静希は苦笑せざるを得なかった
まさかそんな理由で陽太に食ってかかっているとは思わなかったのだ、もっと抽象的なものだったり、ただの見下しだったりと単純な理由かと思っていただけに意外だった
「でもね、清水さんの言ってることも正しいと思うんだ」
「どういうこと?」
「陽太君は本気で静希君みたいに努力しようと思えばできたよ、でもしなかった、清水さんはそこを怒ってるんだと思う」
「ふむむ、陽太がいらつく理由がちょっとだけわかった気がするわ」
「?」
理論めいた清水の怒りと違い、陽太の感じた相性が合わないは感情的で理屈がない
「清水昼飯何食ってた?」
「え?定食だけど」
「今日は魚だっけか、綺麗に食べてた?」
「うん、すごくきれいに食べてた、身の欠片もなかったよ」
「あー、相性が合わないわけだ」
「?」
静希がなにを言っているのか分からないのか明利は首をかしげている
静希も明利の話をきちんと聞かないと理解できなかっただろう
「清水はきっといい先生になるな」
「???」
さらに意味がわからなかったのか明利は疑問符をいくつも空中に散布していた
能力発動の演習が一通り終わった後、その場で解散となったクラスメートに別れを告げ静希は担任教師城島に演習場の使用許可を求めた
「あん?なんだ急に、使用申請は前日までにいっておいてほしいんだがな」
「先生、学校始まったの今日からですよ」
「それもそうか、まいいぞ、監督役は?」
「俺と明・・・幹原が」
「うむ・・・まあ幹原ならいいだろう」
生徒の詳細の書かれた書類を見て何度か頷いて使用許可証を渡す
恐らく明利の成績や授業態度などが勤勉かつ粛々としたものだったからだろう、言葉に出さずに明利にお礼を言った
「書類用意しておくから後で書きに来い、明日他の組が複数戦の演習であそこ使うんだからあまり壊すなよ」
「あざーっす」
いい加減な教師はこういう局面では非常にありがたい存在である
授業が終わって体操服のままその場に残っている中、監督役を果たす二人は演習場においてある腕章を取り付ける
「えー、では響陽太vs清水鏡花の親善試合を始めます、互いに所属、能力名を述べ礼」
監督役が必要なのはこれがれっきとした試合だからである
能力者同士の喧嘩は最悪死人が出る
だがこれが試合である以上死者が出ないように止められる役が必要であり、監督役は死人が出ないよう止める義務がある
逆にいえば監督役がいなければ試合などの戦闘行為はしてはいけないのだ
本来は監督役も教員が行うべきなのだが、いい加減な教師を持つとこういうところで不正ができる、楽なものだ
「響陽太、所属喜吉学園一年B組、能力名『藍炎鬼炎』よろしくお願いします」
「清水鏡花、所属喜吉学園一年B組、能力名『万華鏡』よろしくお願いします」
能力名とは文字通り個人が所有する能力の名前である
命名師につけられるのが主だが、中には自分で考えている者もいる
市役所に申請して申請が通れば晴れてその名前が自分の能力の名前となる
基本的に小学校で名前をつけてもらう機会があるので大体の人間はその時つけてしまう
こうして名乗り口上をあげるのも重要なことなのだ、後腐れないように
「今謝るなら許してやらないこともないぞ天才さんよ」
「謝る?事実を言っただけなのに何を謝ることがあるの?」
だめだ、せっかく陽太の方から手を差し伸べても片方はすでに臨戦態勢、もはや口頭での解決策は期待しない方がいいだろう
「では両者禍根など無いように、始め!」
怒号とともに動いたのは陽太だった
能力名、藍炎鬼炎、陽太の持つ発現系の能力
自らの周囲に炎を発生させ纏うことで自身の身体能力を強化、炎を纏ったその姿は鬼のような二本の角を持つ獣のように見えるその様から鬼炎
「行くぞコラァ!」
周囲に顕現した炎を纏い、その姿はまさしく鬼、口から息のように炎を噴き出し太く長い腕、巨躯を震わせ足場を確かめるように脚部を地面にたたきつける