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J/53  作者: 池金啓太
十六話「示した道と差し出された手」

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思わぬ再会

悩んでいると静希はふとあることに気づく


夜景を望むことができる窓に何かが張り付いている、いや何かが映っているのだ


それは紙のようだった


一体なんだろうかと近づいてみると静希はそれを理解した


紙に書かれた英語、静希でもわかるような簡単な英語


そこには『505号室に来い』とだけ書かれていた


静希が窓際によって数十秒すると、窓に映されていた紙の映像は消えてしまった


それを確認して静希は軽く笑ってしまう


静希はこの現象を知っている


「どうしたの?」


静希が笑っているのを見て小岩が不思議そうにしているが、何でもありませんと言って静希は部屋を出ようとする


「どこに行くの?外に行くなら私も行くわ」


「あー・・・そうですね、それじゃお願いします」


大野に書置きを残して静希と小岩は五階の505号室に移動した


面倒な工程をするあたり、何か用事があるのだろう、それにこんなところでまた彼と会うことになるとは思っていなかっただけに少しだけ嬉しかった


インターフォンを鳴らし、鍵が開いたのを確認して中に入ると、中には誰もいないように見えた


だが次の瞬間、部屋の死角にあたる部分から小さな影が静希に向けて襲い掛かった


拳を構えて静希の顔へ向けて攻撃を仕掛けようとしているのがわかるが、その小さな影の攻撃は奇襲にしてもずいぶんと遅かった


見てから反応したわけではないが、ほぼ反射で動いた手で軽く払いながら腕を掴んで組み伏せるともう一つの影が静希に向けて襲い掛かる


今度は小岩がその影に立ち向かい腕を押えて拘束した


「な・・・何この子・・・」


「少し乱暴な歓迎だな?これに何か意味があるのかエド」


静希がそういうと部屋の奥から拍手をしながら、悪魔の契約者であり静希の友人、エドモンド・パークスが現れた


笑みを浮かべながらごめんごめんと静希に向けて謝罪をしながら近づいてくる


「いや、その子たちの実力を確かめたかったんだけどね・・・離してあげてくれるかい?」


静希が自分の下で抑えられている子どもを確認すると、どうやらその子は随分と幼く線が細い、そして褐色の肌に黒い髪を持っていた


小岩が取り押さえているのも同様の身体的特徴をしており、どちらも女の子のようだった


少なくとも日本人ではなさそうだと感じながら静希も小岩もその二人の子供を離すと、軽く体を払いながら二人はエドの元へと駆け寄る


「ごめんなさいボス、やられちゃった」


「ボス・・・だめだった、手も足も出なかった」


「ははは、シズキ達相手じゃ仕方ないさ、向こうで休んでいなさい」


エドがそういうと二人の子供は元気よく返事をした後部屋の奥に小走りで走って行った


その場に残ったエドは部屋の中心に歩いて椅子を静希に勧めると部屋にあったポットで紅茶を淹れ始めた


「そういえばヴァラファールは?いるんだろ?」


「あぁ、僕の中にいるよ、でもさすがに出せないよ、このホテルはいろいろと目があるからね」


目がある、エドの言葉になるほどねと静希はつぶやく


どうやらエドはここをよく利用しているらしい、いろんなところに盗聴器や隠しカメラなどがあるということを知っているようだった


改めてメフィ達を出さないで正解だったと思い知ることになる


「で?何でこんなところに?あの子たちは一体なんだ?何で俺がこのホテルのスイートにいるって知ってる?何で俺を呼んだ?」


「まぁ待ってくれ、そんなにいきなり質問されても困るよ、まずはさっきの非礼をわびるよ、すまなかったね」


何故だろう、唐突に暴行をされたという意味ではテオドールの行動もエドの行動も同じであるはずなのに、エドが普通に謝罪をするとなぜか許せてしまう


恐らくは裏表のない、そしてエドという人物が信頼に足る人間だということを静希がわかっているからだろうか


静希と小岩に紅茶を出しながらエドは何から応えようかと考え始めているようだった


「そうだな・・・えっと、まずシズキがここにいると知った理由から話そうか・・・端的に言えば、彼女たちの訓練の一環だったんだよ」


「訓練?」


てっきり仕事でこの辺りにきて偶然見つけたとかそういう話だと思っていただけに静希は少し首をかしげてしまった


そもそも彼女たちがどんな存在かもわかっていないのだ、疑問符は止まらない


「あの子たちはアイナとレイシャ、ある国で保護した子たちでね、一応能力者なんだけど・・・その・・・奴隷同然に扱われていてね、見るに見かねて僕が引き取ったんだ」


「引き取ったって・・・」


国によっては能力者が迫害されているようなところだってあるだろう、それが大人であれば何の問題もなく対応できるかもしれないが、親に捨てられたり親を亡くした孤児などはそうはいかない


日本でも能力者だからという理由で親に捨てられる子はいるくらいだ、諸外国ではその傾向は顕著に表れるだろう


「そして一般教養や職業訓練を日々叩き込んでいる、これからあの子たちがどこに行っても問題ないように、その訓練の一環で君が今どこにいるのかをちょっと調べさせたら・・・」


「・・・イギリスにきていることがわかったと」


そういう事だよと言いながら紅茶を飲んで見せるが、エドはさりげなくものすごいことをさせている


特定の人物が海外などに行く場合、必ずと言っていいほど記録は残る、恐らくはその記録をたどったのだろうが、普通の子供がやるようなことではない


そんなことを子供にさせるあたり、ぶっ飛んだ発想だが、恐らくエドなりにあの子たちを思ってのことかもしれない


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