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J/53  作者: 池金啓太
十六話「示した道と差し出された手」

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見た目の問題

「でもとてもいいことだと思うのよ、私は学生とはいえ一国の姫、そして貴方は日本の優秀な能力者、互いに未来ある立場だもの、関わりをもって損はないと思うわ」


「・・・なんか考え方がもう政治家のそれに近い気がするよ・・・本当に学生かよ・・・」


未来ある立場などと言う言葉は静希は日本では一度たりとも聞いたことが無い


というかそんなことを言う人間が自分の周りにいないのだ、それはそれで当たり前かもしれないが


「失礼ね、私はまだ十一よ?あんな老けたおじさんたちみたいじゃないんだから」


「・・・ん・・・?」


セラの言葉に静希は一瞬耳を疑う


今なんといっただろうか


「え?じゅうい・・・え?・・・十一ぃ!?」


あまりの驚きに目を見開いて声まで上げてしまった


目の前にいる自分と同い年くらいだと思っていた金髪の女の子を前に静希は開いた口がふさがらなかった


「え?十一・・・ってことは小学生!?それで!?大人びすぎてんだろ!」


「え・・・?そ、そうかしら?」


セラは大人びていると言われてうれしいのか少し照れてしまっているが、対面にいるアランとテオドールはわずかに笑みを浮かべていた


「ははは、日本人に比べると確かに大人びて見えるかもね、でもそこまで驚くとは・・・」


「し、失礼・・・でもマジかぁ・・・十一って・・・マジかぁ・・・」


あまりの衝撃に静希だけではなく大野と小岩も驚きを隠せないようだった


この二人もセラのことを静希と同い年くらいに思っていたのだろう、外国の白人というのは恐ろしい外見をしている


こんなので十一とは恐れ入るなと思った瞬間、静希は携帯を取り出して撮影した写真を画面に映すと三人に見せる


「ちなみに、こいつはいくつくらいに見える?」


画面に映されているのは静希の幼馴染でもあり恋人の明利だ、微笑みを浮かべながらカメラの方を向いている


「おや、ずいぶんと可愛らしい子だね・・・そうだな・・・八・・・いや十歳くらいかな?」


「うわぁ、可愛い・・・私と同い年じゃないわよね?七歳くらいかしら?」


この言葉、明利に聞かせたらきっと泣いてしまうだろうか、自分の幼馴染を憐れみながら、事情を知っているテオドールと大野小岩両名が笑っているのをよそに静希は苦笑してしまう


「えっと、こいつ十六歳、俺と同い年」


「「・・・えぇ!?」」


驚きと共にもう一度写真に写っている明利を凝視するが、その事実を受け止められないようで目をぱちくりさせていた


「うそでしょ・・・日本人ってこんなに童顔なの・・・?」


「これは・・・いやさすがに冗談では・・・?」


静希がほかの写真を見せると、そこには静希達一班が全員映っている写真が映し出される


静希、陽太、鏡花、そして明利が一緒に写っているのを見てようやく同い年であると理解したのか二人は驚きを隠そうともせずに感嘆の息を吐いていた


「・・・テオ、この子に会ったことは?」


「あぁあるぞ、最初何で子供がいるのかと思ってしまったがな」


明利に会ったことがあるテオドールは軽く笑っているが、確かに明利の外見的幼さは犯罪の匂いがするほどだ


このまま大人になったらたぶん居酒屋など酒を飲む店に行くたびに年齢確認が必要になること間違いなしである


「すごいわ、本当に日本ってクレイジーなのね、こんな子が私より年上だなんて・・・」


「・・・前にもそんなこと言われたけど、俺らは至って普通だぞ?確かに明利は成長が止まってからもう何年も経ってるけど・・・」


日本人みんなクレイジーなどと言われても静希達にだって反論の余地はあると信じたい


だが周りの意見を言わせれば、静希達も十分に狂っているかもしれない


それが敵なら容赦しない、どんな手段でも講じる静希


基本物事を考えない、自分の身の安全も考えないバカの陽太


説教なのか悪口なのかわかったものではない毒舌っぷりを発揮する班唯一の常識人(?)鏡花


静希がいなくなると途端に情緒不安定になってしまうことが判明した合法ロリ担当明利


なるほど、そう考えると日本人はある種おかしいのかもしれないと思いつつ、自分たちが特殊なだけだと信じたい静希であった


「これはますます明日が楽しみになってきたわ、面白い話たくさん聞けそうね」


「・・・そんな大した話はしてやれないぞ?まぁ俺もついでに土産でも探すか」


せっかく買い物に行くということが決定しているのだ、日本に残してきた友人たちに土産の一つでも買ってやらなくては面目次第もない


来たくて来たわけではないが、せっかくの機会だ、せいぜい利用させてもらうことにしよう


「今日はこれからテオと会食なのだろう?テオ、せっかくだ我々も同席したいのだが、構わないか?」


「・・・それは構わんが・・・まさかお前たちの分まで払えとは言わんよな・・・?」


「えー!?テオドール!イガラシに迷惑かけたんでしょ!私たちにも奢りなさいよ!」


「・・・俺関係なくね?」


感情論と暴論で成り立っているセラの言葉は何の説得力もないが、どうやら一緒に食事することになったアランとセラの分まで奢らなくてはならなくなったようでテオドールはひどく落ち込んでいた


心の底からざまあみろと言えたのはこれが初めてかもしれない、そう思いながら静希はほくそ笑んでいた








「それじゃあ、明日はこのホテルまで迎えに来てあげるわ、楽しみにしてる」


テオドールのおごりで高級レストランのフルコースをごちそうになり、ホテルまで送り届けられた静希達に別れを告げ、セラはテオドールの運転する車で颯爽と去って行った


食事風景を見ていて思ったが、流石は上流階級の人間だ、上品というか、格が違うというか、そういうところを見せ付けられた数時間だった


「いやぁ・・・疲れたね」


「全くです・・・もっと楽に食べられる食事の方が良かったかな・・・」


「せっかくごちそうになったんだからそういう事言わないの、ほら部屋に戻りましょ」


男性陣からすれば少量しか出てこない料理というのは肌に合わず、もっとがっつりと食べられる料理の方が良かったのか、静希と大野からしたら多少の不満が残っているようだった


小岩に引き連れられ最上階のスイートまで戻ってくると、大きく息を吐きながら静希はソファに体をうずめる


英語に敬語という概念がないために言葉遣いを気にする必要はないのが不幸中の幸いだが、それでも目の前にいたのが王族だったかと思うと緊張を強いられるのは当然である


いきなり呼び出されて王族と会って会話するなんてただの高校生の静希には荷が勝ちすぎている問題だ


『お疲れ様、さすがに疲れたかしら?』


意識を朦朧とさせているとトランプの中にいるメフィから声がかかる


瞼を閉じているためにその声が嫌に鮮明に聞こえた


『さすがにな、ちゃんとテーブルマナーとか練習しておくべきだったよ』


『ふふ・・・今度キョーカにでも教わりなさい』


静希にとって疲れたのは会話もそうだが食事もだ


どうにも高級料理店になるといちいちマナーに気を配らなくてはいけないのがつらい


無論高級と謳うだけあってそれなり以上に美味だったが、その分体力とは別なところが消耗したのは言うまでもない、そしてそれは大野と小岩も同じようだった


『せっかく豪勢な場所なのに外に出られないのが残念ね・・・』


『テオドールの息のかかっていない場所であれば出してもよかったかもしれないけどな・・・残念ながらここは危険すぎる』


相手が自分の手の内を知りたがっているのに、用意したこの部屋に何もしていないとは考えにくい、極力相手に自分の手の内を明かさないようにするのも必要なことだ


時刻は二十時を回った、すでに日は落ち、完全に夜の時間になっている


「五十嵐君、先に風呂頂くよ」


「どうぞ、俺はもう少し休んでます」


ソファに横たわったまま大野に向けて手を振ってこたえると、彼は部屋に備えられている浴室に向かっていった


普段なら夕食を済ませて雪奈とオルビアを連れて屋上で剣術の訓練をしている時間だろうか、僅かに窓の外に目を向けながら静希は軽くまどろみ、大きく欠伸をする


仮眠したとはいえさすがにまだ時差に慣れていないようだ、今日を過ぎてしまえばあとは楽になるとは思うが、体が思うようについていかないことも考慮しておくべきだろう


明日は一日中動くことになることを覚悟しておいた方がいい


外傷は癒せても、静希の左腕は体力までは回復させてくれない


しっかりと休んでおく必要がある


「そういえば五十嵐君、明日のことなんだけど、私たちはどれくらいの距離にいるべきかしら・・・?」


「あー・・・そうか、あまり近すぎるとセラが嫌がるかもしれませんね・・・そうだな・・・」


小岩の言葉に静希はいまさらながら今回の面倒な追加項目に辟易する


今回の静希の行動を実習風に表すなら、セラの護衛、護衛対象の要求にはできる限り応えること、という感じだろうか


セラが護衛らしい護衛が嫌だというのであれば、大野と小岩は離れていた方がいいかもしれない


「同じ店内で買い物を楽しみながらこちらの動向に気を付けてくれればそれで構いません、もしはぐれた場合は連絡してくれれば場所を教えますから」


「ん・・・案外難しいこと言うわね・・・わかった、頑張ってみる」


静希のような学生よりも多くの経験をこなしている大野と小岩ならこのくらいならできるだろうと信じての発言だったが、どうやら多少面倒そうだが問題なさそうだった


後はお姫様がどのような行動に出るかにかかっている


「武装はどうする?さすがに普通の買い物ならそこまでひどいことにはならないと思うけど・・・」


「そうですね・・・んん・・・拳銃の携帯もまずそうだし・・・武装してないと護衛の意味ないし・・・」


相手がただの金持であればこんなことは気にしないでもよかったのだろうが、相手は幼いとはいえ一国の姫君


専門の護衛を引き連れていない状態で海外の軍人を銃を持たせた状態で近くに配置するというのは非常によろしくない構図だ


最悪国際問題になりかねない


とはいえなんの武装もしていないのでは護衛として意味がない


大野も小岩も能力者ではあるが、海外での無許可での能力使用は発砲と同じくらいの問題行動だ


前回の悪魔への対応のように緊急性が高く、静希の能力使用がほぼ許可されているような状況ならまだしも、今回はメインが対談という内容なのだ、物騒な問題を持ち込めるような事態ではないために扱いに困ってしまう


本当にテオドールはとんでもない面倒事を持ち込んでくれたものだ


誤字報告が五件溜まったので二回分投稿


これからもお楽しみいただければ幸いです

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