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J/53  作者: 池金啓太
十六話「示した道と差し出された手」

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条件と電話

「・・・条件をいくつかつけさせてもらうぞ」


『あぁ、もちろん構わない、こちらはお願いする立場だ、なんでも言ってくれ』


誘拐しようとしておいて何をぬけぬけと、と静希は悪態をつくが、今はそんなことをしている場合でもない


今日から数日、少なくとも日本を離れることになるかもしれないんだ、ならばそれなりの準備は必要である


「まず護衛を二人ほどつけさせてもらう、通訳は必要ないが案内と宿泊施設などの手配はそっちでやれ、経費も全部そっち持ちだ、全部最高級で頼むぞ」


『おいおい、俺たちを破産させるつもりか?この前のスシじゃ足りなかったか?』


「なんだ?もっと奢らせてほしいならそう言えよ、大食らいを連れて行ってやるぞ?」


静希の返しにテオドールは勘弁してくれとため息をつく


どうやら以前高級寿司を奢らされたのが地味に効いているらしい、クレジットまで使っての大量注文だったためにそれなりに打撃は大きかったようだ


「どうせお前のことだ、航空機や移動方法とかも全部用意してあるんだろ?」


『察しが早くて助かる、お前の準備さえよければすぐにでもこちらに飛んで来れるぞ、最も空は飛ばないがな』


「・・・ひょっとして能力者運行か?あれあまり好きじゃないんだけどな・・・」


以前イギリスに行った時も転移能力者の力を利用しての移動だった


最も早く移動できる手段とはいえ、今回の件がそんなに急ぐべき案件かどうかと聞かれると首をかしげてしまう


電話をしながら城島に向けて護衛を二名ほど連れて行きたいという旨のメールをすると二つ返事で了承の返事が返ってくる


城島としては今回のことはどう判断していいか迷っているようで、以前静希の護衛をしてくれた大野と小岩を連れていくことを約束してくれた


『ほかに何か要望はあるか?可能な限り善処するが?』


「俺だけじゃなく俺の護衛も最高級のおもてなしで頼むぞ、報酬もきっちりもらう・・・後はそうだな、俺たちに一切危害を加えなければそれでいい」


『・・・お前は本当に俺の財布に攻撃するのが好きなんだな・・・』


どうやら今回の出費に関してはテオドールの管理下にあるらしくかなり嫌そうな声を出していた


少しだけやり返せたかなと笑いながら静希は通話を切る


やることが増えてしまった、今日はのんびりしようと思っていたのに面倒にもほどがある


まさか学校帰りにちょっとコンビニ行ってくる的なノリでイギリスに行く羽目になるとは思わなかった


とりあえず明利に連絡してこれから数日間空ける分、ノートなどをとっておいてくれるように頼まなければ


数回のコール音の後に電話の向こう側から明利の声が聞こえると静希はとりあえず少しだけ安堵した


先程までの殺伐とした会話とは違う、落ち着いた空気が流れるのを感じる


「もしもし、悪いんだが、これからイギリスに行かなきゃならなくなってな・・・あぁ・・・それで数日空けるからその分のノートをとっておいてほしいんだ・・・あぁ雪姉にはこれから連絡する・・・あぁ・・・わかった、じゃあな」


とりあえず明利に軽く事情を説明した後に雪奈にも電話をかける


同じような反応をされたがもう慣れたものだ、駄々をこねられたので土産を買ってくると言ったところ仕方ないなと言いながら了承してくれた


こういう時にすぐに連絡できる人というのは楽である


そして静希はもう一つ連絡しなくてはならないところ、というか人がいる


今回護衛を務めてもらう大野と小岩だ


平日ということもあって勤務中だろうが、恐らくそろそろ護衛の話が回ってくるだろう


デスクワークだとよいのだが、そう思いながら以前交換した携帯の番号にかけると、数回のコールの後に聞きなれた大野の声がする


『もしもし五十嵐君かい?どうしたんだ?』


「どうも、実はこれからイギリスに行く羽目になったんですけど、大野さんと小岩さんに護衛をお願いしたくて」


静希の言葉に大野はえぇ!?と驚きの声を上げている


どうやらまだ護衛の話は回ってきていないようだ


町崎の部下とはいえ、さすがに城島から直接話を送るわけにもいかなかったのだろう、恐らくは委員会を経由して町崎と連絡をつけている分遅れているのかもしれない


『一応確認しておきたいんだけど・・・また・・・その、面倒な輩との戦闘とかあるのか?』


「いえ、今回はどちらかというと人と会うだけで、待遇はよいものだと思いますからちょっとした休暇気分で行けると思いますよ・・・たぶん」


『・・・君が多分っていうとすごく怖いんだけど・・・え・・・?あ、はい、今話してます・・・五十嵐君、ちょっとごめん』


どうやら電話の向こう側で大野は誰かに話しかけられたようでいったん受話器から離れたようだった


何やら話しているのは聞こえるのだが、何を話しているのかまでは理解できない


少々驚きながら、そして渋々ながら何度かうなずく大野の姿が想像できるようだった


そして電話の向こう側からさらに女の人の声がする、恐らく小岩だろう


となると、近くで大野と話しているのは町崎かもしれない


『あー、もしもし、ごめんね、今正式に依頼が届いたらしくて・・・っていうか君一体何したんだい?何でこんなことに君が呼ばれるのかさっぱりなんだけど・・・』


「えっと・・・まぁ電話で話すことでもないんで今度話しますよ、簡単に言えば体よく外交のカードに使われてるってところですね、甚だ遺憾ですけど」


僅かに怒気を含めてそうつぶやくと大野は苦笑しながら準備があるからと言ってとりあえず通話を切った


突然のことで申し訳なく思いながら、とりあえず静希は気絶した二人をどうにかするために道の端にある車のそばに外にいる男を引きずっておいた


外にいた男に打ち付けた釘を引き抜いて回収した後簡単な応急処置をしてとりあえず二人を起こすことにする


完全に筋肉が弛緩している状態なのでどうやって起こすかと言われればある程度の刺激を与えるしかない


ガムテープで拘束してから何度か顔を叩いて起こすと、呻きながら男は意識を取り戻した


だが催涙ガスにスタンロッド、その二つの攻撃を受けたせいで男の意識はかなり朦朧としている


軽い呼吸困難も起こっていた可能性があるため、下手したら死んでいたかもしれない


「聞こえているか?聞こえたら返事をしろ」


携帯の録音機能を起動して録音を始めると同時に男へ語り掛ける


すると男は朦朧とした意識の中静希の方に顔を向けた


「あ・・・あぁ・・・聞こえている・・・お前は・・・」


朦朧としている意識の中で目の前にいる人間を認識しようと必死に瞼を動かしていると、ようやくそれが静希であると気づけたのだろう


体を跳ね上げさせながら何とか静希から離れようとする男に、静希はわずかにため息をついた


「お・・・俺たちをどうするつもりだ・・・?!」


どうやら自分が拘束されていることにも気づけたようで、男は恨めしそうに静希をにらんでいる


拘束された自分がどうなるか、すでに想像がついているのか、その額からは冷や汗がにじんでいた


「待て待て、もう話は済んだ、一応確認だが、お前は誰からのどんな命令を受けていた?確認させてくれ、もうお前の携帯を使って上司との話は済んでいる、お前に危害を加えるつもりはない」


男の持っていた携帯をこれ見よがしにかざすと、男は不振がりながら、そして歯ぎしりをしながら静希をにらむのをやめない


「確認したのなら俺に聞く必要はないだろう、俺から話すことは何も」


ないと言いかけた瞬間、静希は男の髪を掴む


髪の毛が引き抜けるのではないかと思えるほどに強く、乱暴に


「勘違いしているようだから言っておく、お前はただ答えればいいだけだ、お前の認識や意識は関係ない、ただ聞かれたことに対してバカみたいに答えていればいい、もう一度聞くぞ?お前は誰からどんな命令を受けていた?」


飛び切りの邪笑を浮かべながらそういうと、男は冷や汗を吹きだしながら息を荒くし口を開く


「て、テオドールという人からの命令だ・・・お前を・・・シズキ・イガラシを力づくでもイギリスに連れて来いと・・・」


テオドールの証言と少し食い違った発言に静希は一瞬表情を曇らせ、そしてすぐに笑顔になる


「・・・そうかそうか、ありがとう、テオドールとの話し合いはすでに済んだ、お前たちの要望通りオレはイギリスに行くことになる、だがこちらにも準備がある、それが済むまで少し待っていてくれるか?」


静希は笑みを崩さず、男の髪を離して男たちの拘束を解く


すでにこの男たちに用はない


拘束する意味も、そしてこのまま関わる意味もない


だがかなり有益なことを言ってくれた


この怒りはそのままテオドールにぶつけることにしようと固く誓いながら静希は邪笑を続ける


「車の片づけなどはお前たちでやっておけ・・・ちなみに空港に行った後の手筈はどうなっているんだ?」


「あ・・・の、能力者を使ってイギリスまで行くことになっている・・・」


「予約してるのか、人数は?」


「三人分だ・・・」


あぁ丁度いいなと呟きながら静希は男に詰め寄る


手のひらを男に突き出すと、男はその意味が分からずにその手と静希を見比べていた


「予約していたならチケットがあるだろう?あらかじめ渡しておいてくれ、その三人分全部な、俺と、俺の護衛二人でそのチケットを使わせてもらう」


「な、それじゃ俺たちが」


「安心しろ、旅費に関しては全部お前たちの上司が払ってくれる約束だ、お前たちの分もちゃんと出るだろうさ」


チケットをそのまま譲渡できないことはわかっている、空港まで行って手続きが必要だろうからそこまではこの男たちも一緒に行かなくてはならない


だがまずは自分の準備が優先だ


携帯を取り出して城島に電話をかけると数回コールが鳴った後にすぐに城島が出てくれる


恐らくは待っていたのだろう、対応が早くて助かる


『五十嵐か、首尾はどうだ?』


「面倒なことになりましたね、とりあえずイギリスに行きます、それでこれから約二名、喜吉学園に向かわせます、俺を誘拐しようとした奴らです」


静希の言葉に城島はふむと呟くが、その後少しだけため息をついていた


『何かさせるのか?』


「こいつらの持ってるチケットそのまま使うんでまだいてもらわなきゃ困るんですよ、準備ができるまでの間学園で待っていてもらおうかと」


『・・・なるほど、では大野小岩両名も喜吉学園に派遣させるか?』


「いえ、お二人は空港に先に行っててもらえれば問題ないです、準備が終わり次第その二人を引き取りに行きますんで」


城島に伝え終え、了解したという返事をもらうと静希は通話を切りため息を一つついて男たちを軽く見る


こんな面倒に巻き込んでくれてテオドールの奴をどうしてくれようか


今静希の頭の中にあるのはそればかりだった


万が一を考慮して予約投稿、日曜日なので二回分


大雪で足止めを喰らうことを予想しての予約投稿です、反応が遅れてしまうのはご容赦ください


これからもお楽しみいただければ幸いです

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