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J/53  作者: 池金啓太
十六話「示した道と差し出された手」

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静希の災難

時間は少し遡り、明利と鏡花が喫茶店に向かっている最中、さっさと家に帰るべく通学路を歩いている静希


明利が鏡花と一緒に行ってしまったために今日の予定は特になし、いつものようにトランプの中身を整理しながら新しい攻撃法でも模索しようか、そんなことを考えていた矢先だった


静希の横に黒塗りの車が急停車し、中から一人の男が静希を中に引きずり込んだのだ


何が起こったのかを理解するより早く静希は体を拘束されてしまう


関節を決められ、その体をガムテープで縛られ、車は急発進した


「目標確保、写真とも一致している・・・こいつを連れて行けばいいんだな?」


「あぁ、後は空港まで急ぐぞ」


日本語ではない言語で話しているのを即座にオルビアの簡易通訳で理解すると静希は即座に頭をフル回転しだした


どうやら自分は誘拐されそうらしい


平和な日常から一転、何が何やらわからないがとりあえず状況整理することにした


犯人は二人


運転席に一人、そして後部座席に一人


能力の有無は不明、だがガムテープなどという不完全な拘束方法をとったことから少なくとも変換、および発現系統ではないと思われる


目的不明、黒いスーツにサングラスをつけているために詳細まではわからないが、その肌の色と鼻の高さから白人であることがうかがえる


言語は英語、英語圏で白人というだけではいったいどこの回し者であるかは特定できないがとりあえず目の前のこの二人が静希を敵に回したのは確実である


『ったく・・・いきなりなんだよこれ、どうなってんの?』


『恐らくマスターをかどわかそうとしているのだと思われます』


『問題はそこじゃないわね・・・いったいどこの誰なんだか・・・今度こそお仕置きが必要かな?』


『何より先にこの拘束状態から抜け出すのが先決だ、シズキ手を貸すか?』


人外会議を開きながらもこれからどうするかを検討する中で、静希は邪薙に必要ないと返答したうえでため息をつく


拘束されているのは両腕と両足、そして口だ


呼吸だけはできるように鼻はガムテープの外になっているが、はっきり言って不愉快極まりない


一体どこに連れていく気なのかは知らないが、少なくとも懸賞旅行が当たったとかそんな優雅な旅になるわけがないのはわかりきっていた


静希は意識を集中し、釘の入ったトランプを車外に飛翔させ、前のタイヤに狙いを定め、射出する


僅かな衝撃が走ると同時に車の動きが急に不安定になる


一体何が起こったのか、それを確認しようと犯人二人が視線を逸らした瞬間に静希は動いた


ヌァダの片腕に取り付けられた仕込みナイフを突出させ、腕を拘束しているガムテープの一部を即座に切断、腕が少し動くようになったところでトランプの中からナイフを取り出して残ったガムテープを除去する


その際に少し右腕が斬れたが、霊装としてのヌァダの片腕の能力が発動し即座に傷がふさがっていく


二人がこちらの動きに気づいていない隙をついて二人の真横に催涙ガスの入ったトランプを飛翔させ同時に噴射させる


サングラスがあろうとなかろうと意味がないと言わんばかりに直接目と鼻に吹き付けられた催涙ガスに、男たちは声を上げて自らに襲い掛かる異変を把握しようとするが、目と鼻が潰され、有効な判断材料はもはや耳から聞こえる音のみ


前にいた男はとにかく車から出ようと、後部座席にいた静希のすぐ近くにいた男は静希の体を掴もうと腕を上下左右に動かしている


だがもうすでにそこに静希はいない


後部座席からすでに助手席に移動した静希は悶えながら腕を空振りさせている男の首筋めがけてスタンロッドを叩き付け電流を流して強制的に意識を喪失させる


そして外に出た男の足に釘を刺し、それ以上動けなくしたうえでスタンロッドで気絶させた


「あーあ・・・なんだよこいつら・・・」


住宅街のど真ん中で緊急停車した車、そして目と鼻を真っ赤にして気絶した外人二名


一体何をどうしたらこんな状況になるのか、静希もさっぱりだった


とりあえずこの気絶している二人の身元を調べようと物色していると、パスポートと携帯電話が見つかった


電話には何件かの通話記録があり、その中にどういう因果か静希の知る人物の名前が記載されている


その名前を見た瞬間に静希は強い苛立ちと不快感を覚えた


「・・・ほっほぉ・・・そうかそうか、あいつは本当に滅ぼされるのがお好みなのか・・・こりゃ本当にメフィに力を借りる必要があるかもな・・・」


『・・・しょうがないわよね、一度ならず二度までも私の愛しいシズキに牙をむいたんじゃ、私も本気にならざるを得ないわ』


『・・・とりあえず電話してみてはいかがでしょう?』


殺意の波動に目覚めそうな二人を差し置いてオルビアが冷静な言葉を浴びせると、それに従って静希は男の携帯からその人物へと電話をかける


どうやら日本からでも通じるタイプの高性能な携帯らしく、何度かのコール音の後に聞き覚えのある声が英語で聞こえてくる


その場にいないとオルビアの簡易通訳ができないのが微妙につらいところだが、相手が相手なために問題がないのがありがたい


「やぁテオドール、久しぶりだな、元気してたか?」


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