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J/53  作者: 池金啓太
二話「任務と村とスペードのクイーン」

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密談

「結局、村長たちには何と?」


「清水から聞いていただろう、獣を退治した、その時に襲われていたあの少女を『偶然』保護した、村長もそういうことにしてくれている、夫人もな」


「先日の俺達の会話を聞いたうえで、ですか?」


「その通りだよ、五十嵐君」


待っていたのは村長だった


上座に座り、腕を組んで朗らかに笑っている


「でもいいんですか?あの子が・・・」


「確かにあの子が村の野菜を食い散らかしたのは事実、だが聞けば彼女も巻き込まれただけだと言うじゃないか、彼女に悪意があったのならば話は別だが、妻の話を聞く限り、あの子はいい子のようだ、なら私達は、君達の報告を信じることにしよう、村のみんなも君達がそういえば納得するだろう」


人間ができている


こういう人をそういう風に表現するのだろう


普通実害を与えた人間に対してこういう対応はできるものではない


「子供が間違いを犯したなら叱ってやるのが大人、そして子供が何かに巻き込まれたなら助けてやるのが大人というものだ、それに先生がエルフの方から十分賠償をもらってくれるというしな」


子供と大人ではなく、大人と大人の話にしようとそういうことだ


大人とはこういうものかと静希は実感する


「村長、二人で内密に話をしたいのですが、どこか部屋を一つお貸しいただけませんか?」


「なら、離れにもう一部屋客室があります、どうぞご自由に使ってください、家内に案内させましょう」


「ありがとうございます、行くぞ五十嵐」


「はい、ありがとうございます」


深々と頭を下げると、村長夫人が先導して案内してくれる


「こちらになります、どうぞごゆっくり」


「ありがとうございます」


二人で頭を下げ、中に入る


内装は純和風、畳に襖、静希達が通された部屋より一回り小さい


「五十嵐、メフィストフェレスを出せ、まだ聞きたいことが山ほどある」


「わかってます、だすぞメフィ」


スペードのQの中身を出すと悪魔メフィストフェレスが空中に現れる


「なによもう、そっちの都合で出したり入れたり、ま、私は嬉しいけどね」


「さっきはしょうがないだろ、あの子が起きそうだったんだから」


軽口を言いあう程の仲になりつつある二人を眺めながら城島は大きくため息をつく


「それで、メフィストフェレス、お前は本当に五十嵐と一緒にいるつもりか?」


教育者としてはそこが気になるのか、だがメフィの言葉は変わらない


「そうよ?何か文句あるの?」


「いまのところないが・・・先刻五十嵐とかわした対等契約とはなんだ?」


「私がシズキのお願いを聞く代わりに、シズキは私のお願いを聞くの、それだけよ」


「魂のやり取りなどはないんだな?」


「シズキの魂は確かに綺麗だけど、シズキはまだ子供よ、もっともっと綺麗になるわ、それまでお預け」


「おい、それいつかは俺の魂持ってくつもりかよ」


まさに悪魔だ、悪魔の取引だ、実はとんでもないことをしてしまったのではないかと静希は今更ながらに戦慄する


「まったく、やっかいな状況にしてくれた」


「俺が好んでやった訳じゃないんですけど」


メフィに抱きつかれながらも静希は眉間にしわを寄せる


死ななかったのはありがたいし、全員で生還できたのも喜ばしいことだ、東雲も救いだせたし村の問題も解決、万々歳だ、だけどこれだけがいただけない


「悪魔を使役する、いや明確には契約したというべきか、どちらにしろ今までうちの学園から悪魔と接触した奴すら記録にないのに・・・」


なんという不運だろうか、それは生徒である静希だけではなく、教師として引率している城島にとっても当てはまる


初めての実戦で悪魔と遭遇なんてあり得ないと城島は頭を抱えていた


「そもそも、俺達は悪魔の存在どころか精霊の存在だってよく知らないんですよ、無茶苦茶すごいくらいにしか」


「精霊や悪魔に対する知識は三年で習う教科だ、二年だって知らないし、知ることはまずない、エルフ以外はな」


習うはずがない、知るはずがない、関わるはずがないことを、静希達はあろうことか体験し、さらにあり得ないことに戦闘まで行った


ここから先、これ以上の奇怪なことなど望めない程に奇怪な現象に行き遭ってしまった


これを不運というのか幸運と呼ぶのかは意見が分かれるだろう


「どちらにせよ、学園ではそいつを絶対に外に出すな、この班員以外に口外もするな、このことが知られればお前は大変なことになるぞ」


「大変なことって・・・」


「少なくともこれからはいる依頼が悪魔一色になる可能性だってある」


「うわぁ」


心境としてもうわぁな状況


想像もしたくない、メフィのような連中がまだ山ほどいてそんな連中を相手にするなんてまっぴらごめんだった


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