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J/53  作者: 池金啓太
十五話「未来へ続く現在に圧し掛かる過去の想い」

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悪魔の見惚れた男

「待ってるのは男、貴方なんかよりずっといい男なの」


「へぇ、そりゃ対抗意識燃やしちゃうなぁ、君ここの生徒なの?」


軽薄な口調で自分に話しかけてくる男に対し若干苛立ちながら、それでも能力を使うことはしない


ここで自分が問題を起こせばすべて静希に責任が向くのだ


自分が勝手に飛び出しておいて今さらと言えるかもしれないが、メフィだって越えてはいけない一線があるということくらい理解している


「私は違うわ、私が待ってるのがここの生徒なの、ちょっとはぐれちゃったけど、きっと見つけてくれるわ」


それは一種の信頼だ


静希なら自分を見つけてくれる


仮に誰かに協力を要請しても、自分を一番最初に見つけるのは静希だ


確信にも近い信頼を見て男は軽く笑いながらメフィの方を見る


「へぇ、こんないい女を待たせるなんてなぁ、そんなやつより俺とどっか行こうよ、絶対そいつより楽しませるって」


やたらと食い下がってくる男にメフィはわずかに呆れを覚える


こんな何でもない男に、もはや苛立ちも怒りも湧いてこなかった


完全な無関心状態になってメフィはわずかに笑う、目の前の男の滑稽さに


「楽しませる・・・ねぇ・・・少なくとも最近で私を楽しませられたのはあの子だけよ、私を楽しませるってすっごく難しいの」


「俄然やる気が出てくるなぁ、でも自信はあるよ、絶対俺の方が君を楽しませてみせる」


自信過剰すぎて笑えてくる


メフィの印象はそれに尽きる


ここで試すとなるとまた腹部に穴をあけなければいけないが、そんなことはできないために愛想笑いで返すしかない


「ごめんね、私はあの子一筋なの、一緒に暮らしてそれなりに長いけど、あの子以外は考えられないのよね」


「・・・へぇ一緒に住んでんだ・・・あの子って言ってるけど、年下?」


そうよと返すと、男は若干声のトーンを落としているようだった


目の前のメフィの外見から年齢を推察してそれより年下ということで、若干不快になったのだろう


自分は年下よりも劣っていると言われているのだから


もっとも、メフィからしたら全人類が年下になってしまうということは一部の人間しか知らないことである


「普段は普通の男の子なんだけどね、時折見せる笑顔がステキなの、あの時のあの子は本当に、何をしてくれるかわからないから大好き」


時折見せる笑顔


静希の笑顔というと印象的なのは相手を追い詰めるときに見せるあの邪笑だ


メフィはあの顔が大好きだった


自分と対峙した時にも見せたあの表情、思い出しただけでも心が震える


「笑顔だったら俺だって結構いけてるぜ?いいから行こうよ、ほら」


強引にメフィの手を掴もうとする刹那、その手を軽く払いのけてメフィは男をにらむ


「私に触っていいのは私が決めた相手だけよ、気安く触らないでくれる?」


先程までの穏やかな口調から一転、声音を低くした拒絶の言葉に、男はわずかにたじろいだ


「さっきから欲情しっぱなしの視線向けてるけどね、貴方になんて興味はないの、私を抱いていいのはあの子だけなの、私の体も心も、全部あの子の物なんだから、そんな粗末なものを私に向けないでくれる?」


そして、静希の体も心も自分のものである


対等であるが故に、自分は相手の、相手は自分の物なのだ


完全に自分に興味がないと言われ、男としてのプライドを刺激され、黙っていられるほどこの男は冷静ではなかった


「この・・・下手に出てれば調子に乗りやがって・・・!」


「あら?怒っちゃった?本当のこと言われて怒っちゃうなんて器が小さいわね・・・程度が知れるわ」


メフィの嘲笑に耐えられなかったのか、怒りをあらわにしながらメフィに掴みかかる瞬間、その体が宙に浮いた


だが、浮いたのは男の体ではない、男の眼前にいた、座っていたはずのメフィの体だった


その首を掴む左腕、荒くついた息、殺意のこもった眼光


「・・・あ・・・あら、は、早かったのね・・・シズキ・・・」


「あぁ・・・誰かさんが勝手にいなくなったせいで学校中走り回ったよ・・・会いたかったぜメフィ・・・」


一瞬だけ透過して逃げようかとも思ったのだが、メフィの首を掴んでいるのは静希の左腕、つまり静希の能力によって万接の効果を得た霊装の義手、いくらメフィと言えど逃れられない


「お、おい!いきなりなんだお前!今俺がこの子と話して」


「あぁん?」


立ち上がり、文句を言おうとした男に対して静希はメフィに向けていた怒気と殺気を向ける


男は一瞬だが、静希の目を見た


瞳孔が開き、何をするかもわからない、殺意のこもった危険な目


本能的に、男は静希に恐怖した、自分より年下と思われる少年がこんな目をする、そしてその制服から目の前の少年が能力者であることも理解し、僅かに後ずさった


「ふふ・・・やっぱり大した器じゃなかったわね・・・試すまでもなかったかな?」


「どうでもいいからさっさと行くぞ、こちとら何人も待たせてるんだ・・・あぁそれと」


メフィを掴んでその場を去る前に静希は先程までこちらに敵意を向けていた男の方を見る


「すいませんが、こいつは俺のなんで、ナンパなら他を当たってください」


「あぁん強引なんだから・・・ねぇ・・・たまには二人きりになれるところに行きましょ?」


「いいから黙って来い!」


メフィの言いぐさなどもはや完全に無視して静希は片手でメフィを引きずっていく


その場に残された男は唖然としてその様子を眺めていた


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