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J/53  作者: 池金啓太
十五話「未来へ続く現在に圧し掛かる過去の想い」

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遭遇、神格と幼女

「うっへぇ・・・きっつぅ・・・」


そんな異常事態が起こっていることは全く知らない静希の姉貴分雪奈は、手伝っている店の混雑が一時的に止まったことで体を休めていた


雪奈たちが担当していたのは本格的な食事ができる店で、昼はとうに過ぎているというのにこの時間になるまで人が入り続けていたのだ


喫茶店感覚で入る人もいれば、遅めの昼食をとるためにやってくる人もいる

そんな客たちがようやくはけてきた頃に雪奈は疲れた体を休めようと全身の力を抜いていたのだ


「おい深山、あんまり変な体勢をするな、髪の毛が落ちるぞ」


「あー・・・わかってるわかってる・・・飲食店はこういうのが面倒だよねぇ」


自分の髪が落ちないように帽子のようなものをかぶった状態で作業しているためにどうしても頭が蒸れる、ただでさえ火を扱う厨房だというのにこんなことをしなくてはいけないあたり裏方はつらい


「ていうかさ、やっぱ紅葉が接客して私が裏方って納得いかないんだけど」


そう、雪奈の班の女子は二人、雪奈と井谷紅葉の二人


なのだが雪奈は裏で食材の切り分け、紅葉は表で接客と少し変わった仕事の割り振りをしていた


「そうだな、お前が客にちょっかい出される度に敵対行動をとらないというのであればそれもありだったんだがな」


「触られたならその手を切り落とすくらいのことは必要でしょ!痴漢は犯罪!」


「人を斬るのも犯罪だバカが」


雪奈にペットボトルの水を渡しながら呆れている熊田は料理を作り続けている


食材を切るのは雪奈が、ほかの男子はとにかく料理を作り続けているのだ


レシピ通りに作ればいいとはいえ、素人に任せるわけにもいかず、それなりに料理のできる人間だけが厨房に入っている


他の男子は客寄せやテーブルなどの片づけ、皿洗いなどに従事している


そんな中、表と廊下を眺めていた雪奈はあるものを見て口に含んでいた水を吹きだす


「・・・汚いぞ・・・」


その水をもろにかぶってしまった熊田は青筋を浮かべながら自らに水を飛ばしてきた雪奈をにらんでいる


「あ・・・ああああああれ!あれ!あれ!」


雪奈が首を掴んで自分が見た光景を見せると熊田も噴き出して驚愕する


その視線の先には幼女を腕に乗せてこの子の母君はいませんかと言い続けている神格邪薙がいた


普段は静希のトランプの中にいて外に出ることはないはずの人外がいったいなぜこんなところに、しかも何をやっているのか


それを確認するや否や雪奈と熊田は飛び出して邪薙の元へと全力疾走する


「わわわわんちゃん神様!?なにやってんのこんなところで!?」


「ん?おぉユキナか、丁度いいところに、実はこの子の母君を探していてな、手伝って」


「正気か!?五十嵐は何をやっている!?お前を外に出すなど異常事態にもほどがあるぞ!」


自分が外に出ているその危険性を理解しているとは思えないほどに平和な任務をこなしている邪薙に対して雪奈と熊田は非常にあせっている


なにせ静希が今まで隠しに隠してきた神格がのうのうと外を闊歩しているのだ、これが普通であるはずがない


「おじちゃん、このおねえさんたち知ってる人?」


「あぁそうとも、世話になっている者の姉君と、その同輩の者だ」


幼女と何ら危機感無く話している邪薙に雪奈と熊田は呆れ果てながら頭を抱えてしまう


「と、とりあえずさ、何でこんなところに?ていうかなんで外に出てるのさ」


「うむ、それが実はメフィストフェレスの奴がいなくなってな」


「何だと!?」


更なる衝撃に普段冷静であるはずの熊田でさえも穏やかな精神を保てなかったのだろう、つい声を大きくしてしまう


無理もない、以前自分たちと対峙した悪魔がいなくなったと聞けばこの学校自体の危機だ


「奴自身面倒を起こす気などはないだろうが・・・シズキが探しに行ってな、その時にこの子に遭遇してこうして母君探しをしているのだ」


邪薙の説明に雪奈と熊田は大体の事情を察したのだろう


雪奈は静希の苦労を心配し、そして熊田はどうしてそんなことになったのかと嘆いていた


「と、とりあえず警備本部の方に連絡して放送してもらおう、ここに来てもらえるように伝えればきっと母親も来てくれる」


「おぉ、それはありがたい、是非頼む」


「ねえ、君の名前を教えてくれるかな?」


雪奈が微笑みながらあかねに対してそう聞くと、あかねは笑いながら自分の名を告げる


それを聞いていた熊田は携帯で警備本部にいる友人にかけているのだろう、要件を告げると数十秒後に富田あかねの母親に対してのメッセージが流れ始める


「よかったな、これで母君と会えるぞ」


「うん!ありがとおじちゃん、お姉ちゃんとお兄ちゃんも」


満面の笑みで邪薙の顔に抱き着きながら喜びを表しているあかね、その様子に一瞬顔が綻ぶのだが、今のこの状態でいいはずがない


とりあえず雪奈は静希に対して『邪薙が私の働いている店の前にいる』という内容のメールを送ることにした


回収するにしろ場所がわからなければ面倒になるのは確実である


幼女と戯れる神格


こんな絵面が見れるのはもう二度とないかもしれないと思いながら、ついでに写真を撮ってそれも添付しておくことにした


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