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J/53  作者: 池金啓太
十五話「未来へ続く現在に圧し掛かる過去の想い」

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特殊な被写体

そんなことが起こっているなど全く知らないこの事件の首謀者メフィは、悠々とこの一般公開の中を歩き回っていた


普段歩くなどと言うことをしないためにこの行動だけでずいぶんと新鮮に感じる


特に彼女の格好のせいもあるのだが、やたらと人の視線を感じるのだ


この誰かに見られている感覚がたまらないといった風にメフィは悠々と廊下を歩いて何があるのか、何をやっているのかを一つ一つ確認するように観察していた


彼女が静希の元から離れた理由、簡単に言えばただ見てみたかったからである


知識欲というのは若干正しくない、静希が歩いたところだけを見るのではなく、自分の赴くままに動き回りたかったというのが一番の理由だった


これでもし仮装などがなかったのなら、メフィも静希に迷惑をかけることはしたくないために諦めただろう


そういう意味では静希は運がなかったというほかない、何の因果か、今日この日に能力の体験を行っているのがかなり高いレベルで仮装変装のできる能力者だったのだから


「あ、あのおねーさん、写真いいっすか?」


店を見て歩いている中話しかけてきたのは中高生だろうか、静希より少し幼さ残る男子学生のグループだった


私服ではあるものの、どうやら能力者ではない近隣の学校の生徒なのだろうか、学校の地図とパンフレット、そしてカバンを持っている


メフィの姿にか、それとも容姿に惹かれたのか、若干どもりながらもカメラをもって頬を赤らめながらこちらを見ている


「あら、私なんかが被写体でいいの?ほかに撮るべきものたくさんあると思うけど?」


「い、いえ、是非お願いします!」


初々しい反応になぜ静希はこういう反応をしてくれないのだろうかと若干不思議に思いながら彼らの願いどおりに写真を何枚か撮影させ、最後に全員での集合写真を撮った後で男子学生たちは去っていく


静希もあれくらい初々しい反応をしてくれたらからかい甲斐もあるのだがと少し残念に思いながらメフィは再び店という店を閲覧しに歩みを進め始める

メフィの恰好は仮装というには少し刺激的である


少ない布地の服に、豊満すぎる肉体、青少年などには直視するのに憚られるような姿かたちをしているのだ


この後もメフィは時折参加者から写真撮影を求められ、数多くの人間に記録を残されることとなる


しかも撮影を求めてくるのは男性ばかり


連れの女性から侮蔑の目を向けられながらも写真を撮ろうとする者までいる始末


もう少し考えてから行動すればいいのにとメフィでさえも呆れてしまう


もっとも写真撮影されているのはメフィだけではなく、仮装をしている人全員の様子だった


周りに多くいる角を生やしたり半獣の姿をしたり、ファンタジーな衣装に身を包んだりと、その種類は千差万別、メフィが外に出ていても何の違和感がないのもうなずける光景だった


そして写真を求められるのは、小さな迷子あかねを連れた邪薙も同様である


「おじちゃん人気者だね」


「はっはっは、この顔からにじみ出る気品に惹かれるのかもしれないな」


この子の母君はいませんかと声を出しながら、あかねを自分の腕に乗せ校舎内を闊歩する身長二メートル越えの犬顔の男


日常でこんな人物を見たら一発で通報だったのだが、幸か不幸か今は仮装をしている人物が大勢おり、邪薙もその中に溶け込んでいた


見たことのない和服、そして犬顔、巨漢、そして幼女


訳の分からない組み合わせに興味を引いたのか何人もの人が写真を撮らせてほしいとカメラや携帯をもってやってきているのだ


好奇の目に晒されるのは邪薙としてはそこまで嬉しい状況ではないものの、先程まで泣いていた少女が笑顔になっていくのを見れば気を良くするというものである


自分の腕に乗っている少女も最初は写真を撮られるというのに慣れていなかったようだが、周りの人に囲まれながらもその感情が悪意ではないことを悟ったのか、楽しそうにブイサインをするまでになっていた


本当なら肩車でもしてあげられれば良かったのだが、如何せん邪薙の背は高すぎる


二メートル越えの身長の上にさらに誰かが乗ると確実に天井に頭をぶつけてしまうのだ


それゆえ、腕を胸の前に出してその上にあかねを乗せて歩いている


しきりにあかねがその顔をなでまわしたり引っ張ったりしているが、そこは長生きな神格、子供のやんちゃくらいは流してやるだけの度量があるようだった


「それにしても母君は見つからんな・・・はぐれた時にどこを探すなど、何か言っていなかったのか?」


「ううん何も・・・」


「そうか・・・では今日どこに行ったかなどはわかるか?もしかしたらそっちの方を探しているのかもしれん」


何の情報もなくただ歩くよりもそのほうが効率的と判断したのか、あかねにそう問いかけるが、当の本人もはぐれたことで頭がいっぱいだったのかあまり覚えていないようだった


「あ、あのね、ご飯を食べにね、お店がたくさん並んでるところに行ったよ」


「ふむ・・・店か・・・ならば移動するとしよう」


「しよう!」


邪薙の言葉を反復するように楽しそうに叫びながら腕を振り回すあかねに邪薙は軽く笑いながら再びこの子の母君はいませんかという言葉を出しながら歩き始めた


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