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J/53  作者: 池金啓太
二話「任務と村とスペードのクイーン」

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隠すということ

「メフィ、入っててくれ」


「はいはい、またね」


メフィをスペードのQの中に入れ、少女の様子を見ると、どうやら目を覚ましたようだ


仮面の奥の瞳がゆっくり開く


「・・・ここは・・・」


どうやら暴走もないようだ、か細く、高い声が小さく聞こえてくる


「牧崎村だ、君は何らかの原因で暴走してこの村にたどり着いた、何か覚えているか?」


「うぅ・・・覚えて・・・ない・・・」


衰弱が進んでいるのか、荒く息をついている


この状態では鮮明な説明は難しそうだ


「待ってろ、今人を呼んで」


「待って・・・」


立ちあがろうとしたのを呼びとめられ、静希はまた枕元に座る


「私の顔を・・・見た・・・?」


やはりエルフはそこが大事なのか、恐らく見られたら何らかの罰があるはずだ


被害者であり加害者の少女にこれ以上の重しは与えたくない


「いや、君はずっとその仮面をつけていたから見ていない、見た方がよかったか?」


「・・・いいえ、あと」


「ん?」


「あなたは?」


「五十嵐静希だ、待ってろ、今食事を用意してもらう」


少女を部屋において大広間に向かうと全員でワイワイと食事をしている最中だった


「明利、あの子が目を覚ました、あの状態でも食べられる食事って何がいいと思う?」


「あ、えと、おかゆとかおじやくらいなら大丈夫だと思う、水もちゃんと飲ませてあげれば」


「わかった、すいません奥さん、台所お借りします」


「あらあら、作りますよ、ちょっと待ってて下さいね」


食事中だったが村長夫人は台所に立ちすぐに手慣れた手つきで料理を作り始める


「すいません、ご迷惑を」


「いえいえ、それよりあの子についていてあげてください、一人で不安でしょうから、食事は後で持っていきます」


「・・・ありがとうございます」


部屋に戻る途中、鏡花の下によって小声で話しかける


「結局どういう風に説明したんだ?」


「先生との協議の結果、エルフのなんらかの不手際は隠して、獣を排除した時にあの子を一緒に保護したということにしたわ、エルフの方には後々賠償を取らせるみたい」


「それで納得するとは思えないけど・・・」


昨日の会議の際、村長と夫人は自分達の会話を聞いている、それでも納得したというのだろうか


つまり真実を知るのは村長夫妻のみ、村人は獣を討伐したのだと虚偽を知らされることになる


「俺はあの子についてる、鏡花は食事が終わったら陽太や雪姉と一緒に村に行って壊れたフェンスの修復と強化を頼むよ」


「なによ、残業させるつもり?」


「アフターサービスってやつだよ、頼むな」


「おいおい、君も一緒に食べないか?おいしいぞ?」


「いくつか頂いていきます、あの子についていないと、明利、お前も一緒にいてくれると助かる」


「うん、わかった」


その場から明利を連れ出して一緒に少女の待つ部屋へと戻ってくる


少女は苦しみながらも身体を起こそうとしていた


「ダメだよ、無理しちゃ」


「・・・あなた・・・は」


「幹原明利、あなたは身体を動かせる状態じゃないの、安静にしていて」


「うぅ・・・」


さすがに自分の体がここまで痛めつけられているとは思わなかったのか苦悶の表情を浮かべながらまた横たわる


「そういえば君の名前、聞いていなかったな、教えてくれ」


本当は資料ですでに知っているが、一応知らない振りを通さなくては、彼女は獣退治の際に保護したただの少女ということになっているようだし


「東雲、東雲風香です」


「そうか、繰り返しになるけど、何も覚えていないんだな?」


「はい、何でここにいるのか、どれくらい経ってるのか、ぜんぜん・・・」


「そうか・・・」


覚えていなくて好都合、というのは簡単だが、この少女からすれば突如目の前に現れた男に女、訳の分らぬ状況に違いはない


静希たち以上に混乱しているはずだ


その時、襖がゆっくりと開いて村長夫人がお盆に小さな土鍋と水の入ったコップを持ってやってきた


「遅くなってごめんなさい、はい、おじやよ」


蓋を開けると、あの野菜をふんだんに使った味噌汁を使ったのだろう、具だくさんのおじやが用意された


「あなたも災難だったわね、獣に追われていただなんて」


「獣・・・?」


少女が何かを覚えていようといまいと夫妻はその真実を通す気でいるようだ


それは優しさか、それとも憐みなのか、判断はできないが東雲に記憶のない今は都合がよかった


「ええ、何日も逃げていたんでしょうね、そこをこの人たちが助けてくれたのよ?」


奥さんの言葉に少女は仮面越しにでもわかるほどに目を丸くした


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