表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
J/53  作者: 池金啓太
十五話「未来へ続く現在に圧し掛かる過去の想い」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

554/1032

それぞれの見たいもの

「しかも見ろよ、基本的に能力の使用を禁止だぜ?有事の際にどうやって動けってんだよ」


「臨機応変にでしょ?まぁたくさん人が来るからむやみに能力を使っちゃいけないっていうのはわかるけどね」


陽太の言う通り、プリントには注意書きで能力の使用を禁止されてしまっている


無能力者が大量に参加する中で、能力使用が許可されているのは能力体験コーナーを任された一部の生徒や教師だけである


それ以外はすべて当日配られる警棒程度の武装で何とかしろというのが現状だ


無論静希達だって最低限の対人格闘訓練は授業でも行っている


だがそれは本当に最低限のものだ、護身術になる程度の物であって戦闘をこなせるようなものではない


静希や明利、陽太は昔から実月や雪奈がいたために対人格闘は平均以上のものを持っている、だが実際に使用することはほとんどない


陽太は前衛という役職上よく使うが、静希と明利は徒手空拳は苦手で、軽く攻撃を受け流す程度のことしかできない


授業以外の訓練などしていない鏡花に至っては受け流すことができるかも怪しい腕前である


「相手が無能力者なら大抵は何とかなるんじゃないか?普通の学校じゃ対人格闘なんて教わらないんだろ?」


「えっと、柔道か剣道はやると思うけど・・・他は跳び箱とかマット運動とか球技だね」


能力者と無能力者では最初から教えられる内容がまったく異なる


無能力者はあらゆる方面での活躍を期待して、球技と名の付くものはほとんど行い、同時に器械運動や陸上競技、水泳などほぼ全面的に体を動かす科目を取り入れている


それに対して能力者はそんなものはほとんどどころかまったくない


唯一水泳に対しては横の動きだけでなく、潜った状態でも自由に動けるような立体泳法を身に着けるまでが最低条件となっている


そしてそれ以外はほとんどが訓練だ


能力を使った訓練では実戦形式から能力の単発使用やその展開速度など


体を使った訓練は先にあげた対人格闘から体力強化や筋力強化と言った基礎まで徹底的に行う


基本的に行うことは平滑化されているため、同じ量を行えば自然と個々の才能の差に応じて優劣が分かれてくる


いくらこなしても体力がつきにくい人物もいれば、少しこなすだけで筋骨隆々となるものもいる


無能力者にとって授業などで行う運動は、将来必要になる運動性能と、新たな才能の発見などに費やされる


能力者にとって、そのほとんどが戦闘に対しての下準備という内容となっているのだ


言ってしまえば、能力など使わなくても、無能力者を抑え込むことくらいはできるのだ


「いいよなまったく・・・できるなら無能力者に生まれたかったぜ」


「あら、そしたら私たちとも仲良くならずにいたのよ?静希とも明利とも、雪奈さんとも」


「・・・それはそれでいやだな」


とはいっても、陽太からすれば能力はさほど誉れ高いものではない


この能力があったせいで両親との仲には亀裂が入り、家にいることがつらくなってしまっているのだから


もちろんこの能力に助けられたことだってある


だが、なかったらなかったで、それなりの暮らしがあったようにも思えてしまうのだ


「まぁでも、陽太の気持ちもわからないでもないな、一度でいいから遊園地とかそういうところに行ってみたいってのはあるし」


「そうだね、私たちじゃ入ることもできないしね」


能力者は基本立ち入りを禁止される場所が多い


静希のいう遊園地などは多くの無能力者が集まり、遊ぶためのテーマパークだ


そんなところに能力者が入ろうものならいったい何が起こるかわかったものではない


能力者は不自由だ


いつも何かの制約や制限を設けられ、その上で社会貢献するように生きている


力あるものはその責任を負わなくてはならない、それが本人の意思にかかわらずとも


「確かに、一度でいいから行ってみたいっていうのはわかるかな・・・そうね、それも悪くないけど・・・やっぱ私は能力者でいいわ」


「なんで?」


「だって、この力がないと不便で仕方ないもの、これがないなんてごめんだわ」


鏡花の能力はかなり応用性が高い


それこそこの能力があればどんなこともできると言っても過言ではないかもしれない


多少本人の手間と面倒がかかるのは仕方のないことでもあるが


「ていうかさ、無能力者の奴らは俺らの生活見てなんか楽しいのか?こんなん見ても仕方なくね?」


「それは・・・あまり見たことが無いものは見たいってことだよ、動物の生活をやってる番組とか、海外の生活を特集する番組とかよくあるでしょ?」


明利の説明に陽太はなるほどと納得する


本人たちからすれば何のことはないただの日常でも、その生活内容を知らない者からすればひどく新鮮に映るのだ


事実、静希達が毎日やっているような訓練の体験コーナーも当日には配備される


何が楽しくてそんなことをするのかわからないが、自分がやったことのないもの、見たことのないもの、そして知らない物というのは総じて新鮮に映るのだ


静希達にとってそれが普通でも、無能力者たちにとっては珍しく、見てみたい、体験してみたいものになりえるのである


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ