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J/53  作者: 池金啓太
十五話「未来へ続く現在に圧し掛かる過去の想い」

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イベント

静希の左腕の件と、城島のひと騒動があってから一週間程度、十月に入ってより一層過ごしやすくなってきたあたりで、静希達はあるイベントのために少しだけ忙しくなる予定があった


喜吉、士怒、鳴哀、楽導、日本に四つ存在する能力者専門学校


普段は関係者しか入ることのできないその四つの専門校は一年に一度だけ一般公開をする義務がある


それは能力者が、ひいては彼らを育成している専門学校が多くの援助を受けている故のイベントでもある


授業風景だけではなく能力の体験や実態などを教えるような多岐にわたるイベント


その中には多くの外部の食品店などの出店も予定される、いわば専門学校の学園祭のようなものである


主に来賓や一般無能力者への対応や出店の手伝いなどは成績優秀な生徒が対応することになっており、それ以外の生徒は基本普段通りに授業を受けたり、多少の能力の実演などをする程度、にぎわうこと以外は普通の日としてカウントされ、休むことなど許されない


そして静希達が所属する一年B組でも変わらぬように各種割り当てが発表されていた


「では、先に伝えたように一班はその日店舗の手伝いおよび警備、四班は能力体験コーナーの補助、七班は来賓の対応と誘導だ、全員資料を頭に入れておくこと、ほかの連中はいつも通り授業だ、せいぜい勉強してますよアピールでもしておけ」


もちろん、一学期に成績優秀班に選ばれてしまった静希達がその中に選ばれないはずがなく、半ば強制的にイベントへの参加が義務付けられてしまっていたのだ


面倒が押し付けられることはもはやわかりきっていたことではあるが、本当にやりたくない


「せんせー!俺としては生まれて初めて普通に勉強したいと思いましたー!生徒のお願いかなえてくれませんか?」


陽太の言葉に城島は笑顔でほざけバカと冷徹な言葉を浴びせる


教師の発言ではないのは置いておいて、陽太の反応も半ば仕方がない


なにせこの一般公開で行われる内容に関して、授業を受ける生徒は全くの無関係で済むのだ


簡単に言えば授業さえ終わってしまえば自分たちも参加して遊んでいいということである


だが成績優秀班となってしまい、手伝いに入れられてしまった班は一般公開が終わるまでずっと手伝いをしなくてはならない


勉学も遅れる、訓練もできない、なのに一銭の価値もない手伝いを行わなければならない


これ程の苦行はなかなかないのだ


しかも平日だけではなく土日も行われるのだから性質が悪い


「安心しろ、一班は前回の実習で班員全員がやらかしているからな、恐らく今学期の成績優秀班に選ばれることはない、よかったなバカども」


やらかしている、その言葉に静希達はものすごく気まずそうな表情を作る


静希に至っては左腕を無くし、班長である鏡花を含めた三人は無断出撃に無断戦闘行為、これが良い点になるのであればこの学校の生徒は全員評価がSになることだろう


自分たちがやらかしたことがどれだけのマイナス点になるかはさすがにまだわからないが、恐らくかなり低い点になることがうかがえる


難易度が高い実習を受ける代わりに高い評価がもらえるかと思ったらそんなことはなかったのだ


城島の言葉に周りのクラスメートたちがやっぱりなという感じの笑みを浮かべている


落ちこぼれ二人に引っ張られてこのような評価を受けてしまったのだろうなという、鏡花に対しての哀れみの視線もあるが、実際は鏡花も率先して違反行動をしていただけに笑えない


自業自得と言ってしまえばそこまでだが、微妙に納得がいかないのも事実である


「それじゃあ今呼んだ班は後日打ち合わせをするからな、頭に入れておけよ、以上解散」


実際に一般公開が行われるのは一週間ほど先だが、それでもすでに調整が始まっているのだという


この学校が能力者の専門校であるために準備自体は丸一日かければ終わってしまうのだが、大人たちの話し合いはもっと時間がかかる


それに事前にある程度話し合っておかなければいけないのもまた事実だ


例年、この一般公開には多くの人が訪れる


数日間行われる一般公開、普段見ることのできない能力者の実態や、自分たちの使えない能力を見ることのできる数少ない数日


金土日の三日間行われる中、最初の一日は主に能力者の人々が観察に来る


それこそ軍関係者や、委員会、警察や消防などと言った公務組織などの人間が多く査察に来る


無論、能力者への対応を模索している政府高官もやってくる


一番重苦しく、面倒な日が金曜日になるということだ


そして普通の学校や仕事が休みの土日には一気に一般人たちが押し寄せる


学校はテーマパークじゃないんだぞと言いたくなるほどに人間が大量に押しかける


ある種仕方ないことなのかもしれないが、日本に四つしかない専門学校、しかも自分たちが日々見ることのできない能力に触れることができるというわずかな機会だ


家族連れも来るし、近所に通っている無能力者の学生なども面白半分でやってくる


しかもその様子をテレビなどで中継する局もあるほどだ


毎年の就職活動開始の報道ではないが、何が楽しくて学校にやってきているんだか本当にわからなくなる


そんなこんなで大量に人間がやってくればそれだけ面倒や問題も多くなる


教員たちが総出で対応をすることもあるだろうが、それだけでは人数が足りないということで成績優秀な生徒たちに手伝いを頼むのだ


学業に遅れが出ても問題がないほどに優秀な生徒たちであれば手伝いをしても問題ないということなのだろう


そう考えれば、静希達が選抜されたのはひどく自然だ


だが、同時に静希達は常に面倒の中心にいることが多い要注意人物でもある


城島もそのことはわかっているのだろう、あえて来賓などの対応に当てずに出店の手伝いと警備などと言うあまり人とかかわらないような仕事に回してくれたのだ


もっとも、静希達からすれば選抜してほしくなかったというのが本音だが


今回から十五話が始まります


少しでも投稿を早く多くしたいところです


これからもお楽しみいただければ幸いです

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