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J/53  作者: 池金啓太
十四話「狂気の御手と決別の傷」

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それぞれの収穫

鏡花の掛け声とともに繰り返されたのは、江本によって炎の状態を赤、白、青と順々に変化させることである


そしてその状態の感覚を陽太におぼえさせる、ただそれだけ


操作権が他人にあるとはいえ、その感覚は陽太にも伝わっているために、その感覚を覚えるという方法はかなり有益に働いているようだった


今までのような強烈な集中や思考による特訓ではなく、陽太自身が体で覚えるというものだからである


二時間もすると、陽太も少しながら能力の出力変化のコツを掴めてきたのか、江本の能力を解除した状態でも炎の色を変えられるようになってきていた


だが、それも長くは続かない


「・・・ぶはぁ!何秒?!」


先程まで顕現していた青い炎は陽太の集中が切れると同時にいつもの赤い炎に戻ってしまう


感覚を覚えるというのだが、いつもの調子で能力を使ったり、感覚を少し間違えてしまうとすぐにいつもの出力に戻ってしまうのだ


「十七秒ね・・・まぁ最初はそんなもんだと思ってたけどね・・・」


本来、感情とは別のところに能力操作の鍵を作るのは幼少時に行われる


幼いころから習慣づけて毎日繰り返すことで感情とは別のところで能力を操作するのだが、陽太は感情操作の期間が長すぎた


新しくスイッチを作ることには成功しているが、それを自由自在に操るというのはまだ難しそうである


「いやでもすげえよ!今まで全然できなかったのに、今は少しでもできる!やっぱお前頭いいな!」


「私に感謝するよりも、協力してくれた江本君に感謝するべきよ、この調子だと、週一くらいで協力してもらうことになると思うけど・・・」


「おぉそうか、ありがとな江本!これからよろしく!」


これからなどと言ったが、それはそれでまた城島に許可を貰ったりしなくてはならない


刑務所に週一で通うというのはあまりいい状態とは言えないが、江本の刑期軽減にも貢献でき、陽太の能力を向上させることもできる


一石二鳥ではあるものの、先は長そうだ


「それじゃ今日はここまでね・・・また来るかもしれないから、その時はよろしくね」


「は、はい、失礼します」


江本は二人に頭を下げて再び看守に連れられて部屋を退出していく


それを見届けたあとで鏡花と陽太は刑務所の職員用の休憩室にやってきていた


そこにはあまり顔色のよくない静希と明利、そして城島がいた


二人がやってきたのを確認すると、静希は顔を上げ、立ち上がる


「そっちはどうだった?」


「上々だ!あとで見せてやるよ、腰抜かすなよ?」


上機嫌な陽太とは対照的に、静希や明利の表情はあまり良いとは言えない


その様子を見て鏡花はわずかに落胆していた


「そっちは・・・ダメだったみたいね」


「あぁ・・・残念ながら、しばらくはこの腕に頼ることになりそうだよ」


力のない笑みを浮かべながら、静希は自分の左腕を掴んで見せる


可能ならば、正しい腕で過ごしてほしかったところではあるが、ダメだったものは仕方がない


「あ、そうだ先生、ちょっとお願いがあるんですけど」


鏡花はあまり深くは聞こうとせず早々に話を切り上げようとする


あまり話を長く続けようとすると、二人がどんどん落ち込むかもしれないために、多少強引にでも話を変えようとした


「実は陽太の能力強化で、まぁ上手くはいったんですけど、定期的に江本君に協力を頼みたいんです」


「・・・反復練習という事か・・・ふむ・・・まぁ江本なら問題ないだろう・・・いくつか確認してくるから少し待っていろ」


城島も話を変えること自体には賛成だったのだろう、鏡花の申し出を断ることなく一時的に休憩室から出ていく


「陽太君の訓練ってそんなにうまくいったの?」


「そりゃもう!俺も久しぶりに青い炎を出せたよ」


「へぇ、あの炎を出せたのか、そりゃ収穫大だな」


静希自身、まさか陽太の全力状態を引き出せるとは思っていなかっただけに驚きを隠せなかった


本人と同じく、静希も陽太の青い炎は数えられる程度しか見ていない


そしてその力の強さも


「今はまだすごく短い間しか青い炎の状態を維持できないけど、これから訓練していけば常時青い炎の状態で戦えるようになると思うわ」


「なるほど、いつかは青い炎の状態で槍をつかえれば・・・って感じか?」


最終目標はそれねと鏡花は楽しそうに笑っている


誰かに何かを教え、そして成長していく姿を見るのは彼女自身好きなのだろう


陽太の成長は確かに目覚ましいものがある


今年の四月にはまだ全力どころか自分の能力の特異性にも気づいていなかったのに、今や不完全ながら武器を所有し、短時間ながら全力を出せるまでにもなっている


嬉しいのは陽太や鏡花だけではない


能力の扱いに苦心してきた姿を見てきた静希と明利も、自分のことのように嬉しかった


これで陽太が能力を自由に操れるようになれば、落ちこぼれなどと言われることはなくなるだろう


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