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J/53  作者: 池金啓太
十四話「狂気の御手と決別の傷」

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藍色の炎

陽太の疑問はもっともである


今まで陽太の行ってきた訓練は能力の出力を高めたり、自分の能力の特性を利用した武器の創造だったりと、制御と操作に関するものだった


だが今回はそれとは少し違う


「今のあんたは感情のバーを操作して炎の強弱をコントロールしてる、でも感情自体が上手くコントロールできないから炎の出力が不安定になってる、ここまではいいわね?」


鏡花の言葉に陽太は不承不承ながらうなずく


微妙に納得がいっていないのは理解したが鏡花はそのまま続けることにする


「そしてお姉さんの付けた安全装置のせいで感情のバーが一定値以上になるとそこで強制的にクールダウンしちゃう状態にある、だからさらに新しくバーを固定した状態にしたものをいくつかつくって、その切り替えのスイッチを作るのよ」


「えと・・・要するに?」


長い説明では陽太は少し理解するのが難しかったのか首をかしげてしまう


少し呆れながら鏡花はため息をついて要するにと言葉を切って指を三つ立てて陽太の眼前にかざす


「今まで使ってたのは炎をバーで調節する不安定なガスコンロ、今回は炎の大きさをライター、バーナー、火炎放射器の三段階に即座に切り替えられるスイッチ式の操作装置を作るの」


「おぉ、なるほど・・・でもどうやって?」


何をしたいのかは理解したが、その先、つまりどうやってそれをやるのかがわからない


こんなところに来るくらいだからそれなりの理由があるのだろうが、何をどうしたら今日江本に会うのかがわからないのだ


「あんたの身体、いや頭にあんたの能力使用時の感覚を教え込ませる」


「どうやって?」


「自分で何とかできないなら誰かに何とかしてもらうしかないわね」


説明を終えると、ちょうど二人が待っている部屋の扉が開く


そこには手錠をつけられた少年、江本が二人の看守に連れられてやってきていた


「面会時間は二時間程度だ、留意しておきなさい」


看守の言葉にありがとうございますと返して、鏡花は江本の元へ向かう


「お久しぶりね、私たちのこと覚えてるかしら?」


鏡花が近くによると、江本は記憶を探りながら鏡花のことを思い出そうとする


陽太も近くに行くとようやく二人のことを思い出したのか、気まずそうにお久しぶりですと答えた


「あの・・・今日は何の御用ですか?能力の訓練って聞いたんですけど」


「話は通ってるみたいね・・・それじゃ君の能力をこいつに使ってほしいのよ」


その言葉に陽太の顔が引きつる



江本の能力は相手の脳と同調して相手の能力を自由に操るものだ、同時に制御権を自分が失うのと同じことを示す


またあの感覚を味わわなければいけないと思うと、あまりいい気はしないのだ


「構いませんけど・・・いったい何を・・・」


「そしたら、こいつの能力を全開にしてほしいのよ・・・最大出力を出してほしいの」


陽太は鏡花の言葉でようやく理解した


能力を使う上での感覚は人それぞれ違う


陽太が使う上では感情や意志が必要になるが、江本はそんなものとは全く違う、もっと操りやすいもので制御しているだろう


まずは最大出力


自分で最大出力を出せないのなら、他人に操ってもらう


何とも情けない限りだが、確かに有効な手段であることは理解できた


鏡花の言う通り、江本は陽太の頭に触れ、能力を発動する


陽太の脳と同調したことで、陽太は能力の制御権を一時的に奪われ、能力が発動できなくなる


鏡花と江本が陽太の元から離れ、十分な距離を作ったところで江本が合図する


瞬間、陽太の体が炎に包まれた


今まで見てきた炎の色ではない


それは美しい藍色、ゆっくりと揺らめく炎がその体を包み、鬼の姿をかたどっていく


青い炎を纏った鬼、まさに『藍炎鬼炎』


「おぉ・・・おぉぉぉぉぉ!青い炎だ!うっわひっさしぶりだなこの感じ!」


陽太自身数えるほどしか纏えなかった炎を纏っていることで、かなりテンションが上がっているのだろう


しきりに自分の体を確認しているが、鏡花は全く別なことを考えていた


「まず第一条件は成功ね・・・江本君、次は能力を少し抑えてくれない?具体的には炎の色が白くなるまで」


「わかりました、やってみます」


江本が少し集中すると、陽太の炎の色が徐々に変わり、以前の実習で見せた白い炎へと変えていく


ここで鏡花は一安心した


鏡花の危惧は江本の能力によって陽太の能力が正しく操れるかどうかだった


以前自分の能力を操った時、僅かにその能力が劣化していたことを思い出したからである


恐らく彼の能力はある程度制御性や操作性が劣化するが、八割程度の精度で他人の能力を操作できるのだろう


この状態で陽太の槍を作ることまではできなさそうだが、今回の目的であるスイッチの作成に関しては問題なさそうだった


「それじゃあ江本君、陽太に能力を使ってる感覚だけ与えることってできる?」


「・・・まぁ、やろうと思えばできますけど・・・」


江本が再度集中すると、陽太に操作中の感覚が戻ったのか、非常に落ち着かないようでそわそわし始める


これですべての条件はクリアできた、後は反復のみである


「さぁ陽太、訓練始めるわよ」


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