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J/53  作者: 池金啓太
十四話「狂気の御手と決別の傷」

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後天的装置

異質な存在と会い、二人がその精神を削る出来事を知ってしまうより時間は少し遡る


静希と明利、そして城島と別れた鏡花と陽太は、物理的監獄に収容されている江本に会いに来ていた


広場にも似た少しだけ広い空間で待たされているなか、陽太はあたりをしきりに観察している


「少しは落ち着きなさいよ・・・そんなに不安?」


「だってよ・・・なんであいつに頼むんだ?未だにわからないんだよ、説明してくれたっていいじゃんか」


さすがにここまで何の説明もされずにやってきたことに関して少しは不安があるのか、陽太は落ち着かない


説明くらいはしてやるかと、鏡花は姿勢を正して軽く咳き込む


「その前に確認よ、あんたの能力はかなり制限されてる、静希曰く一定以上感情が高まると強制冷却が行われるって聞いてるけど?」


あの時見た、陽太の感情が著しく抑えられた状況


あれこそ強制冷却ともいえる安全装置だった


「あぁ・・・そりゃ姉貴のせいだな、暴走しそうになると鉄拳が飛んできたから、どうにかして落ち着かなきゃって・・・」


過去、能力の暴走を抑えるために陽太は姉実月と一緒に訓練を重ねた


その失敗を繰り返すことで、ある種反射にも近い形で実月は陽太の能力に安全装置をつけることに成功したのだ


「なるほど、防衛本能が妙な形で働いてるわけね、制御の特訓において感情と一緒に能力が暴走するのを抑えた、その点に関してはあんたのお姉さんは正しいわ、低出力での制御ができなきゃ高出力に耐えられるはずもないからね、でも一つ、決定的に間違った点がある」


「間違い?」


それは能力を制御することにおいてもっとも犯してはならない事柄だった


これがあるかないかで、能力の操作性は大きく変わる、だからこそ最初に指導されるべきことだったのだ


だが、陽太の周りにはその指導ができるだけの優れた教師がいなかった


陽太の不幸があるとしたら、身の回りに正しい指導をできるだけの教師がいなかったことだろう


「そう、それは暴走を抑えるために感情を無理やり抑え込んでしまったこと、本来能力発動のスイッチは制御初期段階で感情とは切り離した状態にしておかなければならないのよ」


感情での制御では必ずその出力にムラができる


その為ほとんどの能力者は感情ではなく、感覚やある種の自己暗示にも似た行動によって能力を制御できるようにする必要があるのだ


「あんたは幼少時からの暴走の連続で感情と能力の結びつきが強くなってしまった、そこで実月さんは感情抑制訓練をして能力ごと抑え込もうとしたんだろうけど、本当なら感情抑制じゃなくて能力発動のスイッチを感情とは別のなにかに挿げ替える訓練をするのがセオリーなんだけど、実月さんはそれをしなかった・・・そこが唯一の間違いね」


実月の行動は勿論すべてが間違いだったというわけではない


むしろ陽太をいち早く守るためには、あのような訓練が最速であったことは間違いない


暴走の危機にさらされる危険と、将来の陽太の能力の制御性を秤にかけ、実月は一刻も早く陽太を守るほうをとったのだ


結果的に陽太の暴走は著しく減ることになる


実月は将来鏡花のような、陽太を正しく指導できる人間が現れることを信じて、陽太の制御性を犠牲にしたのだ


結果的に言えば、実月の賭けは成功したことになる、今、陽太の能力を正しく理解し、さらにその改善法を考えられるだけの人物がここにいるのだから


「・・・つまり俺が全力を出せないのは姉貴のせいってことか?」


「そういう言い方すると嫌な風に聞こえるかもしれないけどその通りよ、でも逆にあんたが今まで暴走を頻繁に起こさずにこうして過ごせているのも実月さんのおかげであるってこと、忘れないようにね」


能力の抑制というのは幼少時は非常に苦労するものである


だが感情を如何なる時でも抑制できるようにするために訓練したことによって、寝ている時も起きている時も暴走を起こすことが無くなるというのは大きなメリットだ


その分制御性を犠牲にしたし、前回のような臨界状態を維持した場合はその限りではないようだが、陽太の日常生活は確実に守られていたのだ


「でもよ・・・実際俺はそのせいで能力で全力が使えなくなってるじゃんか」


「それはあんたのせいでもあるのよ?実月さんが行ったのはあくまで暴走防止用の訓練、でもあんたはそれを能力動作に直結して覚えた・・・それは今まで指導してきた人やあんたの幼さゆえの過ちだから今更どうこう言っても仕方ないけど・・・実際訓練を終えた後は暴走も少なくなったんでしょ?」


陽太の不幸は、指導者に恵まれなかったことだ


もしこれで幼少時に一人でも陽太の特異な能力を正しく指導できるだけの人物がいればもっと変わっていただろう


「それは格段に減った・・・けどそれ関係あるのか?」


「あるわ、後天的に能力のスイッチを作れるっていう前例になるからね」


実月が作った安全装置、それは先天的ではなく後天的に作り出したものだ


それはつまり、別の方法をとればまた新しい装置を取り付けられることを意味する


「で、これから何するんだ?」


「あんたの能力はもう炎や熱の強弱が感情とリンクしちゃってる、今更それを矯正するのは手間がかかるわ、だからこれから新しくスイッチを作る」


「スイッチ?」


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