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J/53  作者: 池金啓太
十四話「狂気の御手と決別の傷」

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監獄へ

数日して、静希達は城島達に呼び出されていた


以前頼んでいた、能力者用の刑務所についての話である


結果的に、両者ともに面会は可能だった


そうなってしまったことに城島は少しだけ後悔しているようだったが、明利の気持ちは依然として変わらなかった


だが面会にも条件があった


江本への面会及び訓練を望む鏡花と陽太には数名、監視がつくとのこと


その程度であれば何の問題もないために二人は快諾した


そして『神の手』との面会を望む明利と静希には城島と、数名の監視がつくとのことだった


これも、何の問題もなく快諾、全員で書類を作成し、週末に刑務所へ向かうことになった


日本には刑務所はいくつかあるが、能力者専用の刑務所は一つしかない


それは設置できるだけの設備を揃える手間を省くのも含まれるが、もう一つ理由があった


それはつまり能力の封殺である


週末、静希達がやってきた某県某所、城島の案内によって連れてこられた一班の人間はそこにたどり着いていた


日本で唯一の能力者専用の刑務所、犯罪を犯した能力者が収監される、末路とも言える場所


事前に申請を通していたためか、比較的スムーズに中に入ることができたが、そこで道が二つに分かれる


そこで一緒に来ていた軍部の人間が城島と少し話をしてから戻ってくる


「清水と響はそっちだ、すでに江本の準備も終わっているそうだから早めに終わらせて来い」


「あれ?一緒の場所じゃないんすか?」


「いろいろ特殊なんでしょ、行くわよ」


陽太の疑問を無視して首を掴んだ状態で引きずりながら鏡花は静希達と別行動を始める


この刑務所は二つに分かれている、その理由は能力者を完全に逃がさないようにするためでもある


いくら物理的に拘束しようと、例えば変換系統や転移系統の能力者では容易に脱獄することができる


だからこそ、疑似的に魔素濃度を著しく下げることで脱獄できないようにしているのだ


その方法は至ってシンプル、魔素を吸う植物の群生である


この世界には多数、魔素を吸うことでいくつかの反応を示す植物が存在する


以前静希達がエルフの村に行ったときに見た街灯代わりにされていた植物がその典型とも言っていい


一部は光合成の一環として、一部は成長の一環として、一部は繁殖の、一部は外敵から身を守るために


それは能力とは全く別で生態である、蛍などが光るのと同じだ


そうした植物を大量に配置、群生させることで魔素濃度を著しく下げているのだ


と言っても刑務所全体に群生させるだけの施設を作るのには莫大な金がかかり、適切な施設を作らずに群生させてもその濃度はやはり四十パーセント程度になってしまう


大能力を使うことはできなくとも、ある程度の能力は使えるのだ


そこで刑務所は特殊な法則を用いて囚人を収監している


まず、魔素を吸う植物を群生させる範囲を極力狭めることで魔素濃度の局地的な低下を図る


これによって低コストで魔素濃度を一割程度まで減らすことに成功したのだ


そして、特殊な法則というのは、簡単に言えば脱獄可能な能力を持っているか否か


変換能力や転移能力などではなく、脱獄も不可能である能力であると判断された能力者は、魔素的な拘束ではなく物理的な拘束を重視する監獄へと


変換能力や転移能力、または脱獄可能な能力であると判断された場合は先に述べられた魔素濃度を著しく下げた空間に厳重に拘束される


もちろん例外は存在する


これから静希達が会いに行く人物『神の手』もその例外に分類される


幾つかのエレベーターで地下に下りながら、徐々に重苦しくなる空間を感じながら静希と明利はわずかに冷や汗を流していた


「あの、先生・・・一ついいですか?」


「なんだ?あまり時間はないぞ?」


沈黙に耐えられなくなり明利があまり機嫌がいいとは言えない城島に対して口を開いた


「あの・・・神の手って・・・どんな人だったんですか・・・?」


その質問に、城島と一緒に静希達についてきていた軍人もわずかに息をのんだ


彼らも神の手がいったいどんな人物なのか知っているのだろう、エレベーター内の空気が一気に冷え切ったのを感じていた


「・・・ある程度は調べたんだろう?」


「・・・はい・・・生体変換を扱う能力者で・・・とても優秀な医者であった・・・ということは」


恐らく経歴もある程度は調べたのだろうが、資料だけではその人物のことはわからない


何せどこの学校や病院に在籍し、どのような功績を残したか程度の情報しか見つからなかったのだ


それ以外に見つけたのは、逮捕された時の事件の記録だけである


「その通りだよ、あいつは優秀な医者だったんだろうさ・・・だがどこかで壊れたんだろうな・・・私があいつを拘束したときはもう、今のあいつだったよ」


今のあいつ


まるで今と昔で人が違うかのような言い回しだった


城島からの回答を得られる前に、静希達の乗るエレベーターは目的の階に到着する


ゆっくりと開いた扉の先に見えたのは、一面の緑だった


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