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J/53  作者: 池金啓太
十四話「狂気の御手と決別の傷」

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彼らの名

能力名もそうだが、称号には必ず意味がある


例えば陽太の『攻城兵器』


これはそのまま強力な一撃を秘めていることを示す、その一撃は局部的なものではなく、大質量の建築物を破壊できるだけの威力を内包していることを示す言葉でもある


雪奈の『切り裂き魔』は能力名からの転用だが、これも的を射ている


雪奈の攻撃は基本一撃必殺を信条としている、切り裂いて一撃で終わる、その攻撃は切り裂くだけ、それ以外は全くないまさに切り裂き魔の様相だ


対して静希の称号『ジョーカー』


トランプなどで用いられるジョーカーは最強の札として扱われる、だが同時に最弱のカードに敗れることもある


時には他のカードの代理となったり、時には忌み嫌われる存在にもなる


最弱であり、最強であり、その実態がつかめず、畏怖される


悪魔の契約者であり、記録上弱い能力者である静希の称号としてこれほど適切な称号もないだろう


「これからも明利の索敵にはお世話になるかもね、私たちはやたらと面倒な実習につけられることが多いし」


鏡花の言葉に全員が確かにとうなずく


今までの実習は一部を除いて何らかの事件にかかわっているような内容ばかりだった


そう考えると次もまた妙な事件に巻き込まれるのではないかという予感がしてならない


こうなったらなるようになれと言いたいが、できるならもっと平和な実習に巡り合いたいところである


思えば戦闘をしない実習は今までなかったのではないかと思えるほどだ


唯一ダムの解体が戦闘なしだったが、あれは追加で入れられたものであり、正しい意味での戦闘を行わない実習は一度もない


何でこんな風になってしまったのか


思えば一番最初の実習から始まったこの奇運、メフィにかかわることが無ければ神格邪薙ともかかわることはなかっただろう


オルビアとはどちらにしろかかわったかもしれないが、夏休みのエドとの接触、テオドールとの戦闘などはなかったと思っていい


だが人外たちと接触していなければ静希は前回の実習で死んでいたことになる


一班の人間が前回の樹海の実習に駆り立てられたのは人外とは関係なく静希達の実力故である


もちろん一部の委員会の人間が五十嵐静希が悪魔の契約者であるからという理由で選抜した可能性も否定できない


だが実習において静希達は人外の力に頼らない


そう思うと人外たちにかかわってよかったのではないかとさえ思えてくるから不思議である


「まぁあとは先生の連絡待ちか・・・できることほとんどないんだよなぁ」


カバンを持って帰宅する四人の中、自分の左腕を動かしながらそういう静希を見て、陽太が不思議そうな顔をしている


「なぁ静希、その腕ってどうなんだ?使いやすいのか?」


腕の実情を知らない陽太からすれば、ただ動いているとしか見えないために別段これと言って違和感がない


今静希の左腕の義手には肌色のスキンがつけられているために普通の腕と相違ない


ただしその腕には時計がつけられていない


あの時壊れた腕時計は今明利が持っているのだ


「んん、便利は便利だけど、使いやすいかっていわれると微妙だな・・・でもとりあえず指先で力がいる動作は楽になったな」


どんなものだろうと握りつぶせるぞと言って手を開閉している静希を見て鏡花は近くにあった煉瓦の一部を変換して鉄のコインに変えて見せる


「それじゃこれ曲げてみせてよ」


「あいあい」


鏡花から受け取ったコインを左手で器用に掴み動作を念じると何の抵抗感もなく鉄のコインは真っ二つに変形してしまう


はたから見れば恐ろしい光景だった


「うわぁ・・・あんとき犯人の顎砕いた理由はこれかぁ・・・もうあんたとは二度と左手で握手しないようにするわ」


「なんだよそりゃ、手加減もちゃんとできるっての」


握りつぶされてはかなわんという鏡花なりの冗談だったが、実際に可能なだけに笑えない


それこそ手で掴めるレベルの物であればどんなものだって握りつぶせるようになったのと同じことなのだ


それを見てわずかに対抗心を燃やしているのは一班の前衛たる陽太だった


鏡花に同じような鉄のコインを作らせて生身で曲げようと必死になっているが、片手では無理のようだった


「やめとけって、能力使えばお前なんて一発だろ?」


「別に悔しくねえし、俺片手で林檎潰せるからそれで満足だし」


本来の筋力を考えればそれだって十分すごいことなのだろうが、恐らくスチール缶も片手で潰せるようになった静希から比べるとやはり劣って見えてしまう


というか特殊な道具に対して生身で張り合おうとするあたり陽太はバカだ


「はいはい、それじゃ二人とも、私たちはいつも通り特訓して帰るから、また明日ね」


「あぁ、頑張れよ」


「また明日な」


「頑張ってね、また明日」


校門前で別れてそれぞれの放課後を過ごしていく中、静希の左腕を眺めて明利はわずかにため息をついていた


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