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J/53  作者: 池金啓太
十四話「狂気の御手と決別の傷」

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事後報告

「いいじゃんか、どんな理由だって実力が評価されたんだろ?喜べって」


そういう静希も、称号の取得に事情があったためにそれほど嬉しかったわけではないが、やはり評価されるというのは嬉しいものなのだ


それが家族からなどではなく、赤の他人の物だからこそ、なおのことである


「てことは、この班で称号持ちじゃないのは鏡花だけか」


陽太の言葉に鏡花は悔しそうに歯を食いしばる


できる限り言わないようにしていたのにとジトリとした目を陽太に向けている


「いやそこは私も意外だった・・・予想で言うなら清水、響、幹原、五十嵐の順で称号を獲得していくと思っていたんだが・・・当てが外れたな」


「まぁ、実際鏡花の能力は強力ですけど・・・意図的に目立たないような事ばっかりやってますからねこいつ」


静希の言葉に鏡花は図星をつかれたのか苦しそうな表情をしている


そう、鏡花の能力はかなり強力だ


それこそエルフにだって対抗できるかもしれないだけの実力がある、だがそれを発揮することは少ない


手を抜いているというわけではないだろう、だがもっと率先して能力を使おうとしていれば、大々的に活躍できるだろうに、何故か鏡花はそれをしないのだ


だからこそ、後始末は鏡花担当などというレッテルを張られてしまっている


「清水、お前の能力の高さはこの班の全員が知っている、もう少し前に出てもいいんじゃないか?」


「・・・」


城島は何か事情を知っているのか、珍しく優しい声でそういうが、鏡花は目をそらして何も言わなかった


何か事情があるのか、それともそうしたくないわけでもあるのか


「まぁそういうのはいいじゃないっすか、手抜きってんなら怒るとこだろうけど、こいつはこいつで全力でやってくれてるってわかってるし、先生の要件ってそれだけですか?」


陽太が気楽な声で話に割って入ることで鏡花は少しほっとした表情を見せる

それはどちらにほっとしたのか


陽太が割って入ったことで話が中断されたことか、それとも手を抜いていないと理解してくれていることか


「いや、もう一つある・・・これは事後報告なんだがな、確認に手間取っていてな・・・お前達、平坂は覚えているな?」


「私たちの護衛対象だった人ですよね?」


鏡花の言葉に城島はそうだと呟いてある資料を出す


そこにはある事柄が書いてあった


「実は、あの実習があったのと同日、世界中で奇形研究を行っていた研究者が行方不明になっている」


その言葉に全員が目を見合わせて驚く


声を上げるようなことはなかったが、一体何が起こっているのかまったく状況がつかめない、戸惑いにも似た感情を全員が抱いていた


「え・・・でもそんなのニュースとかでは・・・」


「当たり前だ、一人二人ならまだしも、数十人、もしかしたら百人規模になるかもしれない人間が攫われているんだ、各国で連携して情報規制と情報収集を急がせているところだ」


城島は一体どういうコネからそういう情報を手に入れているのだろうか、少し気になったが今は無視することにしよう


「あれ?もしかして平坂さんもさらわれた感じです?」


「いや、彼は無事保護され、今も軍の保護下にいる・・・だが問題は今回お前たちが遭遇した誘拐は突発的なものではなく、組織的な計画の一環だった可能性が高い」


一人二人が攫われたのであれば、まだ個人的犯行の可能性もある


だが世界各国で同日の犯行となれば、もはや個人の域を超える


何が目的なのかは全く分かっていない、さらわれた研究者の行方もいまだ不明なのだという


「あの、俺らが捕まえたり、軍が捕まえた犯人の尋問は?何か情報が得られたんじゃないですか?」


「・・・残念だが、連中は現地・・・この日本で雇われたただの尻尾だ、依頼人の情報も、詳しいことも全く不明、ただある地点に平坂を誘拐するまでが仕事だったようだ・・・その地点にも不審な点は何一つなかった」


城島曰く、その地点は港だったらしい


恐らくはそこに平坂を運んで船で移動するつもりだったのだろうが、その日着港していた船に不審な点は一切見られなかったという


「実行犯は今どうなってるんです?」


「まだ軍で拘束されている、情報をすべて聞き出してから豚箱に入れられるだろうさ」


話すべきことは終わったのか、城島は深くため息をついて明利と鏡花の方を見る


「私の話すべきことは以上だ、お前たちの要件を聞こうか」


城島の言葉を受けて明利と鏡花は視線を合わせてうなずく


「実は・・・その・・・城島先生にお願いがあるんです」


明利の言葉に城島はふむと呟いて髪の奥の瞳で明利の目を見つめ続ける


特に睨んでいるというわけでもないのにその眼光は鋭く、無意識の威嚇をしてしまっている


それでも明利はひるまない


「ある人との面会をお願いしたいんです・・・私たちじゃどうしようもなくて」


「面会ね・・・いったい誰とだ?」


人と会うことにおいて面会などと言う言葉を使うという状況はかなり限られている


それを理解しているのだろう、城島の目が少し細くなる


「・・・以前城島先生の話していた・・・『神の手』と」


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