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J/53  作者: 池金啓太
十四話「狂気の御手と決別の傷」

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仕込み武器

肩から先を軽く取り外して作業机の上に置く、そうすると完全に静希の左腕は喪失した状態となってしまう


左腕が無くなった少年を痛ましい表情で見つめながら、源蔵は深くため息をついた


自分の息子より小さな少年、昔は雪奈の後ろについて回って仕事場で遊んでは怒鳴り散らしたものだった


たまに陽太なども来て炎を起こすのを手伝ってもらったものだった


源蔵は無能力者だ


能力者がどのような生活を送っているのか知らない、だが目の前にいる少年が、ただの子供だったということを知っている


世間は能力者は危険などということを言っているが、あのころから見てきた彼からすればそんなものは実物を見ていない人間の戯言に等しかった


ただの子供に何をおびえることがあるのか、そう思っていた


そして今、何故ただの子供がこのようなことになっているのか


源蔵の頭はそんな事柄でいっぱいだった


腕をなくし、垂れ下がった左の服の裾を掴み、握りしめる


そこに腕はない、静希の腕はもうない


それを実感したのか、源蔵は、自分より高くなった静希の頭を思い切り掴んで撫でまわした


「な・・・いきなりなんだよ!?」


「なんでもない!とりあえず型を取るから少し待ってろ!」


作業台に置かれた霊装、ヌァダの片腕を手に取ってその軽さに少し驚きながらもいくつかの道具を使って器用に型をとっていく


粘土細工にも似た奇妙な道具だ、一体どういう事をしているのか知識がない静希は全く分からなかった


「武器を作るのはいいが、中が空洞でいったいどうやって動いとるんだこりゃ」


義手の内部に何の機械的要素も見受けられなかったことがさらに驚きを誘発したのか、源蔵は興味深そうに義手の霊装を眺めていた


「まぁちょっと特殊な義手でさ、中は全部使ってくれていいぞ」


「とはいってもなぁ・・・どんなものがいいんだ?刃物ならすぐにでも仕込んでやれるが」


以前雪奈がつけていた仕込み籠手も源蔵の作品だ、すでに刃物を仕込むという構造自体は完成しているものらしく、後はその機構をあの腕に取り付けるだけになるから今日一日だけでも可能かもしれない


「刃物だけじゃなくてさ、なんかこう大砲みたいのつけられないか?腕から撃つような感じで銃みたいなのもいいな」


「簡単に言うな、こちとら刃物専門だ・・・作れなくはないが時間がかかる、今は仕込みの刃物で我慢しろ・・・というか太さ的に肘から先にはでかい砲塔をつけるのは難しいぞ」


義手の内部が完全に空洞とはいえ、その中に銃の本体たる銃身、そして発射機構を備えられるだけの仕込みをするにはその厚みが足りないのだろう


この太さにつけるとなると普通の銃とそう変わらない威力となるだろうと源蔵はそういった


「しかもライフリングみたいな器用なことはできんぞ、こちとら専門家じゃないんだ、せいぜい至近距離でぶっ放す用だな・・・肘から上の二の腕部分ならそれなりにでかいもんはつけられそうだが」


ライフリングとは銃弾を発射する際にとおる銃身に螺旋状の傷をつけることで、発射された銃を螺旋回転させて安定して直進させることができるようにする技術である


いま世界のほとんどの銃や大砲などにはこの技術が使われている


これがあるかないかで、銃の有効射程が大きく異なるのだ


肘から上、ちょうど二の腕部分である


その部分であるなら空洞内部に砲塔を仕込んでも十分大きな銃弾を詰め込める


「じゃあ、肘から先には刃物と、ボウガンみたいな鉄の柱を打ち込めるようなものにして、肘から上は大砲にしてくれ」


今静希が持っている銃の弾丸の大きさはせいぜい一センチ未満、それでも十分に人を殺すことができるだけの威力を有しているのだ


それに対して二の腕の太さならばうまく取り付けられれば二センチ以上の弾丸を装填し発射できるかもしれない


至近距離のみという条件があるものの、十分以上に魅力的な武装となる


静希は転んでもただでは起きない


都合よく重さもなく、自由自在に動く義手を手に入れたのだ、これを活用しない手はない


「簡単にいいよる・・・少なくとも一か月以上はかかるぞ?下手したら数か月かかる・・・」


「それでもいいよ、そっちだって普通の仕事あるだろうし、無理は言えないって」


源蔵の事情も知っているだけに、あまり強くいう事はできない


何せ突然来ていきなり仕事を頼んだのだ、時間がかかるのは百も承知だった


「とりあえず少し待っていろ・・・この腕に刃物を仕込んでおいてやる、使い方は雪嬢ちゃんのと一緒だが・・・どっちから出すほうがいい?」


どっちからという質問に静希は迷ってしまう


つまりは刃を手の方から出すか、それとも肘の方から出すかということだ


以前雪奈が持っていた籠手は肘部分から刃物が突出していた


あの姿も捨てがたくあるが、それ以上に手の先から出る刃に静希は心惹かれた


「手の方からで頼むよ、手首の・・・そうだな、手のひらの方から出るようにしてくれ」


「あいよ・・・にしてもよくできてるなこの義手は」


どうやら型をとり終えたのか、奇妙な物体が残る霊装を手で払いながら今度は別の作業に移っていく


雪奈の籠手に内蔵されている機構をいくつか手に取って霊装の中に仕込んでいく


その間、静希は仕事場の中を久しぶりに見学することにした


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