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J/53  作者: 池金啓太
十三話「その森での喪失」

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処罰の一撃

静希が自分のあったことをひとしきり話すと、鏡花は信じられないという表情をしていた


自分たちが苦労している中、静希は二回ほど死にかけていたというのだから


「・・・で、手に入れたのがその左腕ってわけね・・・」


「あぁ・・・せっかく皮膚もどきももらったのにすぐダメになった・・・今度謝っとかないと」


村端にもらった皮膚を擬態するための手袋は目標の爆撃によってすぐに燃え尽きていた


せっかくもらった特殊な外套も左袖の部分がわずかに燃えてしまっていた


金属を編み込んでいるというだけあってそこまで被害は大きくないが見てくれは悪くなっている


鏡花に直してもらう必要があるかなと思っていたのだが、その鏡花の表情はかなり浮かない


「どうしたんだ?せっかく俺が生きてたんだからもっと喜べよ」


「いや、正直凄い嬉しいわ、本当に死んだと思ってたから・・・でもそれ以上にまずいことがあるのよ」


「まずいこと?」


鏡花の言葉に静希はとりあえず思い当たる節がなく、明利を抱きなおしながら着々と壁の方へと歩いていく


壁が近づくたびに鏡花の顔色は悪くなっている


「そういえばお前らどうやって中に入ったんだ?壁に穴でもあけたか?」


「いんや、鏡花が地下に道作ってそっから入った、今度もそうするか?」


「いえ、こうして目標を捕まえたんだし、大義名分はあるわ、このまま正面から出るわよ」


正面から、鏡花にしては珍しい言い回しに静希と陽太は疑問を抱きながらとりあえずその指示に従い、宿舎から向かって正面にある壁の出入り口までやってくる


すでにすっかり日は登り、一日の始まりを告げるであろう太陽の光が木の葉の隙間から差し込んでいた


メフィが現れていた影響からか鳥の声や虫の声が聞こえないのが残念だが、致し方ないだろう


とりあえず鏡花に壁に穴をあけてもらって外に出ると、そこは大忙しの様相だった


見えるだけで数台の救急車や軍用車両、ここまでは昨日と同じなのだが、何人もの部隊の人間が編成を組んで活動を始めているのがわかる


「なぁ、ひょっとして樹海攻略作戦とか練ってたんじゃないのか?お前らもそっちで動けばよかったのに」


「あの状態でそんなことできるわけないでしょ・・・絶対に先生に止められるわ・・・というかこれから一番の問題は先生よ・・・」


部隊の人間が驚愕以上の表情でこちらを見ている


それもそうだろう、死んだと思っていた生徒がいて、班員の一人は捕獲対象の能力者を引きずって悠々と歩いているのだ


「き、君たち!?無事だったのか?!」


そんな中で駆け寄ってきたのはこの部隊の隊長の後藤だった


随分と忙しいのか、焦っているのか、顔も体も汗まみれの様相だった


そして静希の顔を見て再度驚いているようだった


後藤もみんなと同じように静希が死んでいたと思っていたのだから無理もない


とりあえずご心配をおかけしましたなどとそれらしい言葉を述べていると、部隊の人間を押しのけて一人の人物がやってくる


その人物の顔を見た瞬間、鏡花の顔色が真っ青になる


「あ・・・じょ、城島・・・先生」


以前許可なしに能力を使ったときで拳骨、ならば無許可で出撃、そして能力者との戦闘


これだけの大失態を冒して無事で済ませられるはずがない


「せんせー!静希生きてたっすよ!あと能力者捕まえときました!」


陽太が自慢げに持っていた、というか引きずっていた能力者を地面に転がすと、それを一瞥したうえで城島は全員の顔を見比べる


「お前達・・・私が何をしたいか、わかっているな?」


その声を聞いた瞬間に、鏡花だけでなく陽太までも顔色が悪くなる


そして静希も理解した


自分たちの班員が誰にも何も言わずに出撃した場合、自分の担任教師がいったいどんな行動に出るか


一旦明利を地面におろし、自分に引っ付いている状態でもいいから立たせる


一班の人間は横一列に並び後ろに手を組んで震えながら城島の前に立つ


「まずはよく帰ったと言っておこうか・・・大人の能力者相手によく立ち回ったと褒めてやりたいところだ」


言葉とは裏腹にその声音は恐ろしいほどに低い、そして髪の切れ目から見えるその眼光は人でも殺すのではないかと思えるほどに鋭く静希達をにらみつけている


「その上で、私はお前たちを叱らなくてはいけない・・・全員頭を出せ」


その言葉に陽太から順に城島の殴りやすい位置に自分の頭を下げていく


大きく振りかぶった次の瞬間、その頭めがけ城島の拳骨が叩き付けられ鈍い音があたりに響く


何の強化もない状態で受けた拳は相当痛かったらしく、頭を抱えて悶絶してしまっている


陽太ですらあの様子だ、自分たちではいったいどうなるのか


そんなことを考える暇も与えずに鏡花の頭に、そして明利の頭に城島の拳が振り下ろされる


陽太の時に比べ、まったく威力を落とすことなく振り下ろされる拳に二人も同様に悶絶していた


そして最後に静希の前に立った時、城島は一つため息をついて見せた


「生きていて何よりだ・・・お前がいない間、こいつらは酷い有り様だったぞ」


「・・・はい・・・心配かけてすいませんでした・・・!」


教師らしいのだろうか、少し優しい声音になったことでもしかしたら殴られないんじゃないかと期待した


「だが、お前のせいで賭けに負けた・・・まったくもって不愉快だ・・・こいつらに迷惑をかけた分、そして私の顔に泥を塗った分、しっかり味わえ」


陽太の時より、大きく振りかぶり振り下ろし、直撃する瞬間に城島は能力を発動して静希の頭を拳めがけて引き寄せる


陽太以上の強打が浴びせられたことで静希は悶絶してあたりを転げまわった


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