表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
J/53  作者: 池金啓太
十三話「その森での喪失」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

520/1032

霊装の使い道

「おや・・・目が覚めてたんだね」


部屋にやってきたのはこの家の主の村端である


こんな時間まで起きていたとは思わなかったために静希は少し面喰らった


「村端さん、まだ起きてたんですか?」


「こっちはいろいろ仕事があったんだよ・・・霊装二つ分の手続きしなきゃいけないからね・・・書類やらなんやら・・・今日明日と徹夜になりそうだよ」


その言葉に少し申し訳なくなりながらも静希は苦笑する


村端が出す声は迷惑そうなものではなく、少し楽しそうなものだからだ


一体彼女の何がそうさせるのか、それは静希には理解できなかったが、村端は村端なりに今の状況を楽しんでいるようだった


「起きたならとりあえず顔洗ってきなさい、すごい顔してるよ?」


「え?そうですか?」


鏡がないためにそれほど意識していなかったが、ずっと鍛錬を続けていたためか、その顔は汗まみれになってしまっている


意識を喪失していた時間は長く、それが休憩にも似た効果を及ぼしてはいるが受けた激痛のせいで精神は疲弊している


そして今まで新しい腕を動かすための訓練をしていたのだ、疲れないほうがおかしいだろう


村端に洗面台を借りて左腕の鍛錬がてら顔を洗うと、静希はその違和感に気づいた


顔にあったはずの火傷が無くなっている


水につけた瞬間に、痛みが来ることを覚悟していたのだが、まったく痛みがない


触れてみても、そこに肌を刺すような痛みは訪れないのだ


どうなっているのか確かめるために洗面所に置いてある鏡らしきものを見ようとするが、そこには何も映っていない


「あれ?鏡じゃないのか?」


静希が右腕で鏡らしきものを触ろうとすると、その手は触れられることなく壁にぶつかる


これも霊装であるということを瞬時に理解した


そして今度は、静希の霊装となった左腕で触れてみる


すると今度は触れられる


どうやらオルビアの時と同じように、限られた者しか触れられないという制限を解除されたことであらゆるものに触れられるようになっているようだ


「あ、ごめんごめん、こっちの鏡使ってね、そっちは私のだから」


そういって小さな鏡を持ってくる村端、その鏡で自分の顔を確認するが、傷や火傷の類は一切なくなっていた


ヌァダの左腕の効果の一つ、使用者の傷を癒す


癒すというより、これは元に戻ったというべきではないだろうか、少なくともやけどの治療後に残る皮膚のゆるみなどはない


「あの・・・これ霊装ですよね?売り物じゃないんですか?」


洗面所に無造作に置いてある霊装に疑問を抱きながら、そういうと村端は軽く笑って見せる


「それ私の霊装なの、私はそれの担い手ってこと」


「え?これの!?」


静希は今まで本物の霊装の担い手にあったことがなかった


自分は能力で霊装を強制的に使える状況に変えているだけで、本来の霊装の使い手ではない


今まであったことのない人種、人外よりも遭遇率は低いだろう


そう考えると、人外以上に希少な存在ではないかとさえ思える


「私がどうやってこんなたくさんの霊装を見つけてると思ってるのさ、この霊装の能力を使ってるんだよ」


そういって鏡に触れると、鏡の中に多くの光景が浮かび上がる


それは一体どこの物だろうか、見たことのないような景色が広がっている


大きな谷、流れる水、そして近くにある森


静希がどこかを認識する前にその光景は消え、また元の暗闇になっていく


「この霊装はね『妃の姿見』って言ってね・・・童話とかにある白雪姫の継母が使ってたあの鏡なんだってさ」


「え?あの、鏡よ鏡、世界で一番美しいのは誰・・・ってやつですか?」


以前鏡花が悪魔や霊装に対して調べたときに悪魔がかかわっていたという中に白雪姫の話があったのを思い出す


たしか直接関与したのではなく、継母に道具を渡すという形で関わっていたのだったか


「そうだよ、この霊装は使用者の見たいものの真実を見せてくれる・・・それは場所であり、人であり・・・いろいろね・・・私はこれを使って見つかっていない霊装を探して売ってるの」


能力的に言えば、遠視か、それとも予知に近いものか


どちらにせよまったく別の光景を見ることができるというのはかなりもの探しには適しているだろう


だがまさか童話の中で使われたものが霊装だったとは思わなかった


悪魔が渡したということは、これは悪魔が作った霊装なのだろうか、そんなことを考えたが、実話かどうかも怪しい上に、証拠も確証もないのだ、考えるだけ無駄だろう


「普段は普通に鏡にしてるんだけどね・・・後姿とかも見えるから楽なんだよこれ」


そういって鏡に触れると村端の後姿が鏡に映る


確かに後ろが見えるというのは便利なのだが、本来の使い方としてどうなのだろうかと思ってしまう


だが、使用者が見たいものを見ることができるというのはある意味凄い


どういう条件でそれが発動しているのかはわからないが、確実に見ることができるのは確かである


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ