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J/53  作者: 池金啓太
二話「任務と村とスペードのクイーン」

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歪む切札

「静希君!」


「・・・っぐ・・・!」


陽太と鏡花のおかげか、悪魔の指は急所を外れ、刺さっている部分もわずか指の第一関節までのみ


だが急ごしらえの土の壁は無残に崩れ、もはや原形をとどめていない


「あちゃあ、あなたは殺す気はなかったのに、残念だわ」


「よく・・・いうよ・・・!」


腹部に走る痛みに耐えながら悪魔を睨みつける、どうやら傷はそれほど深くまでは達していないようだった


だが腹部から血は脈々と流れている


血が抜け、頭が徐々にクリアになっていくのを感じる


そして、静希は思いつく


可能性の最後の欠片


「陽太!そのまま抑えてろ!」


「お、おぉ!」


陽太は炎をみなぎらせ、腕と腰を持ち悪魔を離すまいと万力を込めていた


「あら?まだ何かしてくれるの?」


「ああ、お楽しみも最後だ」


なぜこれを最初にやらなかったのだろう、あれを聞いてから、なぜ一番にこれをやろうと思わなかったのだろう


すでに空になったスペードのQを掴み悪魔の額に近付ける


「触ってみろ、面白いことが起こるぜ」


「へえ、いいわ、乗ってあげる」


透過せずにトランプに額をつけると、特に何も起こらない


「?」


不思議そうにしているメフィストフェレスに静希は邪笑を浮かべる


「人体消失手品、とくとご覧あれ」


能力が発動すると悪魔の体に異変が生じる


「っ!あなたまさか!」


「そのまさかだ!」


逃れようとしたが、もう遅い


トランプの中への、収納


静希が本来持つ生粋の能力


500グラム以下の物を生き物以外なら何でも入れる


だが目の前のこの存在は生き物ではない


そして重さもない


なら入れられるのか?一番に試すべきだった


そして、その企みは見事成功した


絶叫とともに悪魔はスペードのQの中に確かに収納された


腹部に刺さっていた指も抜け、さらに血が流れ始める


「静希君!」


全員が唖然とする中、明利だけが静希の治療に動き出した


「お、おおぉおぉぉぉおぉお!やった!やったぜ静希!」


思わず炎を噴き出してしまっている陽太が跳び跳ねながら喜びを表現する


近くにいた鏡花も雪奈も熊田も監査員もまったく信じられないと言った表情でなにもなくなった空間を見つめている


「おぉ?何がどうなってんだ?」


遅れてやってきた城島は状況が理解できないのか、周囲を見回してぽかんとしていた


話に聞いた悪魔もいなければ能力解放状態の陽太が嬉しさのあまり飛び跳ねているわ、他の皆全員口を開けて呆けているのだ、こんな状況は二度とないだろう


「聞いて下さいよ先生!静希のやつがやったんスよ!マジすげえ!」


「あー、わかった、いやわからんが能力を解除しろ、熱くてかなわん」


あ、すいませんと今更気がついたのか陽太は能力を解除し、あたりの熱が一気に下がっていく


「終わったよ、静希君、大丈夫?」


「あぁ、さすが明利だ、いい仕事する」


「よかった、助けられて」


心底安堵したのか、明利は大きく息をついて脱力してしまう


「それで、どういう状況なんだ?誰か説明してくれ」


「おれおれ!俺がする!かなり強い悪魔を静希が収納しちまったんだ!カードの中にビューンって!」


まるで小学生の日記だ、ほとんどまともな説明ではない


「要領を得ない説明だが、一応わかった、五十嵐、本当か?」


「はい、成功するとは思いませんでしたけど」


正直言って上手くいけば御の字、成功率一割あればいいなという程度の可能性だった


試したもん勝ちの行き当たりばったりな戦法だ


「そうか、悪魔を収納したのか、ではここにいるめちゃくちゃ悪魔っぽい人は悪魔ではないのか」


そういって指差す先には褐色の肌、銀色の長い髪に歪んだ角、豊満な肉体を持つ悪魔メフィストフェレスが腕を組んで何やら考え込んでいた


そして全員が絶叫する


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