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J/53  作者: 池金啓太
十三話「その森での喪失」

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面影

「なんというか・・・聞いてた通りの子だね、君は」



「聞いていた・・・?こいつらに聞いたんですか?」


静希の言葉に村端は首を横に振ってこたえた


静希の事を事前に知っていた


そんな人がここにいる


あまりいい予感はしなかった、何せ静希はかなり危険な案件に幾つか関わっている


「美紀から君のことは聞いてたんだよ、頭がいい癖に何するかわからない問題児だってね」


「・・・美紀・・・?」


一体誰のことだろうかと自分の記憶の中を探し当てると、その中に一人該当者がいることに気づく


どこの誰かは知らなくとも、自分のことをそんな風に評価した人物が一人だけいる


「美紀って・・・城島先生のことですか?」


「当たり!私あいつと同級生だったしね、写真見たことない?」


ほらこの笑顔に見覚えはないかい?と言って村端は朗らかで満面の笑みを浮かべて見せる


静希は確かにその笑みを見たことがあった


今よりもずっと幼い顔だったが、完全奇形討伐時の写真で城島の肩を掴んでカメラに向けて満面の笑みを浮かべている少女


あれが村端だったのかと静希は直感した


「君のことを最初に聞いたのは五月だったけどね、意志を持った霊装はあり得るか?なんて聞かれたときは何言ってんだこいつって思ったけど・・・まさか実物を見ることになるとはね」


その視線は静希からオルビアへと向かっている


以前城島がオルビアと出会ったときに誰かに電話をかけていたことがあるが、恐らくその電話の向こう側にいたのがこの村端だったのだろう


霊装に詳しい知り合いとは村端のことだったのかと感じながら、静希はさらに項垂れる


「まさか・・・先生の友人の方に助けられるとは・・・こりゃ生きて戻ったら大目玉ですね・・・」


「あっはっは、あいつ厳しいからね、無茶をしちゃったなら、怒られるのはしょうがないよ・・・ところで、一つ提案があるんだ」


村端の言葉に提案?と聞き返す静希


一体彼女が何を考えているのか全く分からないのだ


いや、頭が混乱していて上手く思考できないと言ったほうが正しいだろう


「まず一つは、この霊装オルビアを私に売ってくれない?お金はそうだなぁ・・・七十億!これで売ってくれないかな」


目を輝かせている村端、何故そんなことを言うのか静希にはまったく理解できなかったが、答えはすでに決まっている


オルビアが一瞬不安そうな表情を見せる中、静希は即決する


「申し訳ありませんが、こいつは俺の剣です、金でどうこうできるようなものではありません」


「そっかぁ・・・まぁわかってたけど、残念だ」


恐らく彼女も金で買えるとは思っていなかったのだろう、残念そうに項垂れている


逆にオルビアは安心したのか、それとも自分の剣であるという風に言われたのがうれしいのか、僅かに頬を緩めていた


「じゃあもう一つ、むしろこっちが本題、私と取引しない?」


「・・・取引・・・ですか?どんな条件でもオルビアを渡すつもりは」


静希の言葉に違う違うと村端は笑いながら立ち上がる


その表情は楽しそうであり、静希に対し、そして人外に対してまったく警戒していないように見えた


「口で説明するのも面倒だから来てくれるかな?百聞は一見に如かずってね」


そういって村端は部屋から出ていく


静希は痛む体を動かしながらオルビアに肩を借りて移動を始める


どうやら人外たちのおかげで左腕以外はほとんど無傷に近い状態だ


ところどころ小さな裂傷や火傷があるが、それもたいしたことはない


むしろこれだけで済んだことを僥倖と思うべきだろう


静希達が村端の後を追い階段を降りて彼女の店まで下りると、そこには数多くの物品が置かれていた


鎧や槍などの武具や、メガネ、グランドピアノ、三輪車や剥製、時計に物差し、櫛や銃などそれらに一切の時代的、あるいは項目的関連性を見出すことができない


オルビアに礼を言って自分の足だけで歩こうとすると、腕が無くなったせいかわずかにバランスが取れずに、近くにあったピアノに手をつこうとする


だが静希はピアノには触れられずそのまま地面に倒れてしまう


「いった・・・!?な・・・なんだこれ!?」


触れられないピアノに驚いて静希はあたりを再度見回してみる


触れられない物体、それが何を意味しているのかを静希は瞬時に理解していた


試しに近くにあった三輪車に触れようとしても、まったく触れられない


「もしかして、ここにあるの全部・・・」


周囲にあるすべての物品を見て、静希は戦慄する


そこにあるのは一体どこから流れてきたのか、どこにあったものなのかもわからない物たち


だがそれがいったい何なのか、それを静希は理解した


「そう、これらは全部霊装、この店は霊装の売買を専門に行う店なんだよ」


城島は知人が近くに店を構えている、だがそれが何の店なのかと言われると返答に困るというようなことを言っていたことを思い出す


まったくその通りだ、これが何の店と言われてもどう答えていいのかもわからない


一見すれば雑貨、いやただのがらくたを置いてある店だが、それ以上の価値がこの店にはあるのだから


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