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J/53  作者: 池金啓太
十三話「その森での喪失」

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再度森の中へ

「それでは行動開始する!君たちは僕のいる班の少し後方からついてきてくれ、危険だと思ったら即座に退避すること、いいね?」


「了解しました」


鏡花の返事を聞いて一応は納得したのか、後藤は気を引き締めて自らの銃を握りなおして構える


主に探索するのは先日通らなかった部分、明利やほかの索敵可能な人物のマーキングが残っている以上そこを探索することに意味はない、そこに犯人や平坂がいないことはすでに確認済みだ


唯一、能力使用の跡がある場所を静希達のついていく後藤の隊は調べに行くようだった


移動してみて初めて理解したが、軍隊の移動速度が先日の移動速度とはまるで違う


少人数での拡散状態でほぼ全力で移動している


先日までのほぼ歩いているのと変わらない慎重な移動速度とは似ても似つかない


完全に平坦な部分を選択しながら全員が全速力で目的地に向けて、あるいは互いに索敵がしやすいように動いている


しかもその速度で索敵や周囲への警戒もしている


学生である静希達とは経験が違うということだろう


この危険地帯でこれほどまでに速く移動することがどれだけ危険であるか彼らだって十分理解しているだろう、だが危険を冒してでも平坂は確保しなくてはならないのだ


「静希君!百メートル先に奇形種!」


「了解!鏡花!奥の手!」


「もう!?あぁもう知らないからね!」


走りながら鏡花は自分たちの周りを小さな壁で覆う


一時的に静希達の進行速度が落ちるが、その隙に静希はメフィをトランプの外に出すことに成功する


「明利!どうだ!?」


「奇形種逃走開始、接触の心配はなさそう」


すぐさまメフィをトランプの中にしまい、壁を元に戻して静希達は再び全力で移動を開始する


少し後藤たちの班と距離が開いてしまったが奇形種との戦闘は完全に回避できる


五回のうちの一回を使ってしまったのは多少痛いが、まずはこの森の奇形種に牽制をする意味で必要なことだ


何度か無線で報告がある中後藤が意図的に速度を落として静希達の近くまでやってくる


「いったい何をしたんだい!?奇形種が一斉に逃げ出しているらしいが」


先程静希達が何かしたのを見ていたのだろう、不思議そうな顔と声をしているのがわかる


確かに一見したら静希が壁に包まれて数秒したら奇形種が逃げ出したのだ、何かしたのはわかっても何が起こったのかはわからないだろう


「ちょっと動物に対して脅しをしました、賢い奇形種なら数時間は巣穴にこもるか逃げ出すはずです!」


メフィが存在していた山一帯の生き物がいなくなったことから、その影響力はこの森全域に及ぶものと予想していた


実際にメフィの威圧がそこまで届くかはわからないが、しっかりと奇形種たちに危険な存在が近くにいるということは伝わったようだ


野生動物は危険が迫った時はとにかく臆病になる


絶対的な存在がいるとわかった以上、数時間から数日にかけて巣穴から出てこないこともあり得る


だがそれは普通の動物に関しての話だ


奇形種は良くも悪くも原種とは違う行動をとることがある


普通の常識では測れない以上、万が一の時のために戦闘の準備は必須なのだ


昨日からは比べ物にならない速度で静希達は明利の索敵した獣の死体のある場所にやってくる


先日一回目に見に来た奇形種の戦闘跡であり、なぎ倒された木々が残りぽっかり空いた奇妙な空間に大きな穴の開いているその近辺には確かに奇形種の焼死体がある、近くの地面は衝撃でわずかに抉れ、焼け焦げた草や土が異臭を放っているのがわかる


「能力痕がさっきのと同じだね、間違いなく犯人はここを通ったようだ」


「陽太、周りに種を蒔いて索敵、全体的に頼むぞ」


「あいよ!」


明利と鏡花から種入りの石を受け取ってから大きく跳躍しあちこちに向けて石を投擲していく


何度も繰り返し投擲の届く距離すべてに種を蒔き終えると明利は集中しだす


「相手がモグラの開けた穴を目指しているのであれば、穴から穴へたどっていけば出口にたどり着けるということだろうけど・・・」


モグラは普通地中を移動する生き物だ、外から来て穴を作りながら移動している以上、穴から穴へ移動し続ければ確実にその先に森の外へと繋がる穴がある


だが後藤はこの穴に入るべきか少し迷っているようだった


何せそれは動物があけた穴で非常に不安定だ、この中に入って生き埋めになる可能性だって否定できないのだ


「周りにそれらしい影はないよ・・・今のところ見失っちゃってる・・・」


「そうか・・・やっぱ穴に入るしかないか・・・」


現状で手がかり、というか仮説としてあるのが穴から脱出するかもしれないということだけだ


この人数で森全体を把握するなど無理な話、だとすれば可能性に賭けるしかない


「あの、私が補強しながら移動すれば問題ないんじゃないでしょうか」


「補強・・・そうか、君は変換系統だったね・・・」


鏡花の意見に後藤は少し迷っているようだったが、意を決して無線全体に穴を見つけたら変換系統のいる班のみ突入するように伝える


「行こう、通路の補強は頼むよ」


「了解しました」


一度地面に手をついて鏡花の能力が届く範囲まで補強を終えると後藤の班を先頭に静希達は洞窟内へと行軍する


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