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J/53  作者: 池金啓太
十三話「その森での喪失」

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緊急事態

他の部隊の隊員も同じように窓辺に集まり外へと注意を向ける


だがどうにもここから見える風景に変わったところは見られない、というか朝霧のせいで一定以上の距離の先で何があるのか全く見えないのだ


すでに部隊の何人かは外で何が起こったのかを確認するために外に様子を見に行く者も出ていた


「俺らもいくぞ!」


「あ、あぁ!」


静希が駆けだすのと同時に陽太、明利、鏡花がそれに続き、城島は窓から外を注視していた


何が起こったのかを正確に把握しようとしているよりも、その先にあるものから目を背けないようにしているように見えた


静希達が音のしたであろう場所へ向かおうと朝霧漂う屋外を走っていると、数メートル先に何人かの部隊の人間を見つけることができ、そのあたりに強烈な熱気があることが確認できた


何が起きたのかを確認するのに時間はかからなかった


音源と思われるその一帯には炎が明滅するように揺らめき、地面は焼け焦げ、強い衝撃を受けたかのようにクレーターのようなものができていた


以前陽太が槍の使用時に能力を暴発させた状況に似ているが、まったく違う現象であることがうかがえる


陽太の場合は炎をあたりにまき散らしただけだった、だがこれは炎が爆散したのではなく、爆発が起こったという方が正しい


この二つの現象は似ているようでまったく違う、そしてこの状況を創り出したと思われる人物はそのあたりには見当たらず、二人の人物が少し離れた場所に倒れているのを見つける


部隊の人間も彼らの近くにいて何が起きたのかを聞き出そうとしているが呻いているだけで意識が戻っているわけではないようだ


「明利!」


「わかってる!」


鏡花が叫ぶよりも数瞬速く、明利はその二人に駆け寄っていた


陽太と鏡花がそれに続き、少し離れた位置にいた負傷者二名を明利のすぐそばに移動させる


二人の状況はあまり良いものとは言えなかった


爆発の衝撃によって吹き飛ばされたためか、打撲や骨折なども見受けられるが、それ以上に体表面の火傷がひどい、一部は炭化してしまっている


「このままじゃ・・・輸液しないと低容量性ショックが起きる・・・!あの!宿舎に治療用の道具はありますか?」


「あ、あぁ、一通り医療用具はそろっている」


近くにいた部隊の人間に声をかけるとわずかに驚きながら何とか答える


あのおとなしそうな小柄な少女の気迫にわずかに気圧されていることに驚いているようだった


「部隊の治療を行える能力者全員を宿舎のロビーに集めてください!知識がある方は乳酸加リンゲル液の輸液の準備をするように伝えてください!鏡花さんはこの二人を急いで宿舎のロビーに!できる限り揺らさないように」


「わ、わかったわ」


そうしている間に部隊の医療系の能力者が到着したのか、負傷者の状況を見てすぐさま同調しはじめる


「急がないと手遅れになります!道を開けてください!」


鏡花の能力を使って地面を動かし負傷者をロビーにまで移動させるとそこには何人もの人間が医療道具をロビー付近に集めて治療を行えるようにしていた


そこから即座に複数人の治療を行える能力者による緊急手術が行われた


手術と言ってもメスなどの道具は使わない


酸素供給と輸液をしながら破壊された組織を再生させていくだけだ


必要な栄養や血液に直接乳酸加リンゲル液を補給しながら行われる再生を眺めているしかなかった数人の隊員をよそに、静希と陽太、そしてほとんどの部隊の人間は現場にいた


そう、負傷者二人が護衛していた平坂の姿がどこにもないのだ


「五十嵐君、響君!」


静希と陽太があたりを探索しているとそこに隊長の後藤が現れる


現状を聞いて負傷者よりもこちらの重要度が優先されたらしい


「いったい何が起こったんだい?これは・・・」


状況を見て何が起こったのかをほぼ正確に理解したものの、何が原因でおこったのかがさっぱりわからないという様子だった


無理もない、静希も今の状況に若干混乱している


「たぶん平坂さんが誘拐されました、この近辺の道路や周辺地域を封鎖したほうがいいと思います」


「ゆ、誘拐?なぜ・・・いやそもそもどうしてそう思うんだい?」


爆発が起きて負傷者二名、能力者であったから負傷で済んだのかもしれないような状況で、年老いた男性一人が生き残れるとは思えない


死体の一つも残さずに爆散したと考えるのが自然なのだが、静希と陽太には平坂が生きているという確信があった


「死体がない、それに爆心地周辺に人の焼ける匂いがしません・・・あの二人がいたところにはしっかり匂いがしたのに・・・死体がないくらいに爆散したのであれば強いにおいが残ると思うのに・・・」


陽太の能力と静希の性格の性質上、人の焼ける匂いは何度も嗅いでいる

負傷者二人の近くには確かに人の焼ける匂いがした、なのにこの爆心地からはその匂いがない


死体がなく、死臭もしないとなると可能性は一つである


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