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J/53  作者: 池金啓太
二話「任務と村とスペードのクイーン」

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悪魔とやる気

最初に動いたのは監査員の教員、能力を解放しわずかに光を放ったかと思えば、その姿を四人に分けて見せた


分身、発現系統に属する能力で自分自身や他人の分身を作り出す、投影や複製の上位に部類する能力、一人だけでも難易度は高いと言われている能力だが、同時に三人も作り出す能力者は稀有である


先ほど後ろから声がしたのはこの能力を使っていたからかと静希は納得する


次に動いたのは陽太、自らの体を炎で包みその姿を禍々しい鬼の姿へと変貌させる


「いい子たちね、ちゃんと全力でかかって来てくれるんだ、お姉さん嬉しいわ」


「嬉しいついでにスリーサイズでも教えてくれるとこっちはすっごく嬉しいんだけどなぁ」


陽太はこんな時でもマイペースだ、そんなことを敵に言ったら激怒されても仕方ないぞと静希が注意しようと思ったのだが


「あら、そこの炎の子は私の体気になるの?いいわ、私に攻撃を当てられたら教えてあげる」


「マジでか、やる気出てきたぁぁぁぁぁぁ!」


案外、フランクな悪魔だった


陽太の火力もどんどん上がっている、単純だがああいったテンションの上げ方が陽太らしい


だが今命がかかっているという時にやる気が上がる理由をもう少し誠実なものにできないものだろうか


確かにメフィストフェレスの体は世の女性が見たら自信を喪失するかもしれない程に凹凸が激しい上に布地が少なすぎる、陽太の目がそっちに行くのも何となく理解できる静希だった


だが相手が悪魔である以上、警戒は密にしなくてはいつ何時何が起こるかもわからない


別の意味でびくびくしてしまう、もちろん恐怖的な意味だ


「陽太、火力アップするぞ」


「おうよどんと来い!」


陽太の周囲にスペードのカードを二枚飛翔させ、中に入っているものを解放すると陽太の火力が爆発的に上昇する


中に入っていたのは酸素、二枚で総量一キロの酸素が陽太の火力をさらに上げ身体能力をどんどん向上させていく


「鏡花、手筈通りに」


「わかってる」


燃え上がる炎を身体に纏い、さらに禍々しく風貌を変える陽太に悪魔は嬉しそうに笑う


まず第一に四人の監査員が一斉に襲いかかる一人は正面、一人は上空、一人は右、一人は左、それに呼応して鏡花が後ろから土を変質させた巨大な刺を悪魔に向けて放つ


瞬間、あたりが光に包まれる


打撃音と、自身に襲いかかる強い衝撃に静希の身体は軽々と吹っ飛び、近くの木の幹にたたきつけられた


叩きつけられた衝撃で肺の中の空気が一気に押し出され一時的な呼吸困難に陥る


それは陽太も鏡花も、先生も同様だったようだ、周囲に薙ぎ払われ、痛みで身動きが取れずにいる


何をされたのか、何が起こったのか、まったくわからなかった


「くっそ!痛ってえなちくしょう!」


唯一強化していた陽太だけは無事なようだったが、それでもダメージがあるようだ


強化状態の陽太でさえ痛みを感じるほどの能力


横を見ると鏡花は気絶してしまっている、特に監査員は間近で受けた分威力が高かったのか、静希たちよりも遠くに吹き飛び気絶し、能力が消え一人になってしまっている、静希が気絶しなかったのは運が良かったのか


せめて鏡花が起きるまで時間を稼がなくてはならない


陽太はまだやれる、静希だけ寝ているわけにはいかなかった


クローバーのトランプを悪魔の周囲に展開しナイフの射出準備をする


悪魔はトランプを手で払おうとするが無駄だ、能力その物であるトランプは静希の意志がなくては触れることはかなわない、たとえそれが悪魔でも例外ではないようだ


その様子を見て理解したのか、陽太が咆哮をあげて真直ぐ突っ込む


瞬間、全てのトランプからナイフが射出され、悪魔に襲いかかる


が、ナイフは悪魔に刺さることなく、その体を通り抜けた


その様子に驚愕しながらも、静希はナイフを回収し、再度射出する


そういった能力かもしれない、透過させたり、そう見せるだけの能力かもしれない


なら少しでも能力を使わせて少しでも分析する


無数のトランプがナイフの射出と回収を繰り返し、さらに数枚のトランプで悪魔の視界を封じる


「良い手ね、一回分ご褒美あげようかしら、触れられたらの話だけど」


触れられない、もし悪魔の能力が物質を透過させるような能力であれば、陽太の拳も届かない


だが、陽太の拳は透過せず、悪魔の腹部に深々とめり込んだ


「・・・!」


悪魔も予想外だったようで顔をこわばらせて陽太の手を『掴む』


「へえ、ただの発現か強化と思ってたんだけど、面白いわね」


そういって陽太の手を離して笑う


その様子が不気味だったのか陽太は珍しく距離を取る


「なんだあいつ、全力で殴ったのに無傷!?傷つくなぁ」


「あら、私に一発当てたのよ?誇りなさい、シズキもよく諦めずに攻撃を繰り返して、私の視界を封じたわね、上出来よ」


褒められているのに、どうにも褒められている気がしない


陽太も静希も一層警戒を強める


「よ、陽太が一発当てたんだから、教えてもらおうじゃないか、スリーサイズ」


今は少しでも時間を稼ぎたい、それがどんな内容でも


「あら、シズキも私の体気になるの?しょうがないわね、教えてあげる、上から108、56、92よ」


「身長体重は?」


「あらガンガン聞いてくるわね、身長は170、体重はないわ」


「ない?」


「物質があるわけじゃないからね、質量もないわ、存在があるだけの存在よ?」


ぺらぺらと話す余裕があるのは油断している証拠だ


そんな話の中で陽太の火力がさらに上がっている中、うめきながら鏡花が目を覚ます


「平気か鏡花」


「いった・・・何よ今の」


さすがにダメージが大きいのか動くことは難しそうだった、だが能力は発動できそうだ


「鏡花、すぐに策に出るぞ、頼めるか」


「わか・・・ってる、まかせなさい」


「よし、陽太!やるぞ!」


「おぉぉおぉぉぉぉ!っしゃあああおらあああああ!」


どうやらずいぶんとやる気が上がってしまっているようだ


こいつそのうち別の何かに変身するのではないかとも思えるほどに火力が上がっている


そのやる気がなぜ普段は出せないのかと思うが今はスルーしておくことにする


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